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心の片隅の国へ -旅先で本を味わう-

小高い場所からティンプーの街並みを眺めた後、高所に鎮座する黄金の大仏を見物へ行った。

先程のこぢんまりとした風景からは、想像できないほど、華美で荘厳の大仏を眺め、高所へゆっくりと身体を慣らしてゆく。

周囲には何もない長閑な場所に輝く大仏は、何ともアンバランスで、少し面白おかしく感じてしまう。

大仏と寺院を一通り案内してもらった後、有名なブータンの郵便局へ連れて行ってもらい、自分の写真の入った切手を作ってもらった。

タク・ツァン寺院の写真を背景に中途半端な笑顔を浮かべるわたしの写る、なんとも滑稽で愛おしい世界で唯一の切手が出来上がった。

その後、少し休憩ということで、中心地にあるホテルへ戻ってきた。

早朝のフライトで疲れているだろうとガイドは仮眠を勧めてくれた。

しかし、わたしは寝る気には全くならず、ツインベッドの小さな、しかし、所々にブータンの伝統的な模様や織物で飾られている可愛らしいホテルの一室で、何とも言えない香辛料のような香りとピーチワイン、一緒に旅をしてきた本の匂いと孤独を味わいつつ、何度読み返したか分からない『アヒルと鴨のコインロッカー』を味わうように読んでいた。

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