【小説】「straight」105
「よく頑張ったな、光璃」
澤内は、肩に掛けていた大きなスポーツタオルで光璃を包み、頭を優しく撫でてやった。
「へへへ」
最愛の人に抱き締められて、彼女は満足そうな表情を浮かべた。
そこへ、残りの4人が飛び込んで来る。
「やったあ光璃っ!」
「優勝よォっ!」
「ウチにも触らせろっ!」
「この色男っ!」
ひと固まりになってぎゃーぎゃー騒ぎだした6人に、スタンドの観客はいつまでも惜しみない拍手を送った。
「俺は……今日この場所に居た事を、誇りに思うよ」
営業課長は、思わずこみ上げて来た涙を、慌ててハンカチで拭った。
「人を育てるとは、こういう事なんだな……」
教え子達と手を繋ぎ、照れながら真ん中で拍手を受けている悠生を見て、彼はしみじみそう思った。
(俺も、頑張ろう)
いい気分でその場を離れようと思った課長だったが、ある事に気が付き、はっとなった。
「待てよ、あいつ今、マスコミに追いかけられてるんじゃなかったか?!」
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