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コーヒーの「旬」を嗜んでみませんか?

気がつけば5月。日中は暑い日も増えてきました。中の人は暑がりなので、トマト、レタスといった夏野菜が好きです。昔から、夏野菜を植えるのは「八十八夜を過ぎてから」、つまり5月初旬頃が良いと言われているのだとか。四季の豊かな日本では、「旬」の食材が心身の豊かさに繋がっていると感じます。

しかし、実はコーヒーにも「旬」があること、みなさんご存じでしょうか?遠い地の土壌で育まれ、はるばる運ばれてきたコーヒーにも、「旬」のエッセンスが含まれています。

Kurasu Coffee Knowledge
Kurasu編集部が、コーヒーをより深く楽しむためのナレッジをお届けするシリーズ。意外と知らない産地の話、焙煎士やバリスタだけが知っている現場の知恵、あまり知られていないコーヒー器具の話まで、一杯のカップの背景にある広い世界をご紹介します。

生産地によって異なるコーヒーの収穫時期

コーヒー豆の収穫時期は、生産地によって異なります。これが、コーヒーの「旬」を決めるひとつの要素となります。

例えば、コロンビアでは年に2回収穫が行われ、主な収穫期は10月から12月、小さな収穫期が4月から6月にかけて設定されています。一方、世界最大コーヒー生産国のブラジルでは、収穫期が6月から8月にかけて行われます。これらの時期に収穫されたコーヒー豆は、その後数ヶ月をかけて乾燥、選別され、出荷準備が整います。

ノルウェーのコーヒーインポーター「Nordic Approach」が提供している収穫時期カレンダー。 紫色がそれぞれの産地での収穫時期を、緑色はヨーロッパの倉庫に到着する時期を表しています(日本への入港時期は、これとは異なります)。また、国際情勢の変動によって遅れが生じることも多々あります。

フレッシュな状態としての「旬」

一般的に「旬」は「その時期に最も美味しい」という意味を持ちます。コーヒーの生豆において「最も美味しい」状態とは「フレッシュであること」、つまり適切な水分値が保たれていること

日本にいる私たちが味わえる「旬のコーヒー」は、各シーズンの最初に日本の港に届けられる豆です。そして、その「旬の美味しさ」は、豆がどれだけフレッシュな状態に保たれているかという点と結びつきます。収穫後、豆は徐々にフレッシュさを失い始めるので、出荷や輸送、保管にあたって品質を保つための工夫がとても大切なのです。

フレッシュさを保つ工夫

コーヒー豆をフレッシュな状態で保つためには、保管環境が非常に重要です。果物を冷蔵庫に入れて保管するのと同様、生豆の理想的な保管条件も、低温・低湿度の環境です。

一般的にコーヒー豆は、麻袋に入れた状態で船便で輸送されることが多く、到着次第、温度・湿度が適切に管理された豆保管庫に運ばれます。

豆のクオリティやインポーターさんの方針によっては、真空包装で封入し、豆の鮮度をより長く保てるようにこだわることもあります。また船便では輸送へ時間を要するため、オークションロットのような高品質な豆では、空輸することもあります。

年中同じ豆を飲むことはできるのか

よく「〇〇のコーヒーが美味しかったけど、販売終わりましたか?」という問い合わせを頂くことがあります。

美味しく飲んで頂けた気持ちがありがたく、できることならすぐに同じ豆をお客様に提供できたらいいなと思います。しかし、実際はコーヒー豆も果物と同じように、収穫時期によって市場に出回る豆の種類が異なるため、年中同じコーヒーを手に入れることは困難です。

もし、どうしても忘れられない美味しいコーヒーに出会ったら? 例えば、既にオールドクロップ(前年度より以前に獲れたコーヒー)になった豆を冷蔵や真空で保存することで、フレッシュな状態に保つことはできるかもしれません。

しかし、「旬を味わっている」という気持ちや感覚とともに本来の味わいを楽しめるのは、やはり自然のサイクルに合わせて提供される豆のほうでしょう。

コーヒーの「旬」とは、ただフレッシュな状態を指すのではなく、スペシャルティコーヒーならではの嗜好性の一部なのかもしれません。そこには、旬という概念が持つ「うつろい」の感覚があるように思います。

「旬」を通して、うつろいを嗜む

さて、「旬」はその季節に最も美味しいものを指して使用されることが多いと思われますが、そこにはただの食材のピークタイムを指す以上の、深い文化的意味合いも含まれるような気がします。

「旬」は、自然との調和、そしてその瞬間瞬間を大切にする、ある種の美学ではないでしょうか。「旬」の食材を通して「うつろい」を楽しむ。少し大げさかもしれませんが、その中には美味しさへの喜びやはかなさも混在していると感じます。

コーヒーを飲むとき、「旬」に目を向けてみることで、コーヒーのフレッシュネスや、季節に応じて変わる多様な味わい、それを生み出す自然との調和の感覚などを、より深く体験できるかもしれません。

お店にお越しの際は、ぜひバリスタにおすすめの豆を尋ねてください。また、KurasuのECサイトやニュースレターでもおすすめの豆を紹介しています。

春から夏へと移り変わるこの季節、ぜひ、今だから味わえるコーヒーの美味しさを探してみてください。今、昨年10月から12月に収穫されたコロンビアのコーヒー豆が春に入港し、販売が始まっています。アイスでも美味しいコロンビア、いかがですか?