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感想を聞きたくなる本▶youco

カツセマサヒコさんの『明け方の若者たち』を読みました。

MY積読棚に入れるより早く、我が家の若者が食いつき、一日で読了していました。私も読み始めたらあっという間、一日で読了です。

ちなみにこのカツセマサヒコさん、大手一般企業から小規模の編集プロに転職し(今は独立)、「タイムラインの王子さま」と呼ばれるほど若者の中では著名な方だそうで。
…といったプロフィールはネットで拾ったものなのですが、この『明け方の若者たち』は、そんな彼の大学時代と就職してからの数年間を彷彿とさせるお話です。


本を開くとまずこの目次。

各章のタイトルがおしゃれです。思わず「これ、短編集なの?」と聞いてしまいました。文字数や単語に縛りのない所もおしゃれ。若者文化をもっと知っていれば、(これはアレのオマージュだな)といった裏を知る楽しみみたいなものも得ることができたのに…。そういった裏が本当にあるのかどうかすらわからない自分が口惜しい。

物語は、主人公の“僕”が、参加条件に「第一志望の企業から四月中に内定を得ていること」を掲げる『勝ち組飲み』に参加している場面から始まります。そこで彼は衝撃的な恋に落ちるのです。その恋がどう深まり、どう終わり、どういった爪痕を残すのか、といったことが主題です。
また、大手企業に就職できるだけの実力や運の良さを持ち得た人生を歩んできた“僕”やその周辺の若者が、社会人編になってからはどうやら下降の一途をたどっているようだ、と自覚しつつもがくあたりも丁寧に描かれ、心を締め付けるものがあります。

全体を通して感じたのは、心に刺さる場面・表現が非常に多いということです。全体的な筋よりも、一つ一つの場面が印象に残る書き方というのは、日常を視覚的に切り取ることに慣れた世代ならではかもしれません。

日常を切り取る感覚は文章においても秀逸です。
彼女からのLINEが来ないことを表現する際の「スクロールしないと見えない位置にまで、下がってきていた」だとか、仕事ができない自分を表現する際の「なんでコレ、やらなきゃいけないんですか?といつも納得感ばかり求める僕」だとか、恋が終わった後の「当時の自分を思い出さないために必要」な「あの人から教えてもらわなかったアーティストだけで作ったプレイリスト」といった文章は、個人的に刺さりました。
”僕”が彼女にハマっていく過程で、彼女のすべてが好きすぎて、細かいディテールの一つ一つを列挙し、まるで自分のためのオーダーメイドだと言えてしまう情景にいたっては、尊ささえ感じてしまいます。

どんな本を読んでもある程度感じることですが、この本に関しては特に、「どの部分がよかった?」「どこが刺さった?」と聞きたい気持ちが膨れ上がっています。(前述の、我が家の若者は答えてくれませんでしたが。)

こういった気持ちを昇華するために読書会ってあるのかな、なんて…こじつけに聞こえるかもしれませんが、改めて思った次第です。
次の横浜読書会では、この本を読んだことがある方に出会えますように。

皆さまの参加を心よりお待ちしております。
横浜読書会KURIBOOKSー好奇心を解き放とう
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【投稿者】youco

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