発達障害との向き合い方。
発達障害で悩む知人がいる。
江藤駿介(仮名)とでもしておこう。
彼の発達障害はADHD。
注意力欠陥だ。
重要なことでも期限を守れない。
順序立てて説明ができない。
物をすぐになくす。
必要ない事をベラベラ話してしまう。
感情の整理ができない。
江藤氏が語る。
決して悪気があるわけじゃないんだけど、周りの人に迷惑をかけてしまう。
期限を守れないから信頼をなくし、説明が苦手だからもどかしくイライラしてしまう。
かといって、必要でもないことをベラベラ話してしまう。
俺が他人なら絶対に関わりたくない。
椅子から立ち、うろうろ歩きながら大声で話す。
特に、人のミスは絶対に許せない。
自分は間違いをよく侵すくせに、他人のミスは徹底的に攻め込んでしまう。
もっと寛容になればいいのだが、感情がそれを許してくれない。
発達障害の理解は、そうでない人にしか分からない。
産みの親を恨んだこともあるし、自殺も考えたこともある。
命に関わる病なんだよ。
ADHDって。
子どもころは、周りの人が寛容に接してくれる。
でも、大人になったら、そうはいかない。
世論は、これを理解してないからね。
俺らのことを、危険なやつだと思ってる。
コンビニのカフェオレを差し入れると、ペコリと頭を下げ、公園のベンチに腰掛けた。
俺の好みよく覚えてたよな。
苦いの苦手だろう?
障害とは、付き合い方が大事だと思ってる。
俺の場合、人とは関わらない仕事がいいと感じる。
黙々と工場で作業する。
夢中で荷物の積み下ろしをする分には、支障がないからね。
ただ、人に指図されるとムッとして、口論になることがあるけどね。
こんな俺はダメなやつなんだ。
もしかしたら前世で何か悪いことした罰なんかもな。
江藤氏が語る。
いや、お前はいい奴だよ。
人に迷惑かけるくらい気にするな。
そんなの大したことじゃない。
世の中の役に立とうとか思わなくていい。
人生最後まで全うできたら、それだけで十分だろう。
お前は悩みながらも生きてる。
それでいい。
栗栖が肩入れする。
木を隠すには森がいい。
そんな言葉もあるよな。
俺のような奴でも、必要としてくれる女がいるのは、ほんと不幸中の幸いだよ。
何がいい変わらんけど、理解してくれるんだよ。
そいつのために生きてるようなもんだから。
一生懸命働いて、稼いで、いいもの食わせたいよな。
お前のそういう一生懸命な所が、好きなんじゃないのか。
俺はお前がうらやましいぜ。
俺にはそんな女いないからな。
二人はカフェオレを飲み干すと、子どもたちが無邪気に遊ぶ砂場へと目を向けた。
前の話はこれ。
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