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【小説】「インベンションマン」007

「……で?」
 春都は、あらためて画面に向き直る。
「わざわざ呼び付けたからには、よっぽどの案件なんだろうな?」
『ソウ、マズハコレヲミテ』
 ナタリーは、画面の端にぴょこんと寄った。
 次の瞬間、空いたスペースにデータベースが現れる。

「下着泥棒の被害届リストか。同じものが相談室にも来てるぜ」
 大して珍しくもなさそうに眺める春都。
 一方の蔵敷は、画面に思い切り齧り付いていた。
「おお、C組の春日ちゃんは苺柄かあ!B組の早紀女史は何と薄い紫、くう~っ!」
「……変態」
 冷めた瞳を彼に向けたまま、春都はナタリーに尋ねた。
「それで、これがどうしたんだ?」
『アラ、キヅカナイノ?』
 彼女は揶揄うように言った。
『被害者ハ、ミンナ7バンチノ生徒ヨ』
「……特進クラスか」
 リストを改めて眺めた春都は、納得した顔でふむと頷く。

 各学年のA組からC組までは、有名大学合格を目的とした『特別進学コース』となっている。
 そこでは授業のカリキュラムも、普通クラスとは明確に色分けされている。
 更に、学習環境の向上と称して、最新鋭の設備が揃った豪華な校舎が用意されており『学園みらい7番地』といえば、学内の聖地となっているのだ。

 特進クラスと普通クラスの振り分けは、入学試験によって決定するが、年二回行われる試験に合格すれば、特進クラスへの編入も可能である。
 稀に、内部進学に希望変更したなどの理由で、特進クラスから普通クラスに編入する者もいる。
 春都は、その一人だった。

「あそこには、あまり良い思い出はねーけどなぁ。じゃあ、犯人は才女を好むというのか?」
『イマ分析中ヨ、結論ヲ導キ出スニハ、マダマダでーた不足ダワ』
「それで、データを集めるため、俺達の力が必要ってわけか」
 腕を軽く振りながら、春都が言った。
「地味な仕事だが、初めての任務には丁度いいかもな……って蔵敷、どこへ行くんだ!?」

 グラビア雑誌を丁寧に鞄にしまい、立ち上がろうとした蔵敷の姿を見た春都は、驚いて声を掛けた。
「悪いな。5時から要人との晩餐会なんだ」
「ばんさんかぁい!?」
「ホストの俺が居ないと色々マズいからな。という事で後はヨロシクっ!」
 そう言い残した彼は、止める間もなく風の様に走り去って言った。

 残された春都は、彼の後姿を呆然と見送りながら呟いた。
「あいつ、一体幾つなんだ?」

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