君の物語 21 世話のかかる奴
憂鬱に追われながら台所に立つ夕暮れ。
思わず背後のソファにすがりたくなる。運が良ければ、くつろぎながら外を眺めているルゥがいるから。
近づいて跪き、手を添えて伺いを立てる。ちらっと私を一べつしてそのままでいてくれたら「いいよ」の合図。
…たぶん。
香ばしい肉球を嗅いでから、温かく柔らかい横腹に頬を寄せる。滑らかで美しい毛並みに掌を埋め、じっと温もりを感じさせてもらう。
普段は触らせてくれないくせに、こんな時は私の方から離れるまで黙って動かずにいてくれる。
君はどうしてこんなに優しいのか
長い時間こうしているのはルゥに負担がかかるし、私もやらなければならないことがある。
ぐぐっと自分に気合を入れて立ち上がる。
「ありがとう。」
すかさず毛繕いを開始する。
申し訳ないけど、これは手伝えない。
「毛を乱しちゃってすみません。」
私には目もくれず、スチャッ、スチャッと毛繕いする。
〈 しょうがないな 〉
と、聞こえてきそうだ。
ルゥには時々、こんなふうにお世話になっていた。
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