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引き継がれることの美しさと、塗り替えられることの儚さと。

嬉しいことの方が遥かに多い。誇らしい気分にさえ浸らせてくれる。
少し、寂しいような気もするだけで。

先日、僕の(所属する)団体が主催するイベントがあった。一年前、僕が「司会」を久しぶりに務めさせてもらったイベント。
正直、僕はスピーチをするよりも司会として誰かのコメントを茶化したりする方が、本当は向いている気はしているんだけれど───まあそれはいいか。

普段、まじめくさったことばかりをしている僕たちだが、たまにはお遊び(とかいうと、またどこかから怒られてしまいそうなのでリフレッシュ‥とかいう言葉も使いたい)も必要である。
よく遊び、よく学んでいきたいものだ。

さて、現在大学四年生の僕だが、ぼくたちの学年は、一年の春とともにコロナウイルスが大流行した、いわば「フルコロナ世代」である。
基本的に今まで「当たり前」のように実施されていた大小様々なイベントたちは一度は全てオンラインになったり、知らないうちに姿を消したりした。
一年の春、或いは浪人期に顔も素性も知らない先輩方が嬉々として語る「大学生活はいかに面白いか」の源泉となるそれらを、3年までほぼ、何もかも経験できなかった世代である。

よって、大体のイベントは「僕たちが初めてやりました」みたいな様相を呈するわけである。
だって前例がないから。教えてくれる人も、その経験も、何もないから。

経験したことのない「もともとあったもの」など、運営する側にとっては「もともとなかったもの」とほぼ同義だ。

───
昔から、自分が興したなにかを、誰かが受け継いでくれることがたまらなく嬉しかった。


初めて、ひとりで書道パフォーマンスをしてみた一年後の文化祭で、後輩たちが墨まみれになりながら書道パフォーマンスの練習をしてくれたこと。

幼稚園から、嫌々続けていた柔道。幼少中高の「高」から急に勝つ楽しみを理解し、周りも見ずに必死で走っていた僕の引退後、後輩たちは当時の僕と同じ目標を掲げ、叶えていたこと。

生徒会でも、はっきり言って勝手ばかりでやりたい放題だった僕の後を継いだ彼らは、いろんな形でそれらを大きくしてくれたこと。

大学に入ってから、交流会に研修会、そして歓迎会など色んなことを初めてやったりした。たぶん、これらも受け継いでくれること。

嬉しかった。

品のない言い方をすると「ぺーぺー」(当然僕も含めそうであった)だった彼ら彼女らが、自分以上に、目に見えて大きな成果を出し──これ、おれがはじめたんだぜ!すごいだろ!みたいなことを思わないわけではないが、それ以上に──大きく成長している姿を見ることは僕の誇りであった。

ただ、少しだけ。

いつまで経っても親にとって、子どもは子どものまま、という。


僕は残念ながら親ではないし、まだまだ未熟だ。だからそう大それた話ではない。だけれど、先輩にとって、後輩は後輩だから。

そんな訳はないんだ。そんな訳はないと、もちろんわかってはいるのだけれど──初めて会った時と、お前はやっぱり何も変わっちゃいないなと、そう思いたいもの。
記憶を、塗り替えられたくないのだ。

───
今回のイベントだってそうで。
一年前僕が立っていたところには、彼らがまだ、受験戦争の話をしていたくらいの頃から知っている愛すべき後輩たちが立っていて。
そして、冷や汗を流しながら場を回していたはずの僕は、偉そうに一番前の席で座って腕組みなんかしながら笑わせてもらっていて。

大前提として、イベントなんてものは回数を追うごとに、そのスパンが年一ならば、何年も何年もかけて磨き上げられるもので。引き継がれた方がいい。

でも、もし、このイベントが引き継がれなかったら。彼ら彼女らが、これを受け継いでくれなかったら、このイベントは「僕たちのイベント」として記憶と記録を塗り替えられることなんてなかった、わけだから。
後輩たちだって、遅かれ早かれ気づくのだけれど、少なくとも今日は同じままだと、僕の中では思えていた、ような気がするから。

当然、そうであるよりも「引き継がれた方」がいい。来年、再来年と更にどんどん良くなっていく方がいいのだけれど。

すこしだけ、寂しく思う。
上書きする君たちの色が鮮やかであればあるほど、当初の色は忘れ去られるものだから。


でも、そんなこと本当はどうでもいい。

そんなこと、どうでもいいと思えるほどに君たちの色は鮮烈で、新しくて、面白い。
柄にもなく鳥肌を立ててしまうくらいに。

どうか新しいものをたくさん作って。
そして、引き継いだものを更に磨いて。記憶も記録も塗り替えて、自分たちのものにしちゃって。

きっとその方が、素敵なものが生まれるはずだから。

考え方の一つとして、各イベントごとに、上書き保存みたいな話だけれど。
もし名前をつけて保存して、フォルダにしまってくれるなら、それもそれでいいし。

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