究極のエコシティの作り方は宇宙移民に学べ
物語の設定
宇宙人が未開の星に移住するという設定で、架空の星に経済と環境の両立を実現する理想社会をつくってみました。
その星に住む移住者たちは、環境問題だけでなく、いま我々が有効な解決策が見つからず困っている様々な課題の克服も試みています。
ここでは、移住者たちがどのようにして難題を解決したのかを続き物で紹介していきます。
ガイド役は、理想社会の創造に携わった移住者が務めます。
では、お楽しみ下さい。
前回の話
前回は宇宙移民が考えたアイデア活用の成功術を紹介しました。
その記事はこちらです。
最初の記事はこちら。
次の記事はこちら。
目次はこちら。
理想社会の設計方法について
今回の話
今回のテーマは、持続可能な世界を実現する都市のイノベーションです。
SDGsにおいても、「住み続けられるまちづくりを」と題し、地球上の誰もが安全に暮らせる災害に強い街づくりが目標にあげられています。
この背景には、地球温暖化による異常気象で大規模な災害が多発し、路頭に迷う被災者が増えていることがあります。
我が国も、毎年のように甚大な自然災害に見舞われており、もはや他人事ではありません。
しかし、単純に防災力を高める公共事業や家づくりを行えば、持続可能な世界に近づけるというものではないでしょう。
環境破壊とエネルギーの浪費を拡大してしまう従来からのまちづくりの手法が、異常気象の発生源のひとつになっていると考えられるからです。
住み続けられるまちづくりを実現するには、防災力の向上と併せて、環境負荷を大幅に低減する都市のイノベーションが必要になるのは間違いありません。
そのひとつの方法として、宇宙移民が行ったエコシティの成功術を紹介します。
エコシティとは
私たちの星のエコシティの話をするまえに、故郷の星の話から始めたいと思います。
まず、故郷の星が考えるエコシティとは、環境に配慮した都市のことです。
人が多く集まる都市は、都市活動にエネルギーと資源を大量消費し、陸に海に大気に公害を広め、おびただしい量の廃棄物を出すことで、環境に非常に大きなダメージを与えます。
なので、人間が環境と共生していかれるようにするには、環境負荷の低い都市にするための取り組みを行わなければならないのです。
故郷の星がエコシティの重要性に気がついたのは、温暖化が進み、異常気象による様々な被害に見舞われるようになったからでした。
故郷の星がたてたエコシティ実現戦略
住み続けられるまちづくりをするために、故郷の星は2つの方策を提案しました。
ひとつは、環境負荷の低い、つまり低炭素・省資源・省エネに優れた都市にすることで、環境問題を緩和する方策。
もうひとつは、異常気象による豪雨や洪水、渇水に適応できる都市にする方策です。
これを病気に対する治療におきかえて説明すれば、病気の原因を取り除こうとする「根治療法」と、表面化している症状を軽減する「対症療法」を並行して行う戦略をたてたのでした。
このやり方は間違っていなかったと思います。
私たちもエコシティをつくるのにこの手法を使わせてもらい、おかげで成功できました。
しかし故郷の星は、うまくいきませんでした。
何がいけなかったのでしょう?
環境負荷を低減するだけでは、都市は持続可能にならない
都市の持続可能性を高めるには、環境負荷を低減することの他に、もうひとつ必要なことがあります。
それは、地域の財政力強化を助けられる都市にすることです。
都市の持続可能性を高めるのに、地域の財政力強化が必要な理由は2つあります。
ひとつは、財政力がないとエコシティの建設と維持に必要な財源を得られなくなるという理由。
もうひとつは、お金がないと住み続けられるまちづくりを可能にするイノベーションが生まれにくくなるという理由です。
しかし、経済と環境は相反関係にあるので、この両立に成功した都市をつくるのは容易なことではありません。
その難易度の高い課題を克服するために私たちが出した解決策は、「究極のエコシティ」をつくるということです。
私たちが求める究極のエコシティは、無駄の削減と効率性が極められた秩序あるつくりの都市です。
こうした都市になれば、環境負荷を大幅に低減できます。
なぜなら、
・無駄の削減が極められる→資源の消費量が大幅に減る
・効率性が極められる→エネルギーの消費量が大幅に減る
ことになるからです。
これと同時に、財政力強化を助けられる都市に変えることもできます。
無駄のない効率性に優れた秩序あるつくりの都市になれば、自然に生産性の向上も図られるからです。
また、究極のエコシティと環境イノベーションでエネルギー消費量を大幅に減らすことができれば、再生可能エネルギーで足りるようになり、脱炭素社会も実現します。
究極のエコシティの建設を目指さず、単純に脱成長で自然との共生を図ろうとすると、持続可能な社会の実現に失敗します。
その理由は、単純に脱成長をすると税収が激減してしまい、社会を維持する財源を確保できなくなってしまうからです。
その結果、自然災害から人命を守れなくなってしまえば、住み続けられるまちづくりに失敗したことになります。
環境負荷を減らすために経済の膨張を抑制するには、単純に脱成長を目指すのではなく、上手に経済をスリム化する方法を考える道を選ぶのが正解です。
その方法のひとつになるのが、究極のエコシティなのです。
理想のエコシティ
究極のエコシティをつくるのに最適な都市なる素材として私たちが選んだのは、コンパクトシティでした。
コンパクトシティを一言でいえば、集約型の都市です。
つまり、都市を郊外に拡散するのではなく、一定の範囲内に集約することでコンパクト化を図った都市のことをいいます。
コンパクトシティにすると、以下のようなメリットが生じます。
①環境破壊を低減できる
②省エネが向上する
③利便性が向上する
④生産性が向上する
⑤経済が活性化する
⑥コストを低減できる
⑦先進技術を広めやすくなる
⑧行政サービスが充実する
⑨安全性が高まる
⑩公平性が高まる
⑪都市の持続力が向上する
①〜⑪のメリットが生じる理由を簡単に説明します。
①環境破壊を低減できる理由
都市を小規模化することで自然破壊の規模も小さくできるからです。
森林破壊を最小化できれば、二酸化炭素の吸収能力が向上し、温暖化になりにくい環境もつくれます。
②省エネが向上する理由
都市がコンパクトになると移動距離が短くなるので、エネルギーの消費量が減ります。
走行距離が少なくなれば、温暖化を進める排気ガスの排出量も低減できます。
化石燃料の消費量も減少するので、資源枯渇のリスクも減らせます。
③利便性が向上する理由
都市がコンパクトになると、職場や教育施設、商業施設、医療施設などが近くなるので、利便性が向上します。
公共交通機関も充実しやすくなるので、移動の負担も軽減できます。
④生産性が向上する理由
移動距離が短くなり、利便性が向上することで、生産性も向上します。
都市に人が集まれば、職業の種類を増やせます。集約化した場所に様々な産業を集めることで生産性を高めることもできます。
⑤経済が活性化する理由
商業施設が近くなり、効率的に買い物ができるようになれば、消費が活発になります。
利便性が向上することで高齢者も買い物がしやすくなりますし、コンパクトシティで人口密度を高めることもできるので、買い物客も増やせます。
⑥コストを低減できる理由
都市がコンパクトになれば、都市の建設にかかる費用や維持費などを低減できます。
これにより、税金を安くすることも可能になります。
⑦先進技術を広めやすくなる理由
都市のコンパクト化で、スマートグリッドなどITを駆使してエネルギー効率を高める先進技術を一斉導入しやすくなります。
⑧行政サービスが充実する理由
都市のコンパクト化で、サービスを行き渡らせるための費用を少なくでき、行政サービスの効率もアップします。
インフラも整備しやすくなります。
⑨安全性が高まる理由
都市が小さくまとまると、安全性の高い場所に都市をつくりやすくなりますし、安全性を高める公共事業の充実もしやすくなります。
その結果、損害の程度も小さくできるので、復興が短期間でできるようになり、財政にあたえるダメージも減らせます。
⑩公平性が高まる理由
すべての都市がコンパクトになると都市の格差が改善され、どの場所に住んでも利便性が大きくかわらなくなり、安全に暮らせるようにもなるので、不公平感が薄まります。
⑪都市の持続力が向上する理由
都市がコンパクトになれば、住民が集中することで収入が増え、行政コストの効率化で一人あたりの歳出も低下します。
都市が集約するので、道路や下水道など社会インフラの維持管理や更新も楽になります。
都市コストが低くなり生産性があがることで、費用対効果も高まります。
その結果、自治体の財政状況が良好になります。
都市のコンパクト化で環境破壊を最小限に抑えることことができ、環境性能を高める新技術の導入もしやすくなることで環境負荷を低めることもできれば、経済成長ができる余地も得られます。
こうして財政・環境・経済を豊かにできるので、無理なく都市を持続することが可能になるわけです。
理想に遠い故郷の星
しかし故郷の星の都市のほとんどは、エコシティとは正反対といえるようなものでした。
それでは、持続可能な世界を実現できるはずはありません。
また、エコシティとは真逆のような都市をエコシティにつくりかえるのも困難です。
スクラップ・アンド・ビルドには、時間もお金もかかりますし、住民の理解を得るのも大変だからです。
いずれにしても、故郷の星がエコシティの重要性に気がついた時には、すでに甚大な自然災害が多発する切迫した事態になっていたので、この大事業を始めるには遅すぎました。
★★★
故郷の星の平均的な都市の姿は次のようなものでした。
■コンパクトでない。
郊外に虫食い状に宅地が点在する無秩序な開発が際限なく行われていました。
さらに山の奥であろうと、少しでも利用できそうな場所があれば民家や農地をつくる歴史が続いてきたので、道路や防災などの公共事業にかかる費用が膨大になり、行政サービスを行き渡らせることも難しくなってしまい、都市機能の低下を招いていました。
■ムダが多い
人口の多いエリアには、近い範囲に競合店が過剰にあり、客を奪い合っていました。
過当競争で撤退する店も多く、都市の利便性が安定していませんでした。
土地の使い方も無駄が多く、空き家や空き店舗、耕作放棄地、廃校になった校舎などが至るところにありました。
■効率的でない
郊外化が進んだせいで、マイカーなしには生活ができない環境になっていました。
一方、道幅が狭く、駐車場が少ない旧市街地は車社会に対応できず、郊外の大型商業施設に客を奪われ、活力が低下してしまいました。
マイカーの普及で公共交通機関が衰退してしまったせいで、車をもたない高齢者などには不便な都市になっていました。
■住環境が悪い
無計画な都市開発により住宅地のなかに様々な産業が混在し、ひっきりなしにトラックが行き交ったり、工場からの排煙や悪臭、騒音などがあったりして、安全快適な住環境にあるとはいえませんでした。
■公平でない
故郷の星の都市のいちばんの問題は、首都と地方の格差が大きすぎる点でした。
首都一極集中により地方都市との圧倒的格差が生じたため、地方から首都に流入する人口の増加が止まりませんでした。
これにより地方は人口減少に歯止めがかからず、限界集落になる地域も増え、税収不足で都市機能を維持できない自治体が続出する事態になりました。
財源不足では、エコシティの建設に使う予算をつくれるわけがありません。
また、不活性になる地域が増加することは、全体の活性化も損なう羽目になってしまいます。
一方、首都は都市が巨大化しすぎて、集約的であってもエコシティとはいえなくなり、ヒートアイランド現象が強まってしまいました。
過剰と無秩序で膨張した大都会は、エネルギー効率も悪化しました。
また、一極集中で地価が異常に高騰したため、都心に住むのにとてもお金がかかるようになりました。
そのため、遠いベットタウンから通勤をする人も多くいて、首都圏に移住したからといって便利に暮らせるわけでもありませんでした。
故郷の星に究極のエコシティをつくる難しさ
故郷の星でも、コンパクトシティに挑戦した自治体がありました。
しかし、中途半端な結果に終わるケースが多かったため、コンパクトシティを広めることができませんでした。
中途半端な結果に終わった理由は、再開発という方法でしかコンパクトシティをつくれなかったからです。
それには財政的な問題もありますが、ゼロからコンパクトシティをつくれなかった最大の原因は、郊外化をやりすぎたせいで、宅地のない場所を探すのが困難になってしまったことにあります。
故郷の星が再開発の場所に選んだのは、中心市街地でした。
そこをコンパクトシティにするメリットは次の3つです。
・行政機関やビジネス街があり、職住近接をつくりやすい
・公共交通機関が充実している
・中央商店街の活気を取り戻せる
しかし、古い市街地は権利関係が錯綜しており再開発が思うようにいかなかったり、郊外から中心部に住み替えを求めても家を売却するのが難しかったりで、思い描いたような成果があがりませんでした。
そういうことから故郷の星は、一部の人が完成度の低いコンパクトシティに住むだけに終わってしまいました。
エコシティの創造に故郷の星を反面教師にする
私たちは究極のエコシティをつくるために、故郷の星がエコシティをうまくつくれなかった原因を追究することにしました。
その結果、3つの問題が障害になっていたことがわかりました。
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