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【詩】卑しさを背負う

黄昏の西空

レースのカーテンが

淡い黄金色に染まる。


虫たちは

盛夏を乗り越えたことを

讃えあうように

音をはりあげている。



忙しそうに空を横切る小鳥たち

晩夏の中にも

すべてが凍てつく季節を予感して

ひたすら冬に備えている。



私だけが

薄く黄ばんだ天井を見つめ

仰向けになり

まんじりともせず

無為の時を過ごしている。


美しき夕やけが

一日の終わりを告げる時

今日もなにも成さなかった事が

やけに心に染みてくる。


生きているという事実が

物憂さげに

肩にのしかかり

私の膝を萎えさせる。


賞賛もせず

己を省みることもせず

感謝することもない。


ただここに在ることのみが

私の真実。



盛り合う虫たちよ

我の屍を喰らい尽くせ。


真剣な小鳥たちよ

我を嘲笑え。


万物を照らす光よ

私だけは照らさないでくれ。



いや

私には蔑まれることすら

贅沢だ。


すべての存在は

この瞬く間に

真摯に世界と向かい合っている。


世界に

遊びを許す余地はない。

卑しき者にとらわれる

余裕もない。

義理もない。


私は望む。

ただ、このまま、朽ちさせてください。


私は

懸命な虫や鳥に

顔向けすることもできません。




そして

多分



我の卑小さを自覚して

それを克己することもなく

ただ惨めさと向かい合うことこそが



私が果たすべき

つとめ。

あの方から託された

担うべき真理。

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