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農家の人件費は、固定費として考えちゃダメ!

新規就農者にとって自分の人件費を「固定費と捉えるのか、変動費と捉えるのか」これは、経営戦略を決め上で大きなポイントになります。

まずは変動費と固定費について簡単に説明しておきましょう。

変動費とは
簡単に言うと「生産量(販売量)に比例して増減する費用」のことで【種苗代・肥料代・送料・梱包代・パートの人件費など】がこれに含まれます。また直売所などで、売れ上げに対して何%か引かれる手数料なども変動費にあたります。

固定費とは
「生産量(販売量)の増減に関わらず発生する費用」のことで【不動産の賃料・正社員の人件費・減価償却費など】がこれに含まれます。

実際の現場では、同じ費用(出費)なのに、状況によって取り扱いが異なったりすることもあるので混乱するかもしれませんが、簿記の資格を取得することが目的ではありませんから、大まかに理解しておくだけで構いません。経営分析に応用する程度であれば「こういう考え方もあるんだな」ぐらいに考えて、まずは気軽に取り組んでみることが大切です。

では次に、固定費として捉えた場合と、変動費として捉えた場合の違いについて説明します。

固定費とは、簡単に言えば「寝てても発生する費用」のことですから、自分の人件費などを「少しでも元を取ろう」と考えるのが普通ですよね。だからこそ、不慣れな新規就農者ほど農閑期に作業を詰め込もうと考えて少量・多品目栽培になりがちなんです。

ところが、それをやってしまうと不都合なことが起こります。
少量・多品目栽培のデメリットについては→【こちら

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上の図について簡単に説明しますね。
・縦軸は人件費と作業量、横軸は時間を表しています。
・赤線は人件費(固定費として捉えた場合)を表しています。
・青と緑の線は2品目を栽培した際の、それぞれの作業量を表しています。
・黄色はその際に必要な「合計の作業量」を表しています。
・紫は処理可能な仕事の量です。

この図の注目ポイントは2点です。
①人件費を固定費として捉えてしまうと「固定費を無駄にしないために」青線の後(右側)に別の作業(緑線)を入れる必要がでてくるのです。

②多品目栽培の場合、青と緑の仕事を同時に処理しなければならない状況が発生します。そして、黄色(合計の仕事量)が紫色を超えている部分は、作業が間に合わないパンク状態を表しています。

このパンク状態になると雑草や害虫対策が追い付かなくて、収穫量の低下などを招きます。

変動費として捉えた場合
そこで重要になってくるのが「人件費を変動費として捉える」という考え方です。

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先の図と同様に
・縦軸は人件費と作業量、横軸は時間を表しています。
・赤線は人件費(変動費として捉える)を表しています。
・青線は単品目栽培をした場合の作業量を表しています。
・1品目の栽培なので、緑と黄の線は省いています。
・紫は処理可能な仕事の量です。

この図の注目ポイントは2点です。
①人件費を変動費として捉えることで、青線の後(右側)に別の作業を入れる必要が無くなるのです。

②単品目栽培の場合は機械化がしやすく一度にこなせる仕事量が増やせるので、紫線が高い位置にあります。つまり忙しすぎてパンクする状態にならないということです。

「利益=売上-変動費+固定費」
大事なことは、人件費の元を取ることではなく、利益を出すことです。
この時の経営戦略としては2つの選択肢があります。

①「固定費は原則一定」と考えて、売上に占める変動費を調整して利益の確保を目指す。
②「固定費そのものを見直す」つまり少ない売り上げでも赤字にならない状態を作る。

大規模農家の場合はどうか分かりませんが、新規就農者を中心とした零細農家の場合は、原価(生産にかかる費用)の大半が自分や家族の人件費だと思われます。しかも、売り上げ規模もそれほど大きくはないでしょう。そして、売り上げ規模が大きくないということは「変動費も大きくない」ことになります。

したがって、経営戦略としては第一に【いかに固定費を安く抑えるか?】が重要な課題といえるずです。つまり①よりも②の【少ない売り上げでも赤字にならない状態を作る】という戦略に徹するべきなのです。

そして、人件費を変動費として捉えるという発想を持つことで「人件費をかけない→少ない売り上げでも赤字にならない状態→経営規模の小さい新規就農者でも経営が成り立つ」につながってくるのではないでしょうか。

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