ペーパー歓迎!公共交通で行く三重県(伊勢志摩松阪エリア)
こんにちは、黒田玄です。新年初の記事は、いよいよがっつり三重県の観光案内です。運転する自信がないあなたもぜひ、三重県にお越しください!
今回紹介するのは伊勢・志摩・松阪エリアです。他のエリアについては後日公開します。また紹介しているのはあくまでも一例です!
車社会・三重県の観光事情
もう今回はタイトルでどういった記事なのか一瞬で分かると思いますが、一応前置きをしておきますと、全国の地方の例に漏れず、私が今いる三重県は車社会です。たとえば、2017年(平成30年)でみると自家用車の保有数は一世帯あたりだと全国14位、人口一人当たりだと全国10位となります(※引用元のデータの時点が若干異なるためあくまで参考)。また、近鉄や県北のJRを除けば、鉄道網は非電化単線のJRと赤字の地方鉄道に頼るのみ。高速道路網の整備が進んだことも相まって、鉄道よりも自動車のほうが行動しやすいというのは住んで数日、いや数時間でわかる事実でした。
↑県下最強のローカル線・名松線は概ね一両編成で一日に8往復(2019年度)。
そんな車社会・三重では、自動車がないと観光も不便。三重にいる人を頼りに案内してもらうか、金にモノを言わせタクシーに乗るかという選択を迫られる人も多いのです。典型は志摩市の横山展望台。
英虞湾の絶景を見渡せる伊勢志摩国立公園きっての景勝地ですが、観光サイトの記載はこうです。
公共交通機関でのアクセス 近鉄「鵜方駅」から徒歩約40分、またはタクシーで約5分 横山展望台|伊勢志摩観光ナビ
二次交通となるバスがなく、徒歩40分(もちろん展望台なので山に登ります)。健脚を発揮するか、さもなくばタクシー、という二択です。片道3キロ強なので分乗すれば安いものですが、一人旅にはちょっと……。帰りもタクシーなら、運転手に待っていてもらわないといけないですし、気が急きます。車社会・三重県の観光事情がおわかりいただけたでしょうか。
三重県の公共交通機関事情
さて、そんな三重県で自動車に頼らず回れる観光スポットを紹介していきたい……ところですが、その前に一般論だけまとめて記載しておきます。
以下のスポットについて、冒頭に交通アクセスを書いています。列車の所要時間は行き違い・通過待ちの影響で列車ごとに大きく異なるので、あくまでも目安です。メインとなるべき観光地は名古屋・大阪からの所要時間を、またそうでない観光地は県内他地域からの所要時間を記載しています。
運賃については、近鉄は全線で交通系ICカードが使えます。また特急には特急券が必要です。全車指定席のため、満席で乗れないこともあるのでご注意ください。
JRは県北の名古屋~四日市~亀山を除きICカードは使えません。有人駅であればきっぷを買ってください。また無人駅も多く、その場合は車内での精算になります。現金を忘れずに。特急南紀には特急券が必要ですが、快速みえの自由席は乗車券のみで乗れます。ただし、快速みえは四日市(河原田)~津で伊勢鉄道(JRではない)を経由するため、青春18きっぷなど普通列車乗り放題のきっぷで乗る場合は別運賃がかかります。車掌の検札もありますので、事前にきっぷを買うか現金を用意しましょう。
バスについては、県内のバスはほとんど三重交通のバスです。交通系ICカードは使えますが、チャージはできません。また、コミュニティバスなど一部のバスではIC非対応です(ここで書いているバスは基本普通の路線バスなので、チャージ残高がある限りICは使えると思っていただいていいと思います)。
公共交通で行く三重県①伊勢・神宮
まずは三重を代表する観光地・伊勢。
場所:伊勢市
アクセス:JR・近鉄「伊勢市」駅。特急を含めすべての列車が停車。名古屋から80分(近鉄特急)~100分(JR/近鉄急行)、大阪上本町から105分(近鉄特急)~150分(近鉄急行)。ここから徒歩・バス。以下参照。
皇室の祖・天照大御神を祀る内宮と、産業の守り神・豊受大御神を祀る外宮。有名なのは内宮ですが、順番としては外宮→内宮で回るのが正式なようです。駅から近いのも外宮ですから、ここでは外宮からの順路を紹介します。
玄関口・伊勢市駅を出るとすぐ参道が始まります。ここから外宮までは徒歩8分ほど。荷物は駅に預けてしまったほうが楽かも。
外宮・内宮とも、メインである「正宮」を先にまわるのが慣例。内宮と比べ人の少ない外宮ですが、厳かさは内宮に引けを取りません。正宮をまわったら、ほかの神様を祀る敷地内の「別宮」をまわります。外宮全体を回る所要時間は20分~30分程度。また、台風の影響で長期休館していた「せんぐう館」も最近ようやく再開しました。神宮を象徴する「式年遷宮」を紹介しており、外宮敷地内・入館料300円と足にも財布にも優しいので、ぜひあわせて御訪問ください。30分~60分ほどでまわれるそうです。
外宮から内宮は4km以上ありますが、日中10分おきにバスが出ています。運賃は大人440円で、乗車時間は系統と混雑状況によりますが10分~25分くらい。人数が多ければタクシーでもいいかもしれません(両宮の前に多くのタクシーが止まっています)。
内宮の正宮(本記事中3度目の登場)。階段より上での写真撮影が禁止されている、最も神聖なエリアです。内宮は御手洗場(五十鈴川の水で体を清めるところ)など立ち寄りスポットが多く、別宮も点在しているため、全体を見るなら60分はかかると思っていたほうが良いと思います。
外宮・内宮の順路について詳しくはこちら。
参拝が終わったら、参道へと向かいましょう。内宮前の宇治橋から北に数百メートル続く参道(おはらい町通り)には、お土産物屋やご飯処が所狭しと並びます。やはり一番有名なのは赤福。宇治橋近くにも店がありますが、趣ある本店はおはらい町通りの中ほど、おかげ横丁の入り口付近にあります。220円でお茶も付き、至福のひと時を過ごすことができます(空いていれば)。しかも内宮が開く朝5時から開店していて、早朝参拝のお供にもなります。
おはらい町通り・おかげ横丁は、さらっと見るだけなら40分ほどでよいと思いますが、以前東京の友人複数と回ったときは食事込みで3時間を費やしました。買い食いもよし、お土産を探すもよし、また建物の風情に思いを寄せるもよし。楽しみがたくさんありますので、時間に余裕をもってご覧ください。
おはらい町通りを通り抜けると大通りに出ます。そこにある「浦田町」バス停からは伊勢市駅に行くバスがあります(310円)。
以上、伊勢市駅を出て戻るまで5時間~6時間くらいでしょうか。朝から動けばちょうど参拝後に昼食といったところです。もうワンスポット回れそうですね。
伊勢市内には猿田彦神社などほかの神社も多くあり、神宮参拝を極めるなら神社巡りもできます。
公共交通で行く三重県②二見興玉神社/夫婦岩
場所:伊勢市二見町
アクセス:JR「二見浦」駅。伊勢市駅から快速5分・普通8分、日中1時間に計2本程度。駅から徒歩13分ほど。
お正月の旅番組でも紹介されていましたが、伊勢市二見町にある二見興玉神社も見どころの一つです。海に面した神社で、波の音が染みわたります。晴れた日には愛知県の渥美半島がくっきりと見えます。また、海に浮かぶ夫婦(めおと)岩の間から上がる日の出は神秘的……なんだそう。縁結びの神社ということもあり、カップル人気もあるようです。
古くは、神宮参拝の前に二見の海で身を清める風習があったことから、今でも二見を先にまわる参拝客も多いようです。神社の周辺には古い旅館も多くありますし、二見で日の出を見てから外宮、内宮に行くというのもいいかもしれません。
この夫婦岩のすぐ近くには伊勢シーパラダイスという水族館があります。鳥羽水族館(後述)に比べると知名度は劣るものの、貴重なカワウソとの握手をはじめ動物との触れ合いを重視した水族館です。動物好きやお子様連れにはたまらない場所です(私はまだ行けていないですが……)。
公共交通で行く三重県③斎宮跡関連施設
場所:多気郡明和町
アクセス:近鉄「斎宮」駅。伊勢市駅から普通15分、松阪駅から普通12分。駅から徒歩圏内に施設点在。
松阪と伊勢の間にある古代遺跡の一つ。天皇家の女性が神宮に仕える「斎王」として都からやってきてここに滞在されたという場所です。当時の建物は基礎を残すのみですが、平安情緒あふれる関連施設は見ごたえがあります。
「平安時代のトランプ」。選挙に強そう。
斎宮の歴史や文化を紹介する「斎宮歴史博物館」は斎宮駅から北西に徒歩13分ほど。ここが一番離れていますが、映像展示をはじめ丁寧な解説で理解が深まることは間違いありません。このほか、当時の文化を体験できる「いつきのみや歴史体験館」、斎宮を10分の1スケールで再現した屋外模型、当時の建物のうち三棟を精巧に再現した「さいくう平安の杜」などは駅からすぐ。このほかにも当たり前のように古墳があるなど、平安ロマンを感じさせるエリアでした。
所要時間は、展示を見て軽く説明を聞くくらいなら全部回って3時間ほど。体験に重きを置いたらもっと長い時間楽しめると思います。
公共交通で行く三重県④鳥羽
伊勢志摩観光の一翼を担うリゾート地・鳥羽。海近くまで山が迫り平野が少ない厳しい地形ですが、その細い平野に鉄道が通っているため、交通の便はさほど悪くありません。ディープな離島旅も紹介したいところですが、記事の趣旨からここでは鳥羽水族館とミキモト真珠島を紹介します。
場所:鳥羽市
アクセス:JR・近鉄「鳥羽」駅。特急を含めすべての列車が停車。名古屋から95分(近鉄特急)~130分(JR快速みえ)、大阪上本町から120分(近鉄特急)。伊勢市駅から15分。鳥羽駅から真珠島の入口まで6分、鳥羽水族館まで9分。鳥羽水族館には近鉄「中之郷」駅も近いが、普通列車のみの停車。
鳥羽水族館は、飼育種類数日本一、国内唯一ジュゴンを飼育している貴重な水族館です。動物のショーも見ごたえがあり、一日中楽しめる仕掛けがちりばめられています。館内を走り回るくらいの勢いでも、ショー込みだと4時間ほどは必要です(入館料もそこそこするので、ササっと行って帰るのはちょっと惜しい)。大人数はもちろん、一人旅であってもできれば行ってほしいスポットです。
ミキモト真珠島は、真珠王・御木本幸吉が世界初の真珠養殖に成功した島。真珠の成り立ちや見分け方がわかる真珠博物館では、本当にたくさんの真珠に出会うことができます。真珠に興味がなくても真珠の面白さがわかるような施設です。お土産物売り場では、目玉が飛び出るほど高額の真珠が一粒置かれていて、思わず手を合わせてしまいます。また、昔ながらの海女の実演も行っています。目の前で本物の海女さんがみせる素潜りはただただすごいの一言です。
所要時間ですが、すべて見るなら2時間では足りませんでした。3時間あると安心かも。
このほか、港町・鳥羽はおいしい食事処も豊富。無難なのは鳥羽駅前の鳥羽マルシェ。ビュッフェ形式なので鳥羽の美味しいものを食べたい分だけ食べられます。このほか、鳥羽駅の南、線路の山側には海鮮の店が数多く並んでいます。ぜひいろいろ探してみてください。
公共交通で行く三重県⑤賢島
場所:志摩市
アクセス:近鉄「賢島」駅。特急は名古屋・大阪から直通(終着)、伊勢市駅から特急45分・普通60分、鳥羽駅から普通40分。駅からの所要時間は後述。
伊勢志摩サミットの舞台となった英虞湾の島で、近鉄の終着駅。リゾート地として知られています。小さな島なので、駅から歩いて島内をめぐることができます。
賢島駅直結の伊勢志摩サミット記念館サミエールでは、サミットの際の机をはじめサミット関係資料が無料で見られます。また駅から北に徒歩7分でサミット会場の志摩観光ホテルもみることができます。こちらは一泊ウン万円する高級ホテルなので、見るだけしかできないですが、絶景を楽しめること間違いなしです。
駅から南に1分歩けばすぐに海です。英虞湾を周遊する賢島エスパーニャクルーズなど、島々に囲まれた独特の海を堪能することもできます。エスパーニャクルーズの所要時間は50分。
島の外周を一周する道路はなく、駅を中心に放射状に道があるイメージです。見どころはあるものの、やはりホテルに泊まってゆっくり過ごすリゾート地といったところでしょうか。
また近鉄を代表する観光特急「しまかぜ」の始発駅です。しまかぜの良さを堪能するなら、途中駅からではなく、最初から最後まで乗りたいもの。三重の旅の締めに賢島に行き、その後しまかぜで帰るというのもいいかもしれません。
公共交通で行く三重県⑥松阪市街
場所:松阪市
アクセス:JR・近鉄「松阪」駅。名古屋から70分(近鉄特急)~90分(JR/近鉄急行)、大阪上本町から95分(近鉄特急)~140分(近鉄急行)。津から20分(近鉄急行)、伊勢市から15分(近鉄急行)。駅からは最遠で1.5kmほど、後述。
松阪といえば全国的には「牛」が有名ですが、このまちは江戸時代には豪商のまちでした。伊勢参詣客が集まるこのまちでは同時に情報も多く集まり、それが最先端の流行をキャッチすることにつながったのです。超大企業・三井グループの祖である三井高利は松阪の出身ですし、有名な松坂屋の屋号の由来は松阪出身の商人が江戸で開業した際に故郷の名をつけたことから始まります(ただし残るのは名前のみで、直接のルーツは名古屋資本)。国学者の本居宣長も商人の家の出身で、商売センスがなくて医者になったと言われています。
松阪にはそんな歴史を感じさせる場所が至る所に残っています。「小津清左衛門家」や「長谷川治郎兵衛家」などいくつかの豪商の家は公開されていて、広大な敷地でのんびりと過ごすことができます。
また松阪は蒲生氏郷が築城しのちに紀州藩の出先となった松坂城の城下町でもあります。立派な石垣自体見どころですし、城内には移築された「本居宣長旧宅(鈴屋)」や、紀州藩士の長屋「御城番屋敷」もあります。
このほか、紺色が美しい名産の松坂木綿の施設もありますし、当然本場で食べる松阪牛は絶品です。
単発でも十分立派な観光地ですが、松阪の最大の強みは回遊性。豪商・武家・国学の歴史や名産品を、駅から近い範囲内で一気に回れるため、一度で多くの体験ができます。
たとえば、上で紹介したスポットを回るとこんな感じ。駅から合計3.3kmで済みます。歩ける距離ですが、駅前の観光協会でレンタサイクルもやっています(有料)。
所要時間は各施設の滞在時間によるところが大きいです。私は上にあげたもの以外にいくつかの施設を回り、食事込み6時間かかりました。丸一日居ても十分満足できるクオリティです。
以上、伊勢志摩松阪エリアの公共交通で行く三重県スポットを簡単にご紹介しました。次回は北勢エリアのスポットを紹介します。これらはあくまでも一例、三重県に初めて来る方を主なターゲットとしています。まだまだ見どころはたくさんあります!まずは一度足を運んでみてください!
↓北勢エリア編
ご支援賜われましたらこれ以上の喜びはありません!