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『細川三代 幽斎・三斎・忠利』

タイトル:細川三代 幽斎・三斎・忠利
著者:春名徹
ジャンル:歴史
発行年月日:2010年10月
発行元:藤原書店
備考:織田信長、豊臣秀吉、そして徳川時代に至る激動の戦乱期に、抜群の政治感覚にしたがって、来るべき権力者を見定めて主君とし、遂には徳川政権において五十四万石の地位を手中にした細川家。権威と価値観が激変する約百年をしなやかに生き抜いた、細川幽斎(1534‐1610)、三斎(1563‐1646)、そして忠利(1586‐1641)の草創期三代の軌跡を描く、圧倒的な歴史絵巻。

感想

 近世細川家の成り立ちを表す最初の三人、すなわち幽斎(藤孝)、三斎(忠興)、忠利について、特に幽斎─三斎、三斎─忠利、という父子関係に焦点を当てている。筆者が細川親子に注目した最初は、忠興が息子・光千代(忠利)へ向けて書いた書状だったらしい。忠利がまだ光千代と言った幼少期、彼は徳川家へ人質奉公に出された。これは関ヶ原合戦の前のことであり、秀吉の没後、徳川家がその頭角を現してすぐのことだった。筆者は忠興の政治的手腕、特にそれを人質として送り出す息子へ伝授しようとした意志が見えるとし、この果てのない細川の沼へ入られたようだ。言い方。
 内容については、幽斎、三斎、忠利とそれぞれの人物項を設けている。各人の足跡をたどりつつ、人物評に加え親子間のやり取りやその時代背景、事件やちょっとした出来事など、豊富に紹介している。
 参考文献や年表、索引まで付されている分厚い本なので、読むだけでも大変なのだが実に楽しい。筆者が調べ続けた細川親子三代にわたる流れが、とりあえずこの一冊あれば分かる。時の権力者や、細川家と関わってきた人々の名も当然数多く登場し、関係図が見えてくるのもこの本の良いところだと思う。

 こういうことが可能なのも細川家という大名家の特徴だと私は思う。あまりにも資料が残されているからだ。熊本大学の永青文庫研究センターには、まだ開かれていない膨大な数の資料があると聞く。それらが残されているのは、熊本の人々や、細川家の血筋の方々の、尽力のたまものであることは想像に難くない。オタクにはありがたい限りである。

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