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持続可能な開発目標(SDGs)は2015年9月に採択されて以来、日本の国内外で急速に浸透しています。ただし特に欧州と日本ではその取扱いに差があるように思えます。端的に言うと日本では投資リターンへの寄与、欧州はインパクトを重視している印象が強いです。

金融庁が6月に公表した『金融行政とSDGs』という文書では、以下のような説明がなされています。


SDGsは本来的には企業・投資家・金融機関といった各経済主体が自主的に取り組むべきものであるが、何らかの要因でそうした動きが妨げられ外部不経済が発生している場合には、経済全体としての最適な均衡の実現に向け、当局として促すことも必要(注)但し、その場合でも、SDGs推進のために各経済主体や金融市場における経済合理性が歪められることは適切ではなく、金融庁としては、SDGsやESG金融の動きが、中長期的な投融資リターンや企業価値の向上でつながる形で実現されるよう、各経済主体の自主的な対応を引き出すことを基本的な方向性とする

SDGsの考慮は必要としているものの、「中長期的な投融資リターンや企業価値の向上」を阻害することは許容しないということです。

一方、オランダの大手年金基金であるAPGおよびPGGMはSDGs達成に向けた投資として「持続可能な開発投資」(SDIs: Sustainable Development Investments)を2017年5月に提唱しました。「投資のリスク・リターン制約を満たした上でポジティブな社会・環境面でのインパクトを生み出す製品・サービスの生産、または時に変革へのリーダーシップをサポートする」投資とSDIsを定義しています。また計測可能なインパクトを重視しており、そうでないものについても計測可能な指標での公表を求めていくとしています。すなわち投資リターンではなく、社会・環境面でのインパクトを最も重視しているということです。

欧州では投資リターンを重視するスタンスが存在しないかというと、そうではありません。その場合にはSDGsを引き合いに出さずに、単にESG投資と呼んでいます。3月にルクセンブルクで会議に参加しましたが、ESG投資とSDGsの議論は別に行われていました。SDGsが環境・社会面での問題解決に向けた目標ということを考慮すると、このESGとSDGsの使い分けは合理的だと言えます。

https://www.ipe.com/news/esg/apg-pggm-set-out-investment-routes-to-un-development-goals/10019777.article?utm_term=&utm_source=IPE Daily News&utm_medium=Email&utm_content=APG, PGGM set out investment routes to UN development goals _https://www.ipe.com/news/esg/apg-pggm-set-out-investment-routes-to-un-development-goals/10019777.article&utm_campaign=5.7.16 ipe daily news_APG, PGGM set out investment routes to UN development goals


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