【雑記_4】誰のものでもない私だけのキッチン
料理がきらいな私だが、
キッチンは大変好きだ。
基本的に家庭で作るのは
残った野菜を入れたごった煮のスープか
味の保証完璧の焼肉のタレを使って焼くお肉か
茹でて和えるだけで簡単に完成するパスタ
といった幅狭ラインナップであり、
お分かりいただいた通りたいした料理は作れない。
しかしそれでも「キッチン」という空間が大好きだ。
小さな頃、キッチンは母の舞台だった。
その舞台にお手伝いで参入することはできても、主役として私が登壇することはない。いつだって主演女優は母であり、私は脇役のこどもAであった。
脇役こどもAは思い出す。
そういえば主演女優は1日の大半をキッチンで過ごしていた。
朝はお弁当を作り、昼はパンケーキを焼き、夜は4人の家族のために大量のおかずを作っていた。(我が家は大食い家系である)
そして料理が出来上がったらすぐに洗い物をし、自分が食卓につくのは、もはやみんなが食べ終える頃だった。
いま思えばなんて優しい人だったんだろう。
ひとり暮らしをはじめて全人類が思うことだが、
料理ってとってもめんどくさい。
包丁をにぎる時間だけが料理ではない。
献立を考える、材料を知る、買い物に行く、冷蔵庫にしまう、レシピをみながら作る、食べる、お皿を洗う
この一連の流れ、なんと面倒なことだろう!
それでも人間食べなければ生きていけないので、
今日も適当な野菜をごろごろとまな板に並べる。
よし、切るぞ、切って炒めるぞ、くたくただけど!
トントンと気持ちいい音が響く。
母はこれを1日3回、笑顔でこどもの相手をしながらこなしてたんだもんなあ。
ほんのきもち程度に口角をあげてみる。
そうだ、
実家ではただの脇役こどもAだった私だけれど、
このキッチンでは私が主演女優なのだ。
むだに歌ってみたり、大きな身振りをしてみた。
側からみたら頭がおかしい女でしかないのだが、
やってみると自分でも笑ってしまって元気がでる。おすすめしたい。
そんな風にるんるんで作った炒め物は、いつもと同じ焼肉のタレの味がしたけれど、不思議といつもより美味しくて。
やっぱり料理は下手だし嫌いだし
いつまでたっても成長しないけど、
キッチンに立ってる自分は好きだなあと思う。
よーし、次は片付けだ。
第二幕もるんるん気分で舞台に立ってやろ。
m.
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?