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【小説】「straight」009

『さあ、今年も箱根駅伝の季節がやって参りました。今日は大会二日目、復路そして総合優勝を目指して、各校が熱き戦いを繰り広げることでしょう……』

 正月で賑わう街中に、スクリーンから熱のこもった実況中継が聞こえてくる。

 初詣帰りの人々が、次々と街頭の液晶ビジョン前に集まって来た。

『……昨年、復路優勝を成し遂げ、古豪復活を見せつけたD大学。その立役者が今年も帰って参りました』

 アナウンサーは、集まった人数を知っているかのように、誇らしげな口調で読み上げる。

『昨年、若干一年生ながら第六区の区間記録を30秒以上縮め、【新・箱根下りのスペシャリスト】の称号が与えられた澤内悠生。もちろん今日も第六区を激走中。悲願の総合優勝に向け、現在後続を大きく引き離し、完全に彼の一人旅となっています』

 スクリーン一杯に、恵明学園前を通過する悠生の姿が映し出されると、観客がどっと湧いた。


「この学生、ほんとに早いなぁ」
 集団の中で画面を見ていた中年紳士が、隣に居た小学生くらいの娘に声を掛けた。
「うん、だって鳥のお兄ちゃんだもん」
「鳥?」
「ホラ、テレビで言ってるよ」
 娘の言葉に、彼はモニターに目を戻した。

『昨年、区間新記録を出したあと、彼はインタビューでこう言いました。
「走っている時、私の体は路面から浮かび上がり、空を飛んでいました。まるで鳥のように」……それ以来、人は彼をこう呼びます、【鳥人・サワウチ】と』

 順調にチェックポイントを通過した悠生は、さらにスピードを上げる。


「あ……」
「どうした?」
 娘は一瞬、走っている彼の背中に、透き通った羽根が見えた様な気がした。

 だが、彼女が瞬きした後、それはすぐに消えてしまった。
「……なんでもないや」
「もう寒いから帰ろう、続きは家でな」
「う、うん」
 少し未練があった彼女だが、父親に従ってその場を後にした。


 悲劇は、その二十分後に起こる。


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