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幸福の脳活動

佐藤弥 こころの未来研究センター特定准教授、河内山隆紀 ATR脳活動イメージングセンタ研究員らの研究グループは、 主観的幸福と対応する脳活動および脳内ネットワークを明らかにしました。​

https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/embed/jaresearchresearch_results2019documents190820_201.pdf

①この論文が脳活動について述べていること
・楔前部:否定的な自己意識や心の迷いに関係する。右楔前部の安静時活動が低いほど、主観的幸福得点が高い
・右楔前部と感情処理に関わる右扁桃体の機能的結合が強いほど、主観的
幸福得点が高い
・安静時に楔前部の働きが弱いことが幸福感の基盤となっている可能性が示唆される。
・右楔前部と右扁桃体の機能的結合が強いほど、主観的幸福得点が高い。
 扁桃体は感情処理に関わり、感情を適切に統合することで幸福感が生まれる可能性が示唆される。

・扁桃体とは?(脳神経ペディアから引用)
>扁桃体は情動、特に恐怖や不安を惹起する情動的な出来事に関連付けられる恐怖記憶の形成、貯蔵、消去において中心的な役割を担う。
>扁桃体は、大脳皮質、海馬、線条体に投射し、それぞれ恐怖や不安を惹起する情動刺激に対する選択行動、記憶固定の強化、逃避行動などに関わる。
>分界条を介して視床下部にも投射して内分泌機能や自律神経機能に影響を与え、情動の反応表出に関わる。この特異な神経機能から大脳基底核ではなく大脳辺縁系の神経核として扱われる。

>扁桃体は3つの主要な核が存在する
・基底外側核:情動刺激の処理と学習、恐怖条件付け
・中心核:内臓痛など生得的な情動刺激に対する反応の生成、自律神経反応
・皮質内側核:嗅刺激により誘発される行動制御(性行動や摂食行動)

・楔前部とは?
>エピソード記憶の検索、視空間的イメージ、自己に対する意識や心象
>内側前頭前野と外側側頭葉の二つのサブシステムを統合する機能を持つとされる(Buckner et al., 2008)
>楔前部の活動は否定的な自己意識や心の迷いに関係する。
1)>記憶訓練後,特に楔前部と他の部位との機能的結合性が高まっていた。
1)>楔前部は,部位によって神経連絡が異なっている(Margulies ら 2009)。
・前部:運動前野,補足運動野などの前頭葉領域,島皮質との連絡が密。
・中部:頭頂間溝や前頭前野背外側部との神経連絡が強い。
・後部:後頭葉領域との神経連絡が強い
3)>楔前部は頭頂葉外側部,前頭葉(前頭前野,運動前野,補足運動野),前部帯状回とともに,帯状回後部にある後帯状皮質および脳梁膨大後皮質と線維連絡が密であることが知られている(Cavanna ら 2006)。

・楔前部は様々な箇所と線維連絡があり、働きも異なるが、安静時に否定的な自己意識や自己評価、心の迷いとして働くことが少ないことで不幸に感じることが減り、幸福であると感じられると考えられる。

参考文献
1)認知神経科学からみた記憶リハビリテーションの可能性:梅田 聡 
2)脳神経ペディア
3)頭頂葉内側部の機能─道順障害の検討から─高橋 伸佳

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