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「テーマ型株式投信」について考えてみました

「テーマ型株式投信」

投資信託協会が7月13日発表した投資信託概況によるとETF(上場投資信託)を除いた6月の公募株式投信は1522億円の売り越しとなり、今年度に入って初めて解約・償還が上回ったと日経新聞朝刊が報じています。売り越しが増えている背景として、株価の戻りが一巡したとみた個人投資家の売りが膨らんだことを挙げていますが、世界的な株価の回復(日経平均株価は3月の安値から6月末までに35%上昇)するなかで、ロボット・バイオ関連といったテーマ型株式投信の解約のが増えていることも一因となっています。

そこで、今回のメモでは「テーマ型株式投信」について考えてみました。テーマ型株式投信の対象投資先はロボット、AI、5G、EV(電気自動車)に加えて創薬・バイオテクノロジー開発のバイオ関連など多岐にわたっています。運用会社・販売会社からすると、設定しやすい・売りやすいことから純資産残高の積み上げに繋がりやすく、我が国公募株式投信市場の特徴の一つとなっています。

一方で、

①投資対象が投資テーマに限定されることから組入れ候補銘柄(ユニバース)が狭められてしまう、

②設定・販売がしやすいということは、組み入れ対象銘柄の株価には期待値がすでに織り込まれており株価が割安でなくなっている可能性がある、

③安定的に超過リターンを目指す長期投資

には馴染みにくい、などの短所が指摘されています。

筆者が英国の名門アセットマネージメント会社のFM(ファンドマネージャー)から聞いた話では、バイオ・エネルギー関連企業を投資対象から除外しているとのことです。

エネルギー関連企業を除いているのは、株価が地政学的リスクにさらされがちな原油価格動向の影響を強く受けるため、企業価値の分析・予想が立てにくいことが主因です。また、バイオ関連、特に画期的な新薬開発企業の株価は開発段階の進捗・成果などに大きく左右され、発売までこぎつけることができるかを含め対象企業の企業価値を判定すのは至難の業になります。ノーベル賞級の研究者を揃えても評価がなかなか難しい分野に投資することもあり、画期的な新薬に対する期待が高まれば高まるほど開発中止になった場合の株価への反動も懸念されるため、リスク回避の目的で投資対象から外す行動をとる訳です。

バイオ関連企業では、先頃患者数が大きく増えているアルツハイマー型痴呆症治療薬開発に対する期待が高まったことからエーザイの株価が大きく上昇しました。また、現在はCovid-19(新型コロナウイルス感染症)に対する治療薬・ワクチンを開発中の関連企業群が株式市場では注目を集めています。ところで、日本の株価バブル崩壊時をご記憶の方もいると思います。当時、抗がん剤の大相場が発生し関連企業の株価は大きく上がりましたが、数年たち期待値が低下してくると総じて大きく下落していくことになりました。

テーマ型株式投信のすべてに否定的な見方をする訳ではありません。伝えたかったことは総じてリスクが高く長期運用には不向きという1点に尽きます。個人的には、

①社会的なニーズが高まっているSDGs(持続可能な開発目標)の範疇でリターンを重視するタイプの投資であるインパクト投資に関わる企業群、

②女性の社会進出を応援する関連企業

に投資するテーマ型株式投信は有りかなと考えています。

Malon, 07. 15. 2020

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