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運用会社の人材開発や情報開示に改善の余地あり

明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

2020年はESG投資隆盛を後押しするイベントが目白押しですが、その1つは日本版スチュワードシップ・コードの改訂です。前回2017年の改訂が5月末だったことを考えると、今回も2020年上半期に施行されることが予想されます。

施行が決まれば運用会社を含む署名機関の対応が一気に進むとみられますが、一方で施行前である現在の運用会社の対応をおさらいし、施行後に本記事と比較してどのように対応が改善したかについても投稿したいと考えています。

運用会社の署名機関が約200と多いため、日本を代表する運用会社として三井住友トラスト・アセットマネジメント、三菱UFJ信託銀行、アセットマネジメントOne、野村アセットマネジメントの4社の公表情報から傾向を以下で紐解いていきます。上記の4社はIPE社の運用残高ランキングで50位以内に入っており、それぞれ20位、32位、42位、45位にランクしています。

傾向を紐解くにあたり、英NPOであるShareActionの評価項目を参考に、1)運用会社の基盤、2)ESG投資、3)インパクト投資、4)エンゲージメント、5)議決権行使に分けて、取組を概観していきます。

本投稿では1)運用会社の基盤についてです。以下の項目で各社の開示情報を確認しました。なお、見落としている可能性もありますので、正確性は保証しません。

1.方針
(1)ESG
(2)SDGs
(3)利益相反防止

2.取組
(1)ESG投資の責任者
(2)人材開発

3.開示
(1)開示形式
(2)利益相反防止
(3)手数料

1.方針

現在のスチュワードシップコードの原則2で規定されていることもあり、(3)利益相反防止方針は全ての会社が開示しています。同様に(1)ESGについての方針もスチュワードシップコード指針3-3で規定されていることもあり、概要については開示しています。ただし、どのESG要因を考慮し、なぜそれを考慮するのかを詳細説明しているケースは稀です。一例として野村アセットマネジメントのESGステートメントがあります。

またSDGsについて投資、エンゲージメント、規制改革の方針を開示している会社はないようです。

2.取組

(1)ESG投資の責任者については会社によって多様です。最も基本的な導入形態はESG専任担当者のみを置くというものですが、運用会社全体にESG投資が浸透するほど、高職位者が責任者となっています。一例として三井住友トラスト・アセットマネジメントはスチュワードシップ活動諮問委員会を2年前に設置し、社外取締役3名を委員を任命しています。

(2)人材開発についてはスチュワードシップコード原則7で言及されていますが、取組はまだ限定的です。一部の会社では内部でESG研修をしていますが、ESG要因のファンドマネジャー評価への統合、ファンドマネジャーの採用について多様性の改善などは開示がありません。

3.開示

(1)開示形式、(2)利益相反防止、(3)手数料については4社は既に様々な取組を展開しています。(1)では方針・エンゲージメント・議決権行使についてスチュワードシップレポートに50ページ未満でまとめています。また(3)手数料についてもウェブサイトやファンドの月次報告書で開示されており、信託報酬というファンド購入者にとってはコストとなる額を差し引いた運用成績の開示も通常です。とはいえ、スチュワードシップレポートや月次報告書が顧客・受益者にとって、より分かりやすい表記にできるかどうかは今後も課題となるでしょう。

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