見出し画像

前頭眼窩皮質の論文まとめ①

画像1

★前頭眼窩皮質(前頭眼窩野、OFC)とは?


・前頭葉の腹側(下面)に位置する。
・感情の処理や社会性、意思決定に重要とされる。

1. 「前頭眼窩野と情動」


前頭眼窩野の破壊:情動や気分を変えることが示唆される。


2. 「前頭眼窩野と報酬」


・前頭眼窩野に異なる報酬予測の程度に関わる2種類のニューロンが発見され、前頭眼窩野が動機づけに関与していることが示唆される。
・報酬期待の大きさを表すニューロンが前部帯状回に存在し、連携している。
・それぞれの活動場面で、ドーパミンニューロンの活動も相違している。


3. 「和音タイプと脳活動の関連性」


・和音聴取時は右半球の賦活量が大きい。音楽や和音の認知に右半球が関与しているとの報告ある。
・DLPFC、OFC、外側下前頭皮質、前頭内側部に特長的な賦活がみられた。
・OFC「前頭眼窩皮質」は音楽の構造的理解に関わる部位であることが指摘されている。
・右前頭眼窩野と楔部は三和音の音響特性から生じるモード感や不安定感の認知に関連する部位であることが示唆される。


4. 「摂食行動中のニューロン活動」


・実施内容↓
①視床下部の電気刺激による摂食行動・性行動の変化、ニューロン活動の測定
②多連微小電極での視床下部外側・扁桃体・前頭眼窩野のNA・DA調節作用の調査
・結果↓
①視床下部腹内側核の刺激:摂食行動の抑制、雌の性行動誘発
※視床下部・扁桃体・前頭眼窩野の活動は餌―報酬の価値や血糖値・空腹レベルに依存した。
②視床下部外側野と前頭眼窩野:求餌行動時にNAで抑制、DAで活動が促進された。
扁桃体:中心内側部で報酬期に影響し、NAで抑制、DAで促進された。

5.「辺縁系とOFC」


・情動では,中核となる扁桃体において感覚刺激の価値評価がなされ、その評価に見合う身体反応が自律神経反応として表出される.
・不快な感覚である疼痛や痒みには帯状回や島回,基底核や視床が関与している.
・情動のうちの嫌悪感情では,島回が中心的役割をもち,嫌悪にともなう身体反応を検知する内受容性感覚に基づいて行動を解発・制御している.
・情動反応は個体の生存だけでなくヒトとヒトとの関係で重要性をもっているが,社会性そのものでは前頭眼窩面や視床背内側核が重要である.


6. 「摂食障害と前頭眼窩皮質」


・実施内容:摂食障害者7名にSPECTを実施し血流を測定した。
・結果:全例において前頭眼窩皮質、その周辺に血流低下を認めた。
・結論:強迫的な食行動異常と前頭眼窩皮質の血流低下が関連している可能性が示唆される。


7. 「報酬と罰に伴う脳活動の比較」


実験内容:自由選択課題を行わせながらそれに応じて金銭的な報酬/罰が与えられる。そして金額が明らかになった時の脳活動を分析した。
・結果↓
①金銭的な報酬と罰の価値:帯状回の異なる領域で別々に表現
②金銭の高度な価値判断:前頭連合野
③金銭感覚の個人差:前頭眼窩部


8. 「多義的旋律に対する脳活動」


多義的旋律:認識旋律が複数ある1つの刺激音。
認識旋律:刺激音を錯聴すると聴くことができる
結果:前頭眼窩野での活動の増加が見られた。
※これはワーキングメモリと情動的反応の関与を示唆している。


9. 「嗅覚刺激に反応する脳部位の同定」


鼻腔へのニオイ刺激:アミルアセテート(バナナのような匂い。無色透明。)
反応:両側前頭葉(特に前頭眼窩皮質)
結果:嗅覚刺激には前頭眼窩皮質が特に強く反応している。


10. 「強迫性障害とOFC」


・前頭眼窩面と尾状核の過剰な賦活が生じていることが多くの研究で示されている。
→さらに,有効な治療によって症状が改善するとともにこれらの過活動は収束する。
・治療に良好な反応を示す群では,前頭眼窩面,尾状核の治療後の代謝量低下がより顕著であった。
→前頭眼窩面の治療前活性はOCDの薬物治療への反応性の指標となる可能性が示唆されている。
・症状発現時は、前頭眼窩面,前帯状回,尾状核,視床の神経物質レベルでの促進,抑制の相互調節機構のバランスが崩れ,神経回路が連続的発火現象を起こし,過活性状態に陥っているとされる。


【参考文献】


1. 小川昭利, 冬のワークショップ参加記, 日本神経回路学会誌, 2003, 10巻, 2号, p.107, 公開日2011/03/14, OnlineISSN1883-0455, PrintISSN1340-766X, https://doi.org/10.3902/jnns.10.107, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jnns/10/2/10_2_107/_article/-char/ja

2. 久保田競,前頭葉の働きと情動,行動,心身医学,1988,28巻,Abs号,p.1-,公開日2017/08/01,OnlineISSN2189-5996,PrintISSN0385-0307,https://doi.org/10.15064/jjpm.28.Abs_1,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/28/Abs/28_KJ00001590795/_article/-char/ja

3. 藤澤隆史,NormanD.Cook,和音聴取時におけるモード感の認知プロセス,日本心理学会大会発表論文集,2008,72巻,日本心理学会第72回大会,セッションID3EV138,p.3EV138,公開日2018/09/29,OnlineISSN2433-7609,https://doi.org/10.4992/pacjpa.72.0_3EV138,https://www.jstage.jst.go.jp/article/pacjpa/72/0/72_3EV138/_article/-char/ja

4. 粟生修司,高木厚司,大村裕,(W)-9サル摂食行動の中枢調節機構((b)指定発言)(食行動と心身のバランス),心身医学,1988,28巻,Abs号,p.16-,公開日2017/08/01,OnlineISSN2189-5996,PrintISSN0385-0307,https://doi.org/10.15064/jjpm.28.Abs_16_1,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/28/Abs/28_KJ00001590822/_article/-char/ja

5. 福武敏夫,河村満,シンポジウム18辺縁系をめぐってねらい,臨床神経学,2010,50巻,11号,p.996,公開日2011/03/28,OnlineISSN1882-0654,PrintISSN0009-918X,https://doi.org/10.5692/clinicalneurol.50.996,https://www.jstage.jst.go.jp/article/clinicalneurol/50/11/50_11_996/_article/-char/ja

6. 村田智史,山田宇以,太田大介,I-3.クリティカルパスを用いて短期教育入院を行った神経性無食欲症患者の1例(第113回日本心身医学会関東地方会演題抄録),心身医学,2011,51巻,5号,p.432-433,公開日2017/08/01,OnlineISSN2189-5996,PrintISSN0385-0307,https://doi.org/10.15064/jjpm.51.5_432_3,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/51/5/51_KJ00007176127/_article/-char/ja

7. 藤原寿理,筒井健一郎,報酬の脳内表現,日本心理学会大会発表論文集,2008,72巻,日本心理学会第72回大会,セッションIDL28,p.L28,公開日2018/09/29,OnlineISSN2433-7609,https://doi.org/10.4992/pacjpa.72.0_L28,https://www.jstage.jst.go.jp/article/pacjpa/72/0/72_L28/_article/-char/ja

8. 草野睦月,川勝真喜,根本幾,王力群,多義的旋律に対するfMRIによる脳活動の研究/続報,生体医工学,2018,Annual56巻,Abstract号,p.S301,公開日2018/09/14,OnlineISSN1881-4379,PrintISSN1347-443X,https://doi.org/10.11239/jsmbe.Annual56.S301,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmbe/Annual56/Abstract/Annual56_S301/_article/-char/ja,

9. 瀬尾律,外池光雄,山口雅彦,貴田浩之,肥塚泉,嗅覚刺激による脳磁場の反応,日本耳鼻咽喉科学会会報,1998,101巻,4号,p.540a,公開日2008/03/19,OnlineISSN1883-0854,PrintISSN0030-6622,https://doi.org/10.3950/jibiinkoka.101.540a,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka1947/101/4/101_4_540a/_article/-char/ja

10. 中尾智博,OCDの行動療法と薬物療法─機能的脳画像による効果の検証,日本生物学的精神医学会誌,2012,23巻,3号,p.193-199,公開日2017/02/16,OnlineISSN2186-6465,PrintISSN2186-6619,https://doi.org/10.11249/jsbpjjpp.23.3_193,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsbpjjpp/23/3/23_193/_article/-char/ja

この記事が参加している募集

#最近の学び

181,465件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?