読順⑤ソーシャルワークとの関連(その1)社会福祉士(会)との関連

社会福祉士との関連

難民(アサイラムシーカーズ含む。以下略)支援について、支援者(団体)として挙げられるのが社会福祉士ですが、社会福祉士養成のカリキュラムに「難民」について取り上げられていないばかりか、外国人支援についての専門的な教育カリキュラム(例えば、「多文化ソーシャルワーク」のようなもの)はつくられていません。

しかし、社会福祉士には難民を含む外国人に対する支援に倫理的な責任があります。社会福祉士の定義として、社会福祉士及び介護福祉士法(第2条)で規定されているのは以下の通り。「社会福祉士は、登録を受け、社会福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、身体上・精神上の障害、環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じる。」「社会福祉士は、①助言、②指導、③福祉サービスを提供する者、医師その他の保健医療サービスを提供するその他の関係者との連絡・調整の援助を行う。」

また、社会福祉士の倫理綱領には、「社会福祉士は人権と社会正義の原理にのっとり、社会福祉の推進とサービス利用者の自己実現をめざす専門職である」と定めています。そして、倫理基準として、

「Ⅲ 社会に対する倫理責任
1.(ソーシャル・インクルージョン) 社会福祉士は、あらゆる差別、貧困、抑圧、排除、無関心、暴力、環境破壊などに立ち向かい、包摂的な社会をめざす。
2.(社会への働きかけ) 社会福祉士は、人権と社会正義の増進において変革と開発が必要であるとみなすとき、人々の主体性を活かしながら、社会に働きかける。
3.(グローバル社会への働きかけ) 社会福祉士は、人権と社会正義に関する課題を解決するため、全世界のソーシャルワーカーと連帯し、グローバル社会に働きかけるとしています。」

※最近「倫理綱領」が改定されて、1については「無関心」が付け加わった!

また、国際ソーシャルワーカー連盟によるソーシャルワークの定義では、

「ソーシャルワーク専門職は、人間の福利(ウェルビーイング)の増進を目指して、社会の変革を進め、人間関係における問題解決を図り、人びとのエンパワメントと解放を促していく。ソーシャルワークは、人間の行動と社会システムに関する理論を利用して、人びとがその環境と相互に影響し合う接点に介入する。人権と社会正義の原理は、ソーシャルワークの拠り所とする基盤である」としています。

その他、ソーシャルワークのグローバル定義の「社会的結束」や「多様性の尊重」とも関連が大いにあり、またこれを受けた日本ソーシャルワーカー連盟の展開でも

「ソーシャルワークは、人権を尊重し、年齢、性、障害の有無、宗教、国籍等にかかわらず、生活課題を有する人々がつながりを実感できる社会への変革と社会的包摂の実現に向けて関連する人々や組織と協働する。」としています。


こうした社会福祉士の定義や倫理責任を見ても、日常生活を営むのに支障をきたしやすいであろう難民への支援、または人権・社会正義の観点から社会福祉士が社会に働きかけをするべき倫理的責任があると言えます。

「支援すべき倫理責任はあるが養成カリキュラムではカバーしていない」という矛盾をはらんでいるのが現状ですが、それでも特に人権と社会正義をその倫理の原理としている士業(専門職)として、社会福祉士が率先してこの問題に関わっていく必要があると思います。

社会福祉士会との関連

(僕が調べたところですが)社会福祉士会としては、一部の地域で支援者や当事者を交えた勉強会をしているところはありますが、日本社会福祉士会や東京都社会福祉士会として研修や勉強会はおこなっていませんでした。

都道府県社会福祉士会の会員向けのeラーニング講議の中で「滞日外国人支援基礎力習得のためのガイドブック活用研修」がありました。

(僕が調べたところですが)日本社会福祉士会としてこれまで特に個別の問題として「声明/意見」は出していないようです。僕は入管行政による人権侵害行為や制度上の問題などについて、声明/意見を出すべきだと思います。

一方で、2020年6月4日付の「2021年度予算・制度に関する提案書」の中で、外国人に対する生活保護の扱いについて、厚生労働省社会・援護局関係宛てで下記のように提案している箇所があります。

「○生活保護の対象者に外国人を含める生活保護法の改正
生活保護法における外国人の扱いについては、現状においても厚生労働省の通知を根拠として、各自治体は一定の在留資格を有する外国人に対して人道
的な観点から行政措置として、生活保護法を準用しています。我が国が人道に基づき、国籍に関わらず誰でも健康で文化的な最低限度の生活を送ることができる国であることを示すためにも、外国人に対する生活保護法の適用について、検討をお願いします。」

けっこうざっくりとした提案ですが、歓迎すべき法改定の提案だと思います。ぜひとも法改定していただきたいと思いますし、外国人支援についてもう少し具体的に踏み込んで個別の提言(声明を出すなど)をしてもらいたいと思います。

追記:自治体のソーシャルワーカー養成・活用事業

愛知県では、2006年より「多文化ソーシャルワーカー」の養成・活用事業が行われている。また、群馬県では多文化共生ソーシャルワーカー育成事業」が取り組まれている。神奈川県や浜松市などの外国人集住都市でも同様の取組が見られる。


<参考資料>

日本社会福祉士会ニュース197号(2020年9月)https://www.jacsw.or.jp/01_csw/02_katsudo/files/news/197.pdf