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複数のESG評価機関を使うメリット

9月7日に早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター主催のファンドマネジメント講座の1つ「ESG(環境、社会、企業統治)投資の実務」でESG評価機関の実務について講演してきました。ESG評価機関の世界的な勢力図から、評価方法・内容、サービスの概要、評価の活用方法まで、主に英国での勤務経験を基にお話させていただきました。

短い休憩時間にもご質問をいただけるなど好評だったようですが、いただいた質問の中で欧州の運用機関はなぜ複数のESG評価機関から情報を購入するのか、というものがありました。もちろん全ての運用機関がそうしているわけではありませんが、英国勤務時代にそのような顧客と普段からやり取りをしていましたので、一定数存在することは事実です。

当然ESG評価機関の情報は有料ですので、複数の機関から情報を購入するとなれば、その分費用は増大します。しかも複数の機関といっても、評価の基としているのは投資候補先企業の公開情報が中心で、評価結果に大きな相違が出にくいはずです。それでも購入するのは、評価の共通点ではなく、相違点に注目しているからだ、と運用機関の担当者から聞いたことがあります。そしてその差こそ運用機関に新たな視点を提供するものである可能性があるというのです。

この差はESG評価機関の用いている項目や基準から生まれます。もちろんそれは各ESG評価機関が抱えているアナリストの質にもよりますが、さらに影響が大きいのは外部有識者の知見の差です。評価項目や基準の策定の際には関連するNGOやその他知見のある人物を招聘し諮問委員会を設立することがあり、評価の信頼性向上に努めています。運用機関はこうした外部有識者の知見とそれを反映した実際の評価データを合わせて購入することにより、外部有識者を探索・招聘し、自前のアナリストに調査させる費用と手間を省いていることになります。合理的な対応と言えます。



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