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愛する人が死ぬこと

愛する人が死ぬことをひどく恐れている。
ふとしたとき、もしいま愛する人が死んだらと、要らぬ考えが頭をよぎる。

思えば、子供の頃からそうだった。
例えば、祖父母。
まだ2人の腰がピンと伸びている頃から、会いに行くたびに
あと何回会えるだろう。あと何回一緒にお散歩ができるだろう。と、密かに心配し、その時その時を、溢さないようにとすごしていた。

でも、生きる者にとって唯一平等に与えられた死は、決して避けることはできない。
大好きな祖父が亡くなったとき、それはそれは泣いた。悲しかった。

しかしだ。私は幸運なことに、くるべき死しか、知らないのだ。
泣いて泣いて泣いたけど、死には順番がある。祖父はもう高齢で、死ぬことはとても自然なことだった。
だから、受け入れること自体は難しくなかった。

吉本ばななさんの「キッチン」を読んで、痛く共感し胸が締め付けられた。でも、私はこの本を本当の意味では理解できないのだろうと思った。それはたぶん、幸せなことだ。
ーー断るほどのことではないと思うが、登場人物が不幸せだと言いたいのではないーー

死を意識するからこそ、愛する人には長生きしてほしいと願い、一緒に過ごす今を大切にできる。そういうことを思い出させてくれる。
ずっと、私にとってそんな本であって欲しい。

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