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歴史からひも解く香港問題

香港と中国の問題は、今や2国間の問題であるにとどまらず世界各国の様々な利害が絡み合う複雑な問題と化している。このnoteでは、ざっくりと歴史を振り返り、2019年の逃亡犯条例改正案に関するデモに言及しつつ、2020年の国家安全法制に関する衝突に関して見ていきたい。

清代から振り返る中国

清(最後の皇帝:溥儀)の最後の時代、国共合作が叫ばれ、国民党・共産党が協同して対外戦に備え、戦勝国になった中国。しかし、その後国内においては、『国民党vs共産党』の構図が再び見られた。

国内の2項対立に敗れて日本がいなくなった台湾に逃げ、中華民国を建国したのが国民党、一方で、争いの勝利しソ連のサポートの元、本土で共産党国家(中華人民共和国)建国に尽力してきたのが共産党だ。

では具体的に両者の歴史の流れを見ていこう。

中国近現代史

まずは、中華人民共和国。始まりは偉大なる理想家、毛沢東だ。彼は、社会主義の価値観の元、農業の生産性を大きく下げてしまったことに対して、製鉄で逆転を図った大躍進政策の実行したり、百花斉放を叫んだものの撤回したり、文化大革命を起こして紅衛兵を使って派手に暴れたものの最終的には地方に逃がしたりと派手に理想を掲げるリーダーであった。ただし、実務の面では失敗がほとんどだと考えても差し支えないかと思う。

大躍進政策...毛沢東の指導の下、1958年から1961年までの間、中国が施行した農業と工業の大増産政策である。
百花斉放...1956年から1957年に中国で行われた政治運動。中国共産党に対する批判を含むあらゆる主張を歓迎するという内容であり、これを受けて国民は様々な意見を発表したものの、方針は間もなく撤回され、結局この運動に釣られて共産党を批判した者はその後の反右派闘争で激しく弾圧された。
文化大革命...中華人民共和国で1966年から1976年まで続き、1977年に終結宣言がなされた、毛沢東主導による文化運動である。
紅衛兵...文化大革命時期に毛沢東によって動員された全国的な暴徒と化した学生軍。紅衛兵の暴走は毛沢東にすら制御不能となり、都市の紅衛兵を地方農村に送りこむことで収拾を図った。

一方で、圧倒的な現実主義者の鄧小平が実質のトップに立った。『白いネコでも黒いネコでもネズミを取ってくるのがいいネコだ。』と述べるなどその結果主義な姿勢がうかがえる。具体的には改革開放を行って社会主義市場経済を導入した功績は大きいだろう。最高実力者と言われ、軍の実権も握っているため天安門事件では多くの市民を死傷させることとなった。

改革開放...文化大革命後の経済を立て直すため、経済特別区の設置、人民公社の解体、海外資本の積極的な導入などが行われ、市場経済への移行が推進された。
天安門事件...1989年、北京の天安門広場に民主化を求めて集結していたデモ隊に対し(鄧小平主導)軍隊が武力行使し、多数の死者を出した事件である。

現代の中国と台湾

中国共産党中央委員会総書記、習近平は一帯一路構想を掲げ、中東を経てのヨーロッパまでの陸路、及びインドを回ってアフリカまでの海路を牛耳ろうと目論んでいる。国内においては、サイバーポリスによる厳しい言論統制など、一党独裁を強固に貫いている。

一方台湾はというと、蒋介石に始まり、李登輝が国民党と民進党による二大政党制を整備し、民主化推進を進めてきた。現総統は蔡英文であり、女性の民進党総統だ。いわゆる『ひとつの中国』に反対する立場にある。ただし、経済的に中国に大きく依存しているというジレンマを抱え、絶妙に複雑な国際関係のもと成り立っている国家と言えよう。

対して中国は台湾の独立を防ぐための南沙諸島埋立地の軍事基地整備を進め、これは1979年台湾関係法に基づき、グアムから援軍を送るであろうアメリカに対応する対抗策である。

中国は国内においても複雑な体制を取っている。例えばトルコ系イスラム教徒が住む新疆ウイグル自治区においては、自治は認めつつもNo.2は共産党員が入ることで支配をしていた。ただし、1900年代なかば以降様々な反乱や騒動が起こるなど民族の違いは大きな問題として現存している。また、チベット仏教が強いチベット自治区でもダライ・ラマにパンチェン・ラマ、そしてその輪廻転生の考え方などを軸に大きく揺れ動く問題を抱えている。

中国と香港の歴史

ここでようやく香港について見ていきたいと思う。まずは大まかな時系列を確認しよう。

1840年
アヘン戦争(インドからアヘンを送り込んだ三角貿易から戦争に発展、イギリスに香港を割譲する羽目になる)

1997年
香港返還
・香港基本法(選挙委員のみの直接選挙)
一国二制度(自由な企業活動・言論の自由・司法の独立)
など複雑な統治体制を確立。

2014年
雨傘運動(2017年の直接選挙に共産党の息がかかっていることに反発)
※2017年直接選挙については、投票権は普通選挙型だが、指名委員会が立候補権利保持者を指名するという実質的に共産党の支配下におかれた。

2019年
逃亡犯条例改正案に関するデモ

2020年
・民主派予備選挙
・国家安全法に関するデモ

香港『逃亡犯条例改正案』デモ

香港は前章で述べたように「見せかけの民主主義」でしかない。指名委員会が立候補権利保持者を指名する体制であるため、共産党ゴリ押しの候補者に投票するしかないのだ。つまりデモという形でしか意思表明できない構造上の問題を抱えている。結果を記載しておくと、デモにより改正案に関しては一旦取り下げられた。

『逃亡犯条例改正案』とはどういった問題なのか。

逃亡犯罪人引渡法改正案...香港が犯罪人引き渡し協定を締結していない国・地域の要請に基づいて、容疑者引き渡しを可能とするもの。香港政府が4月に立法会(議会)に提出した。現在、香港は米国など20カ国と犯罪人引き渡し協定を結んでいるが、中国本土やマカオ、台湾との間にはない。香港紙、星島日報(電子版)によると中国は55カ国と犯罪人引き渡し条約を調印していて、中国の特別行政区である香港とは結んでいない。

果たしてなぜ条例改正の動きが出たのか。2018年2月、香港人の男が台湾で恋人を殺害し、逮捕される前に香港に戻るという事件が起きた。香港政府は、犯罪人引き渡し協定がない台湾への身柄移送ができないことを理由に、このような事態を解消するため条例改正が必要だと主張している。

ではなぜ反対運動が起きているのか。香港は1997年の中国返還後も「一国二制度」で高度な自治が50年間認められているのに、条例改正により同制度が事実上崩壊すると反対派は懸念している。香港政府は引き渡し対象となる犯罪を限定するなどしているものの、実質的に香港市民も中国当局の取り締まり対象になる恐れがあるためだ。香港の根幹をなす「一国二制度」が揺らぐことで、世界の経済・金融センターとしての地位低下も心配されている。

香港民主派予備選挙

2020年9月の立法会選挙に向けて、香港市民民主派が親中派と決戦する。この予備選挙は香港政府が認めない(国家安全法違反だとしている。)非公式選挙だったが、予想を大きく超える61万人が参加した。立法会選挙は親中派VS民主派の構図で、今までは親中派が圧倒していた。しかし、今回は過半数を勝ち取る小さな可能性があり、予備選を実施することで、民主派内で無駄な争いをしてしまうことを避けることが目的である。

【香港民主派運動の歴史】
・2003年に国家安全法の導入を北京政府(中国共産党)が叫び始めた
・香港市民50万人の大規模デモ実行で、一時中国は撤回
・以来民主化運動は常に続いてきた。
・しかし、2020年ついに国安法が成立してしまう。(コロナパンデミックの隙を突いたと言えそうだ。)
・民主派の予備選という対応策(まだギブアップしてないぞ!というメッセージ)...予想を大きく超える61万人...香港の有権者の13%が非公式の予備選に参加したといえる。

香港『香港国家安全維持法』デモ

香港国家安全維持法の施行を目論む中国に対しては国際社会からもアメリカを中心に強い反発を受けている。当該法律の施行は香港内でのデモや反発行為を法的に禁止してしまう内容で、一国二制度という形でイギリスから返還されたはずであった台湾の民主的な国家体制の事実上の崩壊を意味しかねない内容だ。G7も香港基本法に基づく中国の国際公約に合致しないと指摘するなど強く抗議している。この問題については各国があらゆる対抗措置を取っており、簡単に見ていこうと思う。

まずはイギリス、ジョンソン首相。香港市民にイギリスの市民権を付与することを表明した。ただし、これに対して、中国は「内政干渉」だと反発している。

市民権について
市民権...その国に無期限で滞在できる権利の1つ。基本的には、滞在権利はいろいろな形のビザという形で付与される。(就学・就労・配偶者ビザなど)基本的には滞在可能日数が定められているが、その最大級が、永住権である。一方、市民権は更に高い権利性を有しており、選挙権などの公的な権利を与えられ、公的な職業につけると同時に市民としての義務も生じる。ほぼ国籍と同義。例えば日本なら二重国籍を認めていないのでアメリカなどの市民権を有した時点で日本国籍はなくなる。

・BNO(British National Overseas/英国海外市民)
...香港がイギリスの植民地だった時にイギリスが香港人に発行したパス。VISA無しで最長6ヶ月滞在できる。今回の問題は、この期間を延長するなどといった意思表明であり、中国の香港統制に対応している。
内政不干渉の原則...国連憲章第2条7項「この憲章のいかなる規定も、本質上いずれかの国の国内管轄権内にある事項に干渉する権限を国際連合に与えるものではなく、また、その事項をこの憲章に基く解決に付託することを加盟国に要求するものでもない。但し、この原別は、第七章に基く強制措置の適用を妨げるものではない。」に起因する原則。

その他国家の対応については、ロシア、プーチンについては、そもそも中国 に対して香港国家安全維持法の成立を支持している。指示したとまで言われることもあるが実際のところはわからない。また、台湾は、香港からの移民受け入れを表明した。

まとめ

僕は[なんかよくわかんないけデモってこわいなあ、、]って思っていました。今も確かによくわかんないことのほうが多いです。何なら理解の間違いもあったかもしれません。ただし調べる前の僕と違って香港の話が、中国の一帯一路構想が、そしてそれに対する各国の絡み合う利害が、[なんかようわからんけど]で終わらせていい話ではないと今は明確に理解しています。一帯一路に日本は無関係なのか?こんなに隣国なのに?グローバルプレゼンスを落とし続ける日本の未来は?日本人として考えていかねばならない問題が無数に存在している。とは言うものの少しの知識も持ち合わせていないと自分の意見すら持てない愚民に他ならないのです。これからも日本について、そして国際社会について調べて行きたい、そう強く思いました。

長々と駄文を垂れ流してすみません。ここまで読んでいただいてありがとうございました。

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