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【小説】「straight」097

県教育委員会理事長 出雲英枝(いずもはなえ)
 桔梗女子学園第一区 出雲桔梗

レストランチェーン
 『ムーンリバー』代表取締役 一枝正弥(いちえだまさや)    
 桔梗女子学園第二区 一枝月菜

会員制スポーツクラブ
 『X‘CIT』 代表取締役 相原剛士(あいはらたけし)
 桔梗女子学園第三区 相原真深

自動販売機総取扱
 『水野ベンディング』代表取締役 水野健治(みずのけんじ)
 桔梗女子学園第四区 水野柚香


「これは……」
 そこに並んだ錚々たる顔ぶれに、課長は息を飲んだ。
 いずれも、彼の会社にとっては有力な得意先である。
「奴さん、自分でも知らないウチに、凄いパイプを繋げていたんだぜ」
 そう言う稔流も、最初にこれを見た時は度肝を抜かれた事を思い出した。
「で、最後の彼女が強烈だ」
 スクリーンの中で熱走を続けている光璃を指して、稔流は言った。
「彼女のじいさんは、『ヤマサ』の会長だ」
「げえっ!」
 課長は思わず椅子から転がり落ちた。

 スーパーヤマサ。
 県下に50店を有し、この地方ではナンバーワンのスーパーマーケットである。
 特に課長の所属する支店に置いて、ヤマサの売上は実に全体の3割以上を占めていた。

「待てよ、確か会長の娘婿はヤマサの商品部長じゃなかったかな」
「その通り」
「うわー、嬢ちゃん頑張れーっ!」
 先月の商談で、俗名『堅物』と呼ばれる佐山部長が、一人娘の話になると途端に表情を崩していた事を思い出し、課長はポイントアップのため、いきなり拳を振り上げて応援しはじめた。

「さてと、じゃあ私は失礼するよ」
 楽しそうにそれを見ていた稔流は、やおらに立ち上がった。
「あれ、これからどこかにお出掛けですか?」
「いや、所定の位置に戻るだけさ」
 彼に気付いて声を掛けた課長に対して、ゆっくりとかぶりを振る。

「ようやく、もう一つの舞台が整ったのでね」

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