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本を広めるために僕らがやっていること

きょうは、出版社はどうやって本を広めているの?というお話です。言ってしまうと「本ごとにちがう」わけですが、とはいえ、出版社ごとに特徴があるので、今回はサンマーク出版のベーシックなプロセスをお伝えします。

本を広める該当プレイヤーは主に3チームあります。
1.編集部  2.営業部  3.PR戦略室
本の発売3ヶ月ほど前になると、それぞれのチームの連携が始まります。

◎すべては「発売3ヶ月前」から始まる

「編集部」には、本の担当編集者とその上司である編集長がいます。

発売3ヶ月ほど前になれば原稿も出揃い、内容がかたまってきているため、どんなタイトルと表紙デザインにすれば読者に訴えかけられるか、仮説を立てながら作り上げていきます。

また、

・ひとことで言うとどんな本か
・それをどんな言葉で伝えるか

をこの段階でできるだけ磨いておくようにします。これがどの程度磨かれているかで、その後の広める活動に好影響も悪影響も及ぼします。

さらにこの段階で、担当編集者は営業部(書店さんに訪問活動している部隊)やPR戦略室(広告、宣伝、プロモーションを行う部隊)に個別に「売り方」を相談し始めます。

◎発売2ヶ月前に「新刊紹介会議」を行う

発売の約2ヶ月前に「新刊紹介会議」を行います。営業部、PR戦略室のメンバー全員に対して、編集担当者(+編集長)が資料や表紙デザインを見せながら

「こういう新刊を作りました!」

と発表する場です(ちなみに社長の僕は出席していません。いないほうがみんな楽しそうなので笑)。

参加メンバーのほとんどは、どんな新刊なのかその場で初めて知ります。内容の紹介はもちろん、部数やおよその価格、広告手法なども議題にのぼります。1アイテムにつき、およそ30分話し合いが行われます。

「広める活動」は、この発売2ヶ月前あたりから本格化します。

まず書店さんを担当している「営業部」。新刊紹介会議前に制作しておいた「新刊チラシ」を全営業部員が持参して書店さんでの「受注活動」をスタートします。

どの本も事前に初版部数の目安を決めていますので、それぞれの書店さんで「この店には何冊は置いていただきたい」という目安も頭に入れながら訪問をします。

もちろん、相手あってのことですから注文していただく数は書店の担当さんに委ねるわけですが、初版部数や店舗ごとの冊数目安がないまま活動してしまうと、本の力に対して注文が少なすぎたり、逆に多すぎたりしてしまいます。

この段階ではあくまで仮説ですが、その本の「適正な力」を見極めながら受注活動を行なっていきます。

サンマーク出版の入り口には世界地図をデザイン(photo by Rikako Tanaka)

◎「広告」と「プロモーション」について

一方、PR戦略室のおもなPR活動には以下のようなものがあります。

(広告)
1.新聞広告の出稿
2.電車広告の出稿
3.SNS広告の出稿

(プロモーション)
4.各種Webメディアへの記事&著者インタビュー掲載
5.テレビ、ラジオへの著者出演

さらにYouTubeまわりも含め、とても多岐に渡る活動をしています。ひとつずつざっと説明しますね。

1.新聞広告

僕たちの会社は、日本の出版界でトップ3に入る新聞広告の"使い手"です(これでも控えめに言ってます)。年間600〜700紙に広告を出稿します。サンマーク出版の年間発行点数は85点程度ですから、一冊あたりにかける広告費としては他社を圧倒する「掲載率」です。

新聞なんてもうオワコンでしょ⁉︎と言われそうですが、それでもまだ広告を継続する理由は以下に書きましたので、よろしければ覗いてください。

2.電車広告

これは主に「首都圏JR」のドア横ポスターです。その他にも、首都圏でいうとメトロ、京王線、東横線など、大阪だと阪急、メトロ、JRなどです。

とくに首都圏JRは価格が高いんです。なので、基本的には「絶対にこの本をヒットさせる!」と覚悟を持って挑む銘柄に限ります。その段階で最低でも5万部を超えているもの、または初版から大部数で挑むものが掲載対象になります。

3.SNS広告

TwitterやInstagramが主戦場です。今のところ...広告単価と本の価格がバランスしません。そのため「かけた経費以上に売上金額を得る」といった目的で行おうとは考えていません。

あくまでスマホを通して本の情報を伝える手段であり、認知の向上という意味で行なっています。その際「どのように認知してもらうか」という方向性が最も大切だと感じていますが、この件については、いずれ詳しく書いてみます。

4.各種Webメディアへの記事&著者インタビュー掲載

日本には多種多様なオンラインメディアがあるので、それらの媒体に本の一部を「抜粋」した記事を載せてもらったり、著者のインタビューを掲載してもらったりしています。

今年の5月、メガメディアの東洋経済オンラインの編集部長だった武政秀明さんがサンマーク出版にやってきてくれました。彼があらゆる主要メディアと繋がっていたことから、これらのプロモーションは一気に加速しました。

この3ヶ月間だけを見ても、各種メディア合わせると100本近くの記事掲載をしており、跳ねるときには一本の抜粋記事だけでAmazon総合の10位以内にランクされることもあります。

6月にはAmazon総合100位の中にサンマーク出版の本が6冊ランクインしていました。これはWebメディアでの記事掲載と、新聞広告のダブル効果でした。

5.テレビ、ラジオへの著者出演

サンマーク出版の"十八番"とも言えるプロモーションで、とくに無名の著者さんを一気にスターに押し上げていくときに「テレビ」は極めて有効であり、この20年間で8冊のミリオンセラーを生んできた原動力にもなっています。ちなみに僕たちはもちろん、テレビプロモーションを得意としている出版社は

「どの番組に、どんな出方をすれば、本がどの程度売れるか」

という経験値(データ)があります。そのため、著者の番組出演が決まってからも、PR担当者は

・どのようなコーナーになるのか
・どんな出方をするのか
・他の出演者は誰か
・著者にマイナスになるようなシーンはないか
・本は何回(何秒)紹介されるのか

などを確認しながら、胃をキリキリさせて台本に向き合い、時には局と交渉していくことになります。

◎まるで美しいサッカーのように

このようなプロセスを得て、本はようやく発売になります。もちろん、先にあげたようなPR活動は発売後もずっと続きます。

長年この仕事をやってきてつくづく実感するのは、「本を広める」という仕事は「チームの連携」と「個人技」の複合技だということです。サッカーによく似ているんです。

新聞や電車広告を「思い切って出す」と決めるのは経営の仕事です。たとえうまくいかなくてもそこに予算を投下するとあらかじめ腹を決めておかないとなりません。

広告のクオリティが高くなるかは、個人技によるところが大きい。広告はそもそもみんなで相談して作る類のものではありません。

Webメディアに本が紹介されて一気に跳ねたとしても、ネット書店に在庫がなければあっという間に売り逃します。PRと営業が連携していないと、片方の努力は水の泡です。

いまボールを誰が持っているのか。
それに対して他の選手はどう動くべきなのか。
それらをコンダクターがどうデザインするのか。

うまくいった時は、まるで美しいサッカーを見ているような気持ちになります。

グランドデザインと、
チーム連携と、
個人技。

すこしオーバーかもしれませんが、僕の考える「プロモーション」はそのようなものです。サンマーク出版は今年の3月、新宿に移転して従来の2フロアからワンフロアのオフィスになりました。これは

「流れるような連携」

を意図して行なったものです。

近年は、著者さん自身がインフルエンサーであることも多く、そのファンの方々への告知、プロモーション、サービスなどが、本を広める上で重要なウェイトをしめるようになりました。

ただ、出版社がそれだけに頼るのでは、存在している意味がありません。著者さんと出版社の双方が肩を組んで、お互いの強みをいかしながら進むのがプロモーションだと考えています。

まだまだうまくいかないこともたくさんありますが、著者さんと編集者が命を削って作った本を、一人でも多くの読者さんに届けたいと思います。

以上、サンマーク出版が実践しているベーシックなプロモーション活動でした。

*Voicyで毎週月曜日にお話をしています📻⚡️

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