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ESG情報開示手段として台頭し始めた動画

少し前からB to B、いわゆる企業間取引がメインの企業のテレビCMが多く放映されるようになりました。

またテレビCMだけでなく、YouTubeチャンネルを開設する企業も増えました。タイトルの通り、ESGに関する情報を動画にまとめて、ウェブサイトやYouTubeチャンネルに掲載する企業も増えています。日本の上場企業の時価総額上位100社でESG関連動画を掲載している企業は約20社に上ります。この中にはいわゆる会社紹介動画や採用向け動画のみを掲載している企業は含まれていませんので、単に動画を作成している企業数で言えば、さらに数が増えることになります。

これまでESG情報はウェブサイトや報告書で文字と図表で表現することが一般的でした。しかしテレビCMが増えてきたように、動画にまとめる企業数が増えてきています。動画で表現することには少なくとも2つのメリットが考えられます。

1.視聴者の関心のあるテーマを効率よくインパクトを持って伝えられる

通常動画は3~5分程度にまとめられており、当然表現できる内容も絞られます。通常報告書では内容の網羅性が焦点となりますが、ESG投資家以外の読者はおそらく関心のある部分だけ読んでいるのではないかと推測しています。動画では報告書よりテーマを限定し、かつビジュアルを中心に分かりやすく、その重要性が強調させることが可能になります。例えば以下は中外製薬の社会的責任に関する動画で、報告書のように網羅的な内容となっているわけではありませんが、投資家を含めたステークホルダーに企業の存在意義を訴えるには効果的です。また社員に話してもらうことで、存在意義が社内に浸透していることも強調するものとなっています。

2.ステークホルダーの生の声を伝えることができる

もちろん報告書でも第三者意見などステークホルダーからのコメントを読むことができます。しかし実際に話している様子の方がインパクトがあります。

例えば顧客からの反応を紹介した例では以下の大和ハウスの動画があります。もちろんESGの動画を掲載する以上、企業にとって意義深いテーマを取り扱っているはずですが、さらに顧客である京都銀行の担当者のコメントを加えることでより説得力が増します。

社会貢献は活動範囲が多岐にわたり、かつ地域に根差した活動も多いため、動画化しやすいテーマと言えるでしょう。例えば花王は小学生に行っている節水教育について、先生や児童からのフィードバックを盛り込んでいます。

またコマツは海外での社会貢献活動を動画化しています。建機の使用方法をリベリアの専門学校に教えるとともに、同社製品の将来的な市場として注目しています。

社会貢献はそれ自体では投資家への訴求力はさほど高くありません。ともすれば、資金の無駄遣いと見られることもあります。このような動画を作成することによって、将来の市場を現在開拓する姿を見せることは投資家に社会貢献活動の意義を知ってもらうためにも重要です。

最後に社員に対する配慮の動画です。ここで取り上げるのはいわゆるリクルーティング向けの先輩メッセージではありません。以下の動画はソフトバンクに勤務する統合失調症の男性が短時間勤務制度を利用した体験談です。働き方改革が叫ばれる中、様々な施策が各社で展開されていますが、実際の利用となるとまだまだ改善の余地があるでしょう。例えば男性の育児休暇取得は制度はあれど、実績が乏しいものの典型です。そのため実際に制度を利用した社員の発言はやはり説得力があります。


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