I was born

「何かがなかったという報告は、いつ聞いても面白い。知ってのとおり、知られていると知られていること、つまり知っていると知っていることがあるからだ。知られていないと知られていることがあることも我々は知っている。言ってみれば、我々は知らない何かがあるということを知っている。しかし、知られていないと知られていないこと、つまり、我々が知らないと知らないこともある」
"Reports that say something hasn't happened are always interesting to me, because as we know, there are known knowns; there are things we know we know. We also know there are known unknowns; that is to say we know there are some things we do not know. But there are also unknown unknowns – the ones we don't know we don't know."

アメリカ合衆国国務長官ドナルド・ラムズフェルドの記者会見でイランが大量破壊兵器をテロ組織に提供している証拠がないことを記者に指摘されたときの回答だ。


ジョハリの窓ってやつだっけか。知られていないこと。自分の知られていないことはおそらく誕生日。私の誕生日は8月1日。8月の始まり。普通に考えれば覚えやすい日だと思うが実は家族以外からは祝われたことがない。小中高は夏休みなので友人と会うこともない。大学に入れば試験期間中である。三年の時、複素関数論のテスト中に誕生日を迎えた。

8月1日という真夏のとても暑い日に僕は生まれたらしい。母は祖母から「こんな暑い日に産むなんて」と言われたらしい。そんな祖母も数年前に死んだ。真冬の大雪の日だった。

生まれるということに関していえば、僕には好きな詩がある。高校の現代文の教科書にも載っているけな。吉野弘の「I was born」の一節

”----やっぱり I was born なんだね----
父は怪訝そうに僕の顔をのぞきこんだ。僕は繰り返した。
---- I was born さ。受身形だよ。正しく言うと人間は生まれさせられるんだ。自分の意志ではないんだね----
 その時 どんな驚きで 父は息子の言葉を聞いたか。僕の表情が単に無邪気として父の顔にうつり得たか。それを察するには 僕はまだ余りに幼なかった。僕にとってこの事は文法上の単純な発見に過ぎなかったのだから。”


僕は夏に生まれた、というより、夏に「生まれさせられた」ことになる。生まれさせられて25年。また26年目の生まれさせられた日がやってくる。肌が黒くなり、体中がかゆくなる時期が。


今年で26歳になるけど、多分祝われることはない。というかもう26歳なのかということに驚愕してしまう。気持ちはいまだに中学生だし、そろそろ夏休みだ。毎年行ってる市民プールへ行く時期だし、終わったらエアコンの効いた涼しい部屋でWiiをするつもりだし。GTAサンアンドレアスをしに行くつもりだし、そのあとデュエマする。オレは水光のグレートメカオーデッキ。

そんなこんなで26歳になってしまった。将来のことなんて決まってないし、まだ何も成し遂げてない。無駄に26歳になってしまった。生きた心地がしない。オレはまだ市民プールで泳ぎたいし、デュエマしたい。スイカを家族で食べたい。

フロントメモリー  PV  神聖かまってちゃん


27クラブというものがある。27歳で死んだアーティストが所属するクラブのことである。エイミーワインハウスやバスキア、カートコバーン、ジミヘン。など著名なアーティストが所属してる、というか天国にいる。

自分は来年で27歳になる。今更何か成し遂げて27クラブに行けるわけでもなく、ただ単に歳をとるという行為をするだけなんだろう。別に死にたいと思わないし、けど、将来に行き詰まってるしどうしようもないと思っている。何者かになりたかったけど何も慣れず去年より10キロ太ってお腹周りの肉がついただけ。26歳になることは太ることなんだ。27歳になったら何になる?




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