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姉のナンバープレートと300km旅した中学生が僕の弟になった話

 「自由だーーーー!!!!」

 電話の向こうで叫んだのは、彼女の弟だった。

 それを聞いてた、彼氏の僕。
 すげえ、映画みてーだな、と思った。

 西友の三階、赤ちゃん用品売り場。
僕と彼女は、粉ミルクの缶と紙おむつの棚の間で電話をしていた。通話先は彼女の実家、福島県。僕は300km離れた場所にいる、会ったこともない男の子に向かって、東京に向かう手順を繰り返し説明していた。

 「すこやか」と「はぐくみ」を前にしてミッションインポッシブルに匹敵する緊張感を漂わせたカップルなんて、後にも先にも僕と彼女以外にいないだろう。粉ミルク缶や紙おむつも、この日ばかりは赤ちゃんではなく僕らに声援を送っていた。

 すでに夜20時近く。成功した、という安堵と、「いやまだ安心できない」という焦燥が同時に襲ってきた。ゆうちょのATMが遅くまで開いていて助かった。ダメ元で彼の口座に送金した新幹線代は、無事に東京から福島まで届いたらしい。あとは彼の父親と母親が追いつく前に、東京にゴールでミッション・コンプリートだ。

「駅着いた?」
「着いた」
「改札の近くに、”みどりの窓口”って書いてあるところがあるはずだから、探して」

 緊張状態が続く。Yahoo路線で検索した、一番早く着くルート。そこに書かれた新幹線の名前を、僕はゆっくり発音した。無事にチケットを買い、ホームに入れたと報告を受けたところで、ようやく安心して一息つく。わけが分からないほど興奮していた。

 弟は無事、僕の彼女(つまり、彼の姉)の車のナンバープレートを持って、福島から東京への大移動を開始した。よかった。本当にヒヤヒヤした。

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なぜ、我々はナンバープレートを欲したのか

 月に1万、虚無に吸われていた。

 現代語訳すると、乗ってもいない車の税金を、ずいぶん長いこと納めていた。当時、僕は大学生。彼女は福島から東京に出てきて求職中。ええ、ド貧民です。とにかくお金がなかった。なのに300km離れた彼女の実家にポイッと置いてある、彼女名義のお車のお税金を毎月きっちりお支払いしていた。

 いや、高いわ。月1万は、高い。

 大学生で、学費は自前で払ってた。半年に一度50万近い大金が口座から差っ引かれるので、毎日毎日めっちゃ働いてた。授業以外の時間は全部バイト先に上納する日々ですよ。そんな学生アルバイターが払う額としては高額が過ぎるし、それでも僕は乗ってないというのが精神的にもやばかった。

 なにこの、毎月届くみどりの紙? 虚無? 虚無貯金? 毎月1諭吉って焼肉と同額ぞ? 我、苦学生ぞ? というのが数ヶ月続き、正直気がヘンになってきていた。

 なぜ彼女名義の車が実家に放置されていたかというと。彼女さん、ある日サンマをさばいているようすを僕に生中継していたら、実家から放り出されてしまいました。それで僕のもとに避難していたんです。

 避難というか、実家タウンにサヨナラバイバイしてきた、という表現が正しい。改めて文章にすると、事実なのに意味がわかんねえな。

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あんたらは海賊か何かですか

 彼女の実家がね、これまたどえらいインフェルノだった。サラ金! 暴力! 搾取! みたいな、あ~~それ2chの毒親スレで散々見たやつ~~~!! って思わず口に出して感心したくらいの、典型的な「ヤバすぎるファミリー ふくしまのおうち」だったんです。

 彼女は10年近く、両親からサンドバッグ扱いされ、就職をすれば金を吸い上げられてきた。ハイパーナイトメアモードな人生を送る、超貧民級の美少女です。たぶんスタート画面で指が滑って、難易度選択を盛大に間違えたんだと思う。

 聡明なのにたまーに抜けてる、これが彼女のいいところです。今回はそれが思いっきり裏目に出ちゃいましたね。次回はぜひ素敵な両親の元なんの苦労もなく育ち、おとなりに住む僕の幼なじみとして素敵な幼少期を送ってほしいものです。

 すごいよ、なにって消費者金融の貸し出しカード。彼女は一銭も使わないのに、あやうく4枚目を作られそうだったってんだから。子供に無理やりカード作らせて子供名義で借金させて、もらったお金で酒を飲む。

 あんたらは海賊か何かですか。

 脳にどんな害虫が独立国家を建設したらそんな発想ができるんだろう。

 そのせいで、彼女はいまでもクレジットカードが作れません。社会に出て間もない娘の信用、2秒ぐらいでブラックリストに叩き込む親。クズレベルがあまりに高くて、なぜ彼らが法でシバかれないのか純粋に疑問。

 これ、一般成人が他の一般成人にやったら捕まるでしょ。親が子供にやった途端、なぜか黙認されるんですよね。不思議なことです。日本七不思議のひとつに数えていいと思います。他人の尊厳を合法的に踏みにじるいちばん楽な方法は、産んだ子の人生を搾取することなんだと思います。

 だって警察に相談しても「家庭内の問題には立ち入れない」「親子なんだから、話せばわかる」って言われんの。立ち入れないのは仕方ない。おまわりさんにも決まりがあって、それを破りゃあ無職になっちゃう。
 だけどさ、それで被害者と加害者をファミレスに誘導して「家族どうし、話し合って解決してね」ってなんなのさ。話せばわかるって言って撃ち殺された偉人の話、中学で習いませんでした? あの話で得るべき教訓は、どれだけ素晴らしく筋の通った聡明な人でも、暴力を振るう気満々の人には殺されてしまうってことですよ。

 本来いちばん心をゆるしたい家族に、常に銃口向けられて。死ぬかもって思うレベルで殴られても誰にも助けてもらえない。なんなら「親子なんだから、わかりあえるでしょ」って、クソみたいな呪いと一緒に地獄に戻される子供が、めっちゃたくさんいる。

 僕はこれ、おかしいと思うんですよね。

 それはそれとして。着の身着のまま放り出されてはるか遠い東北の地から東京に来た彼女に、車を持ち出す余裕はなかったのでした。そしたら、彼女をサンドバッグにしていたクズども(彼女の両親ともいう)が、あろうことか彼女名義の車を勝手に乗り回していたんだそうで。

 えぇ? 僕、残ったローンも全部払ったし、あんたがたが滞納してたお車税も毎月払ってんですが……。な、なんで勝手に乗ってるの?? 面の皮、もしかしてウルツァイト窒化ホウ素で出来てます?

 現実問題、彼女名義の車で彼らが事故を起こしたら。責任、彼女にもちょっとはかかってきますよね。彼ら、しょっちゅう酔っぱらってたし気も荒いので、放っておいたら年がら年中裁判所と警察署をシャトルランしそうな勢いなんですよ。そんな人たちが知らん間に車を乗り回しているのは危ないし、何よりふつうに腹が立っちゃうんですよね。

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リモート廃車チャレンジ、難航

 そこで僕らはなんとか、問題の車をスクラップにすべくいろいろと画策しました。でもねー、これがなかなか難しかった。なにをどう頑張って調べても、廃車にするには「車検証」と「ナンバープレート」が必要だってんです。これには困った。だってどっちも手元にない。取りに行くなら、「ふくしまのおうち」に不法侵入してブツを奪いとるしかない。彼女の車なのに、なんだってこっちが泥棒めいたことをせにゃならんのか。

 そこに救世主が現れた。
 救世主というか、避難民だ。

 実家に残された彼女の弟が、もう限界だと、SOSを出してきた。彼女が実家を出て、二代目サンドバッグを襲名したのは他ならぬ彼だった。彼女の大脱走から半年以上が過ぎたとき、二代目たる彼の被害は心身ともに限界を迎えていた。

 「なんだかんだ言って親子なんだから、わかりあえるでしょう」という呪いにも似たクソリプ回避のために、一応被害状況の一部を淡々と述べておく。

(しんどい人は次の見出しまで飛ばしてくださいね)

 僕が見ている間だけでも、彼女は血が出るまで顔面を殴られていたし、弟はウイスキーの酒瓶を思いっきりぶん投げられていた。自宅軟禁もアホほどされていた。僕はそれを見てかなり動揺し、死ぬほど心配したってのに、彼女も弟も「よくあること」みたいな顔をしていた。

 どうなってん? なにがバグったらこんな事態が起こるわけ?

 どう考えても異常だし、彼らはどっからどう見ても、両親から「金を搾り取る存在」としての扱いしか受けていなかった。彼女の実家は、彼女・妹・弟の三人きょうだい。彼ら二人は、毒親用語でいう「搾取子」だった。「愛玩子」が妹さんね。

 正確にいえば、彼女が搾取子筆頭で、弟は比較的マシな扱いだったようです。それが急におねえちゃんがいなくなったもんだから、サンドバッグをすげ替えたと。ひでえ話です。そんなわけで弟くんは、生き残るための大脱走を決めました。


脱出ついでに、ナンバープレート剥いできて!

 弟くんはインフェルノからの大脱走を決め、ついでに姉の車に積んだ車検証とナンバープレートを剥いできてくれることになった。当時弟、なんと15歳。春から高校生になろうかという、受験シーズンド真ん中でした。

 僕はというと、一応「弟が限界」ということは存じておりました。電話で話したこともあります。僕は親から無視されて育った人間ですが、暴力をうけたことはなかったので、彼や彼女の苦悩ってのはもう想像するしかありません。だからせめて、遠くにいても味方でありたいと思いました。

「本当に無理なら、うちで暮らしてもいいよ」

 という話はしてた。とはいえ我が家の間取りはひとり暮らし向けの1DKだし、僕は大学生、向こうは受験生。まあほんとのほんとに最終手段だね~! という感じではあったんです。

 ある日、僕がバイトの早番から戻ると、彼女からメッセージが入っていました。

「弟、いま脱出中」

 ……え、いま!?!??!?
 それって今日いま、本日このとき!?!?!?

 僕が労働にいそしんでいる間に、300km離れた地獄の家で大脱走が進行中でした。びっくらこいた。ハイボール作ってる場合じゃなかった。
 しっかし過去にいろいろあって、急遽発生するクソヤバイベントに慣れきっていた僕。

 家が裁判所に差し押さえられたときも、かわいい彼女が夜中に実家をたたき出された時も。
 最終的には大丈夫だったし、まあ今回もなんとかなるべ。そんな風に思っていました。「なんとかなるし、なんとかします」という心意気だけで生きてきた男です。だいじなのは普段から呑気でいることと、やることを整理してひとつずつ実行することです。

 それでは実践編、いってみましょう。


彼の勇気と彼女の声援、僕の人生まるごと全部

「車検証、とったよ」
「ありがとう!」「よくやった! すげー!」

 電話越しのひそひそ声と、おおはしゃぎの僕ら。事態が事態なのでもちろん緊張感はあった。けど、なんといったらいいのか。

 けっこう、わくわくしていた。僕自身は根が暗いのでまったく経験はないのだが、たぶん、ひいきのチームの決勝戦を応援するサポーターってこんな気分なんだと思う。

 がんばれって気持ちと、頼むから見つからんでくれという願いと。
 (なんでもいいから彼を守ってください)
 西友の3階で、心の底から祈った。マミーポコパンツとムーニーマンの間で、手に汗握って、祈った。おむつの袋に印刷されたかわいい乳幼児が、にこにこ笑顔で僕らを見上げている。君らも祈ってくれ、この大脱走の成功を。

「大丈夫……?」
「だいじょぶ。いま、荷物運び出した。外に出たよ……」
「OK。ナンバープレート、見える?」
「見える。キャップはがせばいいんだっけ?」
「ドライバーでえぐって、でてきたねじ取ればいける」

 緊張で知能が2くらいになっていた。金属と金属が触れる小さな音が絶え間なく聞こえる。祈ることしかできないってこんなにしんどいのか。頼むから早く、つつがなく終わってくれ。ここで彼が見つかったら、どんな目に遭うかわからない。僕らには責任がある。彼に自由を与えた責任が。

「あっ、やべっ!」
「なに? どした?」

 え、なに、怖い!!!!!
 返事がない。こちらもそれ以上声をかけなかった。音がすれば見つかる可能性があると思った。吞めもしない息をのどに詰まらせながら、彼の呼吸音を注意深く追っていた。2100万年の時が過ぎ、ようやく彼の声がした。

「…………大丈夫。親父出てきたけど、もう引っ込んだ」

 あっぶねえええええ!!!!

 アドレナリンの分泌過多で、もはや何が何だかわからなかった。やべー。よかった。神様ありがとう。この調子で最後までお願いします。

「よし、前のもちゃっちゃとやっちゃおう」

 我ながらクソみたいなアドバイスだが、とにかく明るく声をかけ続けた。さんざん祈り倒した後にできることなんて、心の底から信じる以外、ない。

 彼の勇気と彼女の声援、僕の人生まるごと全部。
 それら全部をひっくるめて、
 ただ、ただ、ひたすら、そりゃもう信じた。
 全力で、信頼した。
 この三人は、うまくいく。
 なんかあっても、なんとかするし。 
 ぜったいにこの夜を超えて、地獄を超えて、
 これ以上ないくらいすんばらしい未来にたどり着く。

 実は誰にも教えていない秘密がある。

 僕の人生は、ぜったいにうまくいくように設計されている、ということだ。だから信じた。すべてを捨てて僕のもとに転がり込んでくれた、このふたりは運がいい。ぜったいにうまくいく人生に、勇気を出して踏み込んだんだから。この世界は、勇気を出した人間に、ちょっと甘いのだ。

 三人の人生とこれからを、
 すべてまるっと信頼した。
 僕がしたことはそれだけだ。
 それしかできなかったから、
 ここぞとばかりに全力でやった。

 当時21の若造にしては、よくやったんじゃないだろか。

 あとから聞いた話によると。

 弟氏、なんとなく嫌な予感がしたそうな。
特に理由もないまま、うしろのプレートから剥がしてた。そしたら車の前側にあったインフェルノゲート(玄関)から親父がでてきたんだそうな。
 その話を聞いたとき、すぐさま森羅万象に感謝の念をささげまくった。あのときの神様、ありがとう。おかげさまで弟は元気です。

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そして、彼は自由になった

 彼の頑張りが功を奏し、ナンバープレートは2枚とも無事ひっぺがされて彼のリュックに収まった。「よし行け! 逃げろ!!」と声をかけると、彼はマウンテンバイクに飛び乗り、新幹線の通る駅まで、漕いで漕いで漕ぎまくった。

「やったー! よっしゃあああ!」と叫ぶ、彼女と僕。

「自由だーーーー!!!」

 弟の叫ぶ声が、電話の向こうから聞こえた。

 ああ、よかった。あとはなんとかするだけだ。

 まずは彼の高校のこと、それから部屋のこと、大家さんへの説明のこと。彼女の両親が顔を真っ赤にして騒ぎ立てるさまも容易に想像ができたが、そんなことはどうでもよかった。彼が今日、地獄から解放されたことに比べれば、全ての問題は床を転がるワタボコリよりもかわいいものだ。

 めんどうなので詳細は省くが、その後はぜんぶなんとかなった。なんとかするのは僕の得意分野だ。つまり僕の見せ場はここでおしまいである。

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↑弟を回収して安心したら腹が減ったので、3人でうどんを食った

 車はリモート廃車できた。陸運局で手続きをしてから専門の業者に書類を送ったら、車は無事スクラップになり、謎に7,000円くらいもらえた。廃車は廃品回収系の業者に頼むとおこづかいがもらえるという、次にどう役立てればいいか見当もつかないTipsをゲットした。

 弟は高校に入学し、そして卒業した。東京都のきまりで僕らは保護者と認められず、昼間の高校には通えなかった。僕は知らなかったのだけど、都立の普通科高校ってこんな決まりがあるらしくて。

保護者とともに都内に住所を有すること、又は保護者とともに入学日までに都内に住所を有することが確実なこと(法的に一方が親権者となる場合を除いて、父又は母のどちらか一方だけと都内に住む場合は応募できません)。

 いろんなところに電話して、いろんな大人と話したんだけど。
 おねえちゃんだと、ダメなんだそうで。
 海賊でも生きているのであれば、保護者は両親なんだと、ありとあらゆる公的機関にそう言われました。チラッとドス黒い考えが頭をかすめたりもしたんですけど、僕にはもう守るべき家族がいるので、危ないことをするのはやめました。あぶねえあぶねえ。頭に血なんて、のぼらせるもんじゃないよね。


僕らは、君の保護者になれない

 僕らは東京で、いろんなことと向き合った。実の両親が海賊である場合をまったく想定していなさそうなたくさんの決め事に囲まれて、そのたび一個一個折り合いをつけていった。

 彼も、彼女も、僕も。
 頭をひねって考えて、
 なんかいろいろとそれなりにがんばって生きてきた。
 彼は今年で、20歳になる。
 あの日の僕と1歳違いの、僕よりもいい青年になった。

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 人それぞれ、という言葉がある。
 三人家族になってからたくさん見たし、そのたびに時間をかけて考えた。

 僕はこれを結論にもってくることをきらっている。

 「まあ、人それぞれだからね」で話をとじようとする場合の大半は、考えるのがしんどくなって、思考をストップさせているときだ。

 ほんとうに考えるべきはそこからなのに。

 「人それぞれ」は出発点に使うべき言葉であって、きまずい話を無理やり終わらせる便利フレーズではない。少なくとも、いまの僕はそう思う。

 たぶんぼくらは、世界に星の数ほどある「人それぞれ」の中でも、けっこう特殊な部類に入る三人だ。なかよく町を歩いていると、「三人は、どういう集まりなんだっけ?」という顔をされることが多い。
 僕が童顔で、弟と30cmの身長差があるのも大きな原因だと思うので、そろそろ身長を分けてくれても良い頃だと思う。贅沢は言わない。20cmを月1cm、分割払いで構わない。

 ところで、特殊な経緯で1DKに集まり、もちゃもちゃと暮らしている三人が、序盤に話し合ったことがある。

 「僕も彼女も、君の保護者にはなれない」ということだ。

 これは言い換えれば「僕たちは、好きで君と一緒に暮らしている」と、三人の間で定義した、という意味になる。

 僕は兄で、彼女は姉だが、保護者ではない。
 未成年者を保護する義務のある大人として、彼と暮らすわけではないと明言している。

 いやもちろん、なんかあったら一緒に謝るし。
 それっぽい大人が必要だってんなら、まあ行きますけど。

 でも基本的に僕らってのは、たまたまちょっと先に生まれていただけの、単なる同居人だ。そのうえで、家族として仲良くやっていけたらうれしいと、そういう話をした。

 とはいえ、これを実行するのは簡単なことじゃぁない。彼にはめちゃくちゃ重い、言ってしまえば恩のようなものを、僕の勝手で押し付けてしまった。彼の立場からすれば、対等に、単なる年上として接しろなんて、無理難題もいいところだ。

 でもそうしたいと思っているから、三人のなかで定義をした。定義をする、というのは大事なことだ。人はそれぞれ違う。家族もそれぞれみんな違う。だからこそ、僕らはこうありたいと決めておく。

 いまんとこ、「人それぞれ」の用法は、これがベストだと思ってる。

 みんなちがうから、ちがう場所から考えよう。
 いろんな形があることを、とりあえず知っておこう。
 そんでできれば、仲良くやっていこう。
 そんなかんじで、僕らはおおむね楽しく過ごしている。

 今日の夕飯はなににしようかな。

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