日本経済の誕生地を発見/本居宣長を身近に感じる展示/松阪市
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松阪市は日本経済誕生の地だ。江戸時代初期、綿織物の国産化を機に全国の産業化が一気に進む。その綿織物の最大級の産地が伊勢であり、その扱いで成功したのが松阪商人だった。代表的な大商人が三井越後屋、すなわち今の三越であり、そこから発展したのが今の三井グループだ。
江戸時代の中心街、本町交差点には大きく「三井家発祥地」の案内表示がある。一角は「豪商ポケットパーク」という東屋のある休憩広場になり、三井グループが送ったライオン像が鎮座している。伊勢街道を挟んでやや斜め後方の立派な門がある敷地で、1622年、三井家初代三井高利(みつい たかとし)は生まれた。中には入れないが、産湯の井戸などがある。
伊勢街道をさらに進むと「松阪商人の館」がある。これは今も小津和紙で知られる小津清左衛門家の豪壮な旧邸。江戸時代は三井に次ぐ豪商だった。伊勢街道西側を一つ入った通りには、のちほど詳しくご紹介する本居宣長邸跡があるが、彼も旧姓は小津で一族の出身。近年では映画監督の小津安二郎(おづ やすじろう)も一族で、市街外れに「小津安二郎青春館」がある。
宣長旧宅の通りには重要文化財の旧長谷川邸もある。こちらは公開日が限られるが、明治期以降に拡張した見事な庭園や、蔵に残る千両箱なども解説付きで見ることができる。
江戸の豪商の趣が残る旧長谷川邸
江戸時代初期、徳川の平和の下、全国で新田開発が進む。人口が増えるとともに、国産化に成功した綿織物が爆発的人気を呼び生活革命が起きる。綿を染める藍や紅花の生産が盛んになり、肥料にするイワシやニシン、夜なべ仕事のための菜種油の需要が高まる。参勤交代で整備された交通網を使い特産品の流通が進み、決済のための両替・為替が発達する。こうした素地に明治維新で西洋の科学技術を取り入れ、日本の近代化は急速に進んだのだ。
伊勢は綿の産地であり、古くから織物が盛んだったため上質の綿織物が大量に作られた。それを扱った地元の商人が、江戸や京都で大成功したのは自然な流れだった。お伊勢参りなどで人の流れが多く情報も入りやすかったのだろう。画期的な商いをしたという三井高利の発想も、諸国の人たちとの交流で育まれたのかもしれない。
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