【週末ストーリィランド】「ためいき泥棒」第21話
集中治療室の中の直人は、眠っているだけのように見えた。
しかし、彼の周りを取り囲んでいるおびただしい機器類が、避ける事が出来ない現実を物語っている。
「話しかけても、いいですか?」
医師が頷くのを見て、彼女は直人に向き直った。
「ナオ兄さん、久しぶり。アオイだよ」
努めて明るく話し掛ける。
「この前はゴメンね、急に帰ったりして。部屋にもいかなくなっちゃって……」
「私、ずっと謝りたかったんだ。ごめんなさい」
彼女はペコンと頭を下げた。
「色んな事を考えていたの。兄さんの事、お姉ちゃんの事、私の事……」
そう、私は本当に考えていたのだ。
ナオ兄さんが亡くなる日まで。
「……私らしくいよう、って」
涙が、頬を伝った。
(しまった)
慌てたアオイだったが、もう収まりがつかない。
あとからあとから、想いが溢れ出してくる。
(いやだ、いやだよう……)
「私、まだちゃんと言ってないよ」
医師の静止も聞かず、アオイは直人のベッドに縋り付いた。
「目を覚ましてよッ、お兄ちゃんっ!」
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