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こんな働き方があってもいいよね♪〜草取りで起業物語〜

今回は 2023年12月18日に開催した「こんな働き方があってもいいよね♪〜草取りで起業物語〜」の対談レポートをお届けします。

ゲストは関谷友映さんです。
年長の女の子のママである友映さんは一般社団法人キッチン育児協会のインストラクター、子育てオンラインサロン「ままのてつなご@信州」で子育て中のママに向けたおしゃべり会のファシリテーターを担当されるほか、「おうちの草取り」で活動をされています。
結婚を契機に長野県に移住してきた友映さんは美濃焼で有名な岐阜県土岐市のご出身で、身近な方の多くが家で仕事をしている、そんな地域で生まれ育ってきたそうです。
今回は、自分自身の「好き」が仕事になった、とお話しされた友映さんが、どのようにして今の生活に至ったのかについてをうかがいました。

暮らすroom's 北村きよみ(以下・北村):結婚を契機に長野県にいらっしゃったとのことですが、そもそもは何をされていたんですか? 

関谷友映さん(以下・友映さん):一番最初についた職はスーパーのレジ係でしたが、その後事務職を経験しました。結婚後は精神保健福祉の分野でグループホーム利用者の方の家事のお手伝い、料理、掃除、それこそ草取りなど、生活のサポートや相談業務を担当し、その後異動先でも利用者の方がいらっしゃる場所の掃除やお茶の準備などをする仕事をしていました。 当時の私のビジョンでは、結婚、妊娠、出産となっても産休、育休をとって仕事を続けたかったのですが、私は子供を授かるために不妊治療が必要で。勤務体系なども融通をきかせてもらっていたのですが、どうしても仕事を辞めざるを得ない状況になってしまいました。
仕事が面白くてたまらなかったので辞めた日は「仕事がしたい!」と言って泣いたことを覚えています。
私の職場は不妊治療に対して協力的だったと思います。でも、毎日不妊治療のために通院する必要があった上に、家では妻として生活しなければならない。この生活、家事の部分で誰かに助けてもらえたとしたら、誰かがご飯を作りに来てくれて、お風呂を沸かしてくれたりしたら、「明日も頑張るぞ」ってもしかしたら仕事を続けられたかもしれません。

北村:不妊治療に対して保険が適用になるとか、支援金がという部分だけではなく、そういった「声」を拾っていってもらえたらと思いますね。
お子さんが生まれてからはどのように過ごされていたんですか?

友映さん:私は里帰り出産もせず、サポートのない中での出産だったので「1人でやるんだ」というプレッシャーがありました。
夫は朝7時に出て夜11時に帰ってくるような生活で、私は育児ノイローゼ気味になってしまい、保健師訪問もなんと4回もあったんです。
生活面では産後、行政の産褥ヘルパーさんに週2回掃除やご飯作りをお願いしていて、子供に関しては一時保育も考えましたが哺乳瓶が使えない子供だったので1歳過ぎまで預けることはできませんでした。

北村:出産前後、お金だけでなく助けてくれる人、助け合いの仕組みが大切だということがわかります。
ではそんな産後の大変な中で、どういう流れで仕事を始めたいなという気持ちに変わっていったのでしょうか?

友映さん:不妊治療で仕事を辞めてしまったという悔しさがあったので、出産したら仕事を始めるんだという思いはずっと持っていました。
とは言え1人での育児はとても大変で、黄昏泣きで毎日泣く娘を抱きながら、産褥ヘルパーさんのように誰かを助けられる人になりたいな、とか、私もいつか人の役に立つんだ。とか夕陽を眺めながら思っていました。大きな転機になったのは「ゆめサポママ@ながの」との出会いです。
妊娠中安静が必要だった私はご飯作りにとても困っていて、体にやさしいご飯はないものかと日々検索していた時に「ゆめママキッチン」というFacebook広告を目にしました。
そこでよくわからないながらもゆめママキッチン立ち上げのためのクラウドファンディングをしてみたんです。そうしたら、ゆめママキッチンの内覧会への招待が届いて北村さんが共同代表をされている「ゆめサポママ@ながの」という団体を知りました。
その後長野市で開催された「ママまつり」にゆめサポママ@ながのが「ママの働き方プチ講座」という名前で出店されるということを知り行ってみたら、目の前に北村さんが座っていたんです。その場で北村さんに「好きなことある?」と聞かれて、咄嗟に「家事が好きです」、「草取りが好きです」と言ったら「じゃあ、うちの草取りやってよ」と言われたのが始まりでした。働き方、というと「資格ある?」とか「やれることある?」って聞かれるのが普通だと思っていたんです。
それが「好きなことある?」と聞かれて、実際に北村さんのおうちに草取りに行かせてもらったらお金がもらえた。この経験が働き方や仕事に対するイメージを変えることになったんです。
仕事というと就職して一定時間職場に行ってお金をもらう、とか、自営業だった実家のように初期投資をして借金を抱えた状態で仕事を始める、というイメージでしたが、自分の身一つで行って、草取りをしたらお金がもらえたということに喜びと驚きを感じました。

北村:実際に我が家の草取りを仕事としてやってみて何か変わったことはありましたか?

友映さん:草取り自体は好きだったんですが、それまで仕事としてはやったことがなかったので、お客様の家を綺麗にするという大変さを感じました。
でも国家資格もない、長く続けてきたと言えるようなものもない私が、好きなことをして人の役に立てたという喜びが大変さを上回ったとも感じました。

北村:草取りに限らず何か得意がある人がその得意を仕事にしようとしない、この思考がもったいないなと思うのですが、そのあたりはどう思って仕事にされてきたのでしょうか?

友映さん:私はいきなり「草取り始めました」と言ってたくさんお仕事をいただいたわけではなく、「草取りしましたよ」ということを私や北村さんがSNSで発信したら「うちもやってよ」という声をいただいて、少しずつ仕事として形になっていったんです。
実は草取りと並行して「私お片付けが好きなんです」と周りに言っていたら、「片付け好きならうちに来てやって」なんて言われることも増えてきて、お片付けの方も口コミのような形で呼ばれるようになってきました。仕事だけでなく、私生活や学びで広がる出会いの中で「自分の好きなこと」を周りに伝えられるようになったら、資格がない、経験がない私にも「来ていいよ」って言ってくれる人がいた。このことは今でも驚きですね。

北村:物事をちゃんとやってからでないと始められない。と思っている人は多いと思うのですが、それだといつまで経っても始められなかったりするので、お願いされたら「はい、喜んで」と引き受けることが自分の自信につながることになるのかな。なんて思いますね。
では、仕事を始めた中で悩んだことなどはありましたか?

友映さん:在宅事務のお仕事をいただいたことがあって、娘の預け先を見つけて預けながら仕事をしていたんですが、家にいる間はなんともない娘も園に行くと毎回お熱で呼び出しがあって。となかなかスムーズにいかない日々でした。
娘と一緒に過ごしながらだとメッセージを一文字打つのに3時間かかってしまうほど大変で私が体調不良になってしまい、自分のペースでできないことは一旦降りようという決断になりました。
同時にキッチン育児のインストラクターの学びをしていて、さあインストラクター業を始めようと思った時に、私の場合は事業の準備期間は就労証明を取ることができないことがわかり、娘を仕事のために預けることにハードルを感じてしまったことも大変でした。

北村:就労証明が取れなかった時にこうだったら良かったのになと思う点はありますか?

友映さん:誰でも理由なく子供を預けてもいいんじゃない?と思います。
仕事だけが預ける理由ではないし、女性だけのことでも、男性だけのことでもないし、子育てを休んだっていいんだし、収入を基準にしなくてもいい。誰でも理由なく子供を預けることができる仕組みが行政にあればいいなと思いました。今になって結婚前にやっていた仕事も、結婚後にやっていた仕事も、そして今もやっと全部つながってきたなと思います。
あとフリーランス業をやっていると、自分の私生活の出会いも仕事での出会いも全部繋がってくるんだなと感じます。先日入院した際に同室の方と仲良くなって「春になったら草取りのお仕事の依頼をしたい」と言ってもらえたんです。こうやって私の全部の出会いがつながって今があるのだなと思います。
また、どんな時も続けている「学び」のおかげで物事を長い目で見ることができるようになってきたと思っています。今を大事に、とも言いますが、人生100年時代と言われる中で、今しかできないことも大事にしながら先、未来も大事にできるという考えになって、物事を諦めそうにもなるけど諦めないでいられるのはその学びのおかげだなと思います。

北村:人生100年時代という言葉も出ましたが、これからをどう生きていきたいですか?

友映さん:今後どのような働き方ができるかはまだわからないところではありますが、草取りをさせていただいていく中で木の剪定をして欲しいという希望をお聞きすることが少なくないので少しずつ学んでいけたらと思っています。
またこれから私がますます草取りのお仕事を増やしていくと、1人では対応しきれない部分も増えてくると思うので草取りを担う子育て中のお母さんチームなんかが将来的にあったりしてもいいのかなと思います。
そして育児中に私を助けてくれた産褥ヘルパーさんのようにお家の中でできる家事代行のようなサービスやインストラクター業など仕事の幅を増やしていければと思っています。
もちろん仕事だけでなく、子育てという分野もエンジョイしていきたいです。自分は何かノウハウを持っているわけでもなく、また「絶対フリーランスになってやるんだ」という気持ちもなく、出会いの中でフリーランスとして働いています。
今回お話をさせていただくために自分を振り返った時に、たとえ短時間であっても人に感謝される仕事をさせてもらっている喜びと、好きなことでお客様のお役に立てているということが嬉しかったと改めて気づきました。
これからも細く長く、お客様の役に立てるように成長していこうと思ったのと、自分自身を良い状態に保つために「心の栄養」と「睡眠」を大事にしていきたいと思います。


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