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つみたてNISAとiDeCoの違い

iDeCo(イデコ)とNISA(ニーサ)。
よく耳にするこの2つは、何が違うのでしょうか?そして、どちらを選べばよいのでしょうか?

最初に結論を言うと、この2つの制度は、資産運用を行う際に活用すると税金面でお得になる点が共通しています。そして、いつでも解約できるという点で比較的自由度が高いのが「NISA」、原則として60歳まで引き出すことができないという点で目的が老後資金準備に限定されるのが「iDeCo」です。
ですから、「どちらを選ぶか?」というものではなく、「目的に応じて使い分ける」ものであり、2つとも利用してもいいし、無理に使わなくてもいいものです。

■NISA(ニーサ)とは

NISAは「少額投資非課税制度」のことで、「1年間に一定金額までの投資については、配当や値上がり益に掛かる税金が非課税になる」制度です。
イギリスの「ISA(Individual Savings Account)」制度をモデルに作られたので、日本のISAということで「NISA」と名づけられました。

2014年に「一般NISA」が始まり、その後2016年から「ジュニアNISA」、2018年から「つみたてNISA」が始まったため、現在は3つのNISA制度があります。
※ジュニアNISAは2023年以降新たに利用することができません(=廃止されます)
いずれも、「NISAを利用するための専用口座」を開設して利用します。

金融庁が発表した2019年12月末の口座数と買付額(速報値)は次の通りです。

NISAの口座数201912

NISAの買付額201912

※( )内は、一般NISAの投資利用枠が設定されている口座数

NISAの一番のメリットは、購入した商品から得た利益が非課税となることです。
一般NISAの場合、現在の1年間の投資枠は120万円ですから、例えば120万円分の株を買ったとしましょう。この株が200万円に値上がりすると、80万円の利益がでるため、通常だと20%の税金が課されます。(正式には20.315%)
つまり、80万円×20%=16万円が税金となり、手元に残るのは64万円となります。
しかし、NISA口座で購入した場合は非課税なので、80万円の利益全てが手取りとなります。利益が出れば出るほどうれしい制度です。
「買った投資商品が大きく値上がりした時」に一番効果を発揮するわけですね。

逆を言えば、利益が出なければ何も意味がありません。
ちなみに、売却した際に非課税となる期間は限定されていて、一般NISAは購入後5年間、つみたてNISAは購入後20年間です。

売却はいつでも可能なので、スタートして1ヶ月で大きく値上がりした場合、その時点で売却して現金化することも可能です。このように自由度が高いのがNISAの特徴です。

2018年から始まったつみたてNISAは、一定の条件に合致した投資信託(ETF:上場投資信託含む)を一定額ずつ積み立てていくと、最長20年にわたって解約したときの利益が非課税になる制度で、1年間に投資できるお金の上限は40万円です。

■NISAの改正点

さて、このNISA制度、2020年度の税制改正によって変更されています。
一番大きく変わる一般NISAは、口座開設可能期間を5年延長した上、2024年からは積み立てを行うことで投資枠が増える二階建ての制度になります。
「積み立てを行うことで」と書きましたが、一階部分となる積み立てを利用しないと二階部分での投資ができないことになっていて、「え?それはつみたてNISAの役割じゃないの?」という不思議な現象が起こります。ちなみに、一階部分での投資枠は年間20万円までで、二階部分の投資枠は年間102万円まで。二階部分は一括購入が可能である現在の一般NISAと同じです。

そして、つみたてNISAは、投資を始められる期間の延長(2037年から2042年まで5年延長)というシンプルな変更で、利用がなかなか伸びていないジュニアNISAは、2023年で終了となります。

今回は、改正内容には踏み込みませんので、詳しく知りたい方は、金融庁の公表資料をお読みくださいませ。

■iDeCo(イデコ)とは

会社を退職するとされる65歳前後を境に、働いて収入を得る道から引退し、その後の生活は、公的年金(+人によっては企業年金)と、これまで貯めたお金を取り崩すことで賄うのが一般的でしょう。この取り崩すためのお金を貯める=老後資金を貯めるのは、個人のファイナンシャルプランニングの大きな目的の1つです。そして、そのための手段として活用される1つがiDeCo(個人型確定拠出年金)です。

確定拠出年金に使われる「DC」という略称は、「Defined Contribution」の頭文字です。また、お手本となったアメリカの制度が「内国歳入法401条k項」に規定されていたということで、「日本版401k」と呼ばれることもあります。

この制度を使って拠出した掛金を、自分が選んだ金融商品(主に投資信託)で運用し、その運用成果によって将来の受取額が決まる制度です。日本では大手企業を中心に企業型が先行して広がりましたが、2017年1月から加入対象者が広がった個人型も少しずつ増え始め、2020年3月末時点の加入者数は、企業型が723.1万人、個人型は156.3万人となっています。

■税制メリットを受けながら老後資金が貯められる制度

さてiDeCoのメリットは、税制上の優遇措置がある点と、強制的な積立機能を有している点といえるでしょう。

税制面では、具体的に次の3つの場面で優遇されます。

1.拠出した掛金全額が「所得控除」の対象となるため、所得税や住民税が少し安くなる
2.運用期間中に得た利益が非課税となる
3.将来受け取る時にも税金の優遇措置がある

特に「1」は大きなメリットです。
例えば、課税所得150万円の人が月10,000円の掛金でiDeCoを始めたとします。年間の掛金12万円が所得控除の対象となるため、他の要素に変化がなければ課税所得は138万円に減ります。
細かい計算は抜きにして、課税所得195万円までに対する所得税率は5%、住民税の税率は一律10%ですから、単純に掛金の15%分の税金が安くなると考えて差し支えありません。12万円×15%=18,000円ですね。

わずかと言えばわずかの金額ですが、この18,000円を定期預金の利息で確保しようとすれば、現在の0.01%という水準では1億8,000万円の元金が必要になるという、とんでもない数字なのです。
ちなみに、その人の立場に応じて1年間に拠出できる掛金の上限額があるため、お得だからといっていくらでも加入できるわけではありません。

さらに、こうした「節税効果」は、その人の課税状況によっても異なります。例えば、そもそもの課税所得が税金のかからない範囲の方や、住宅ローン控除やふるさと納税などを利用することで実質的な税負担が無い方は、iDeCoによる節税効果は関係ないのです。

■60歳まで引き出せないのはメリット?デメリット?

iDeCoのもう1つの大きな特徴は、原則として60歳までは引き出せないことです。
このおかげで、お金が不足した時に思わず引き出してしまい、本来の目的である老後資金が貯まらないという事態を防ぐことができるという意味では、大きなメリットといえます。

一方、引き出せないということは、「自分の資産なのに緊急事態に使うことができない」というデメリットにもなります。例えば、今回のコロナ禍のような非常事態に、とりあえず手持ち資金が無いからiDeCoを解約したいと思ってもできないのです。
「老後のための資金準備」という目的が明確でなければ避けるべき制度なのかもしれません。
ちなみに、掛金が全額所得控除となる積み立て制度には、小規模企業共済というものもあります。今回は名前のみの紹介にとどめますが、自営業者や中小企業の役員など、利用できる立場であればぜひ検討するべき制度といえるでしょう。

■NISAとiDeCoはどちらを選ぶべきか?

ここまで読んでいただければお分かりのように、2つの制度は目的に応じて使い分けるものです。両制度のメリットとデメリットを知った上で、自分で選ぶしかありません。
ただ、iDeCoは一度始めると止めることができませんから(注:掛金の拠出をストップすることはできます)、悩んでいるなら「つみたてNISA」からスタートするべきでしょう。
現時点で、「老後資金を貯めるんだ!」という明確な意思があるなら、iDeCoが有力な選択肢ですが、先ほど触れた小規模企業共済などとも比較するべきです。

なお、今回の話はYouTubeの「FP栗本チャンネル」でも解説していますので、こちらの記事と合わせてご覧ください。

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いずれにしても、「税制メリットがあるから制度を使うのではなく、ご自身の公的年金の加入状況を知り、老後の生活を思い描き、不足する資金の目安を把握したうえで、その手段としてどの制度を利用するかを考えるというステップが大切であり、そのためには将来のライフプランの作成がベースになるのです。
老後資金準備は、早く始めるに越したことはないのですが、かといって慌てて始める必要は無い点をお忘れなく。

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