【短編】もっけの幸い あるいは エンタルピー・アクション
生卵を割ったら黄身が二つ。
早朝の台所で朝ごはんの支度に余念なく、スクランブルエッグを作るみごとな手さばき。
忙しい朝食の支度で今日一日があわただしくなるのを肌で感じている。
朝から黄味二つの卵に食卓での川崎幸治の気分はハイテンション。
料理には人一倍のこだわりを持っている。
スクランブルエッグにはウィンナーソーセージ、レタスとせん切りのキャベツを添えるのが定番で、あとはトースト1枚とトマトジュースが川崎の朝食のスタイルである。
窓から差し込む7月の日差しはまぶしく、レースのカーテンを通してフロアに突き刺さるように降り注ぐ。
今のシーズンは朝の6時で既に室温が25度以上。
こんな日はどこか涼しいところで読書でもしたいのが本心である。
川崎はつい一週間前に京都府向日市のこの物集女町に引っ越してきたばかり。
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