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接客から考えるホスピタリティのコツとその源泉について

同じ言葉でも説得力のある伝え方と、そうでない伝え方がある。


例えば、時計を買いに来たお客様が、「薄くて軽い時計が欲しい」と言った時に「この時計は厚さ7ミリ、重さ30グラムです」と答える場合と「薄さ7ミリ、わずか30グラムの軽さです」では相手が受ける印象は大きく異なる。

説得力のある説明、つまり相手がすんなり受け入れる説明は、相手が欲しい内容を強調した話し方で、「購入したいと思ってもらえるようにアプローチすること」がコツだ。

他にも相手の話をそのまま繰り返したり、要点を繰り返す「オウム返し」という手法もある。

同じフレーズや共感が返ってくることで相手の承認欲求を満たし、「話を聞いてくれている」「理解してくれる」安心感を持たせ、顧客の信頼感を高める。

一流ホテルで知られているホテルオークラでは、従業員にオウム返しを徹底教育しているそうだ。
以下に例を記す。

客「すみませんけど、水くれますか?」
従業員「はい、お水でございますね。かしこまりました」

客「すみませんけど、お冷ください」
従業員「はい、お冷でございますね。かしこまりました」

客「これ、お持ち帰りにしたいのですが」
従業員「はい、お持ち帰りでございますね。かしこまりました」

客「これ、テイクアウトにしたいのですが」
従業員「はい、テイクアウトでございますね。かしこまりました」

顧客が「水」といえば「お水」と返し、「持ち帰り」と言えば「お持ち帰り」と言う。このような細かな部分にもお客さまを不快にさせない気遣いの差が、一流との違いになる。

接客はマニュアル化でいくらでもレベルが高められると思われているが、実は後天的なトレーニングより、先天的な才能の要素が大きい。

相手を不快にしないためにはもって生まれた表情、性格、物腰なんかが大きく左右するし、相手に喜んでもらうためには相手の感情を読み取るセンスと求めていることを瞬時に判断し行動に移すことを厭わない力が必要だ。

マニュアルやトレーニングで上げられる接客レベルは最低限のもので真のホスピタリティに至るためには「人のために」というマインドが必要だ。

接客業に従事する人は「仕事の時だけ利他的で普段は利己的」の人より、仕事もプライベートも関係なく利他的な人のほうが向いている。

この先天的な素質に近づけるために必要なことはマニュアル教育ではなく、日々の心がけだ。
まずは、自分がされて嫌なことを相手にしない、自分がされて嬉しいことを相手にするということから始め、相手の潜在欲求を無意識のうちに気付く訓練を常日頃から行い、意識的に行っていたことを無意識にできるようになると人のホスピタリティマインドは大きくレベルアップすることができる。

この考え方は聖徳太子が制定した17条憲法「和をもって尊しとなす」の教えにを脈々と引き継いできた日本人が得意としている分野の一つだ。

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