「比較優位の原則」で自分を守る、組織を守る。
ひとりで何でも抱えてしまい、結果的に自分を潰してしまう人が多い。そういう人には「比較優位の原則」を知って欲しい。
比較優位というのは経済学用語で、国際貿易に関して使われる。例えば日本と、どこか発展途上国で、自動車と靴下を、どちらの国で作るべきか考えてみよう。
日本は自動車も靴下もどちらも自国で作ることができる。しかし途上国では、靴下は作れても自動車は作れない。また、同じ靴下であっても、途上国で作るより日本で作った方が高品質なものが作れるだろう。
それなら日本はどちらも自国で作った方がいいかというと、実はそういう訳でもない。なぜなら、同じ作るのであればより自動車に集中した方が効率的だからだ。その方が、高い利潤を得られるからだ。
では靴下はどうするかというと、途上国に作ってもらって輸入する。その方が遥かに効率的だ。
気をつけたいのは、途上国の方が人件費が安く安価に製造できるから作ってもらうのではない。日本がより高付加価値の産業に集中するために、国際分業を行うべきなのだ。
この理屈を「ひとりで何でもやってしまう人」は意識できていない。
恐らくは、上司など周囲から、他のメンバーに仕事を振って自分の時間を確保せよ、などと忠告をもらっているに違いない。それでも分担ができないのは「本来、自分が全部やるのが最も効率的」で、他のメンバーに作業を振るのは「やむを得ない、次善の策」若しくは「妥協の産物」と考えているのではないだろうか。
実際は、そうではない。
仮に他のメンバーがどの作業も自分より劣っていて、自分以下の生産性や品質しか保てないとしても、それでも他メンバーにやってもらう方が「効率的」で「生産的」なのだ。
何故なら、自分がもっと付加価値の高い、重要な仕事に注力できるからである。まさしく、比較優位の原則である。
妥協などではなく、生産性を追求すれば、そういう結論になる。
組織の生産性を上げるためにも、何より自分を守るためにも「比較優位の原則」を意識して欲しい。