【週末ストーリィランド】「風のように、また。」第5話
「両親が死んでから、兄は男手ひとつで私を育ててくれました。生活は苦しい筈なのに、『久深は夢を追い続けるんだ』って、無理をしてバイオリンも習いに行かせてくれて……」
少し言葉を区切った彼女は、小さく深呼吸をして話を続けた。
「大好きだった絵をやめて、一心に仕事に打ち込む兄を見て、わたしはだんだん罪悪感に囚われてきたのです」
久深の顔に、苦悩の色が浮かぶ。
「高校三年の秋、新人賞を受賞した時、わたしは思い切って言いました。
『自分ばかり夢をかなえてちゃ不公平だわ』って」
「