新たな視点が生まれる都市。〜本のひととき〜

「東京」中野正貴

中野正貴という写真家を知ったのは「TOKYO FLOAT」だった。新聞か雑誌に紹介されていて、まずは図書館で借りてみた。

小舟から撮影した水辺の風景は、視点が水面ギリギリで。

普段こんな風に川を眺めることはない。その新鮮さが私の心を掴んだ。

借りては返すを繰り返していたら、購入を決めた時には絶版になっていた。

迷わず手に入れておけば良かった…!

昨年、東京都写真美術館で写真展が開催されるのを知った。

そこで販売されたのが本書。

もう迷わなかった。

ライフワークとして30年あまり。

180点の写真が掲載されている。

窓、無人、川の上etc…制約を設けて撮影した東京の姿が7つのセクションに分かれており、その中に私が心惹かれた「TOKYO FLOAT」も収められている。

かつて水の都と呼ばれた江戸。

現代に残された水路を改めて辿る。

「TOKYO NOBODY」はタイトル通り無人という制約で撮影されている。

一体いつシャッターチャンスを掴んだのだろう。見たことがない東京だ。

看板のごちゃつきが不安を煽る。

街の主役は果たしてどちらだったのか。

ページをめくりながら、作者のファインダーから見た景色を私のファインダーで再発見する。

見たことがあるのに初めてのような。

変わり続ける東京。

肩の力を抜いて、東京を歩き回れる日が早く来るといい。


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