くまモン電車 熊本電鉄
熊本電気鉄道はJR鹿児島本線の上熊本駅から合志市の御代志駅の菊池線と、北熊本駅から分岐して熊本市中心方面の藤崎宮駅の藤崎線の2つの路線計12.9km、16駅。運行上は藤崎宮駅~御代志駅間が本線扱いで藤崎宮駅を熊本中心側のターミナルとして、北熊本駅~上熊本駅間は支線の上熊本線になっていて、上熊本駅から御代志駅へ行くには北熊本駅で乗り換えが必要。鉄道と合わせて路線バスも運行していて合志市、菊池市、熊本市北区(旧植木町)などの熊本市北部エリアの交通を担っている。
菊池線の名前に名残があるように、元々は熊本と北部の菊池(当時の中心部は隈府町)を結ぼうとして菊池軌道線として1913年に、池田駅(現 上熊本駅)と隈府駅(のちの菊池駅)の間で開業。名前の通り軌道線=路面電車で今のルートとは異なって、熊本城の北側を通って現 藤崎宮駅から北上するルートをとっていた。その後、電化して菊池電気軌道となり、戦後に熊本電気鉄道に名前を変え、1950年に今の上熊本駅と北熊本駅の区間を開業。路面電車部分だった上熊本駅と藤崎宮駅の区間を熊本市電に譲渡して分離(すでに廃線化)した。モータリゼーションの波には抗えず、1986年に菊池駅と御代志駅の区間を廃止してしまった。
熊本電気鉄道の本業の鉄道事業は2023年3月期で約3.9億円の売上に対して約4.7億円の費用が発生していて約8000万円の赤字。バス事業の売上は2倍以上9.1億円あるもののの約4000万円の赤字。一方で不動産事業が全事業の赤字をすべて埋めるだけの利益を出していて体裁を保っている形。
面白いのがくまモンが中華圏でかなりの人気を博しているのを利用し、くまモン電車乗車体験をツアーに組み込んで売り出している点。ツアー客は上熊本駅から乗車させて、ツアーバスだけ北熊本駅へ移動、北熊本駅にはお土産屋も設置して台湾人団体ツアー客が押し寄せる。私が乗ったタイミングでも3団体が利用していて、北熊本駅は台湾人で満員状態。後でHPみて知ったけど熊本電鉄は台湾に事務所も設置していて力を入れていることがはっきりわかる。ちなみに団体客に話しかけてみたところ、団体内でも温度差があるようで興奮してくまモン電車を写真撮りまくっている人がいる一方で、冷めて座っている人もいて反応が面白い。
鉄道事業の大きな課題として熊本市中心部まで直接到達していないことがある。一方のバス路線は中心の桜町バスターミナルや熊本駅へ直通しているけれど、朝夕のラッシュは九州最悪と言われる交通渋滞に巻き込まれ定時性は期待できず。一部区間は自社の鉄道とバスが競合していて効率が非常に悪い。しかもターミナルの藤崎宮駅は一応中心部の通町筋まで1kmと微妙な距離感ではあるものの、道路的な立地が悪くバスに乗るには少し歩かないといけないため、中心部へのバス接続が貧弱というのを感じた。上熊本駅を本線扱いにするにも、中心部に対しては広大な熊本城を挟んでいるので市電が遠回りになる。なんとも中途半端と言わざるを得ない。北部エリアの住人にとっては日常に密接した交通機関である一方で、観光利用などはしにくいという致命的な弱点に思える。
その弱点を補うためにLRT化構想というのもある。藤崎宮駅から国道3号を経由して、中心部の市電水道町に路面電車として乗り入れるという計画。しかし事業費用は100億円超と、経常売上20億円の企業に出せる金額ではないというのが現実。実現したら面白いと思うけれども。
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