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「支援と支配は紙一重」から考えたこと。

朝はNHKの連続テレビ小説を見るので、自動的にその後の「あさイチ」が流れていることが多い我が家。

けさはルポライターの杉山春さんが出演されていて、児童虐待などのお話をされていました。外出自粛が求められる中で虐待やDVなどのトラブルが増えているのでは…とも言われていて、見えにくい問題であるがゆえに、考えさせられることも多かったのですが、掃除をしたり出かける準備をしたりしながら聴いている中で、はっとした言葉があったので、コラムで紹介したいと思います。

それは、「支援と支配は表裏一体」という言葉です。

番組内で語られていたのは、

生きることに困っている人がいて、その人たちを支援する取り組みを行っている人がいて、その関係性が徐々に、「この人にいい顔をしたらより良い待遇をしてくれるかもしれない」という関係性に変化し、支援を受ける側が支援する側の空気を読んだり、忖度したりするようになる。支援する側も、ともすれば「私はこの人たちのためにやってあげているんだ」「この人たちが劣っているから助けてあげている」という気持ちが芽生えると、それはもう支配である…

というような文脈だったと思います(バタバタしながら観ていたので間違っていたらごめんなさい)。

それが公的サポートであっても、NPOのような団体によるサポートであっても、支援する側と受ける側の関係性はとても複雑なのだな…と、はっとさせられたのでした。

私たちくらしアトリエはNPOであり、位置づけとしては「中間支援組織」というところになるのかなと思います。

中間支援とは、行政と地域の間、あるいは作り手と買い手の間などの中間にいて、それぞれの思いをつなげたり、パイプ役となったりすることであり、NPOの大切な役割のひとつです。

でも、自分たちの活動が「支援」だと思ったことは正直、あまりありません。もちろん、社会の中での位置づけでは「支援組織」なのですが、世間でイメージされる「支援」とは「困っている人に手を差し伸べる」みたいな感じではないでしょうか。そういう意味での「支援」とくらしアトリエの実際の活動は、気持ちの上で少し違っているのです。

「中間支援」の名のとおり、真ん中にいて「つなぐ」というところが目的の仕事であれば、もっとビジネスライクに、あるいはもっと無難に、淡々といろんな人と人をつないでいくこともできるのかもしれないけれど、双方の人や団体の皆さんの思いに触れたら、やっぱり一緒に喜んだり一緒に泣いたりしてしまいます。近いなと思う表現は「共感」です。

共感から、「何とか頑張ってもらいたい!」「知ってもらいたい!」という気持ちが高まって行動に移せるのですが、それは「支援」という言葉、つまり「苦境にある人に力を貸してあげる、助ける」という意味合いとはちょっとニュアンスが違う気がする。

じゃあ、私たちくらしアトリエと作り手の皆さんの関係性って何だろう?


例えば、今月下旬から施設で販売会を予定している「原さんの竹かご」。

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私たちは、原さんがせっせと心を込めて作る丈夫な竹かごに魅せられ、「原さんの竹かごを、そしてそれを作る原さんの人柄や思いを、多くの皆さんに知ってもらいたい」という思いで発信をしています。

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商品としての「竹かご」は、いわば原さんの生きざまがつくり出した成果物。それを販売させていただくことは、物語を次に伝えることでもあり、技術を見ていただく機会でもあるけれど、そこにある関係性は「ビジネスパートナー」というのではなく、「仕入れ業者と生産者」というドライなものでもない。まして「支援をする側と受ける側」でもありません。

ぶっちゃけてい言えば、「ただ単に原さんを讃え、応援したい人と、ただ単に竹かごを作っている人」という関係性です。

だから、原さんがこちらに忖度をしたり、私たちが「原さんの代わりに、原さんのためを思って発信してあげるよ」みたいなスタンスだったら、うまくいかないと思う。何より大前提として、原さんは「困っていない」ので、「苦境にある人を助ける」という意味合いでの支援は成り立たないわけです。

でも、ただまっすぐに原さんと竹かごに惚れ込み、それを発信することで、欲しいなと思う人に届けることはできる。それが結果的に「望んだ人に望んだものを届ける」という意味での支援をしている、のかもしれません。

いずれにしても、分かりやすく「支援をしているNPO」ではないところが私たちの特徴でもあり、「NPO=慈善団体」というある種の既成概念から外れているところでもあり、だからこそ「何をやってるNPOかよく分からない」と言われる理由なのかもしれないなあ、と、「支援」の意味をたどりながら思い至りました。

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仕入れをさせていただいている生産者の中には、もっとドライに電話ひとつで発送してくれる、みたいな関係性もあります。それはそれでありがたい関係です。でも、その関係性もやっぱり、業者対業者、ではないような気がする(こっちの一方的な思いかもしれませんが)。

つまり私たちの立ち位置は販売業者、小売業者というよりも、ここは(島根)いいところだよ、という発信をするときに必要不可欠な「紹介役」、という肩書のほうがぴったりくるように思うのです。いいものを見つけて、紹介して、喜んでもらう。そこに喜びを感じる。そんな立ち位置。


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「頑張ってる人を紹介したい!」とか「困っている人の何か助けになれば」とかいう気持ちは、人としてはある意味とても尊いものなのだけど、そこに必要以上の「関係性」が生まれると、時に上下関係に変化し、「やってあげる」「やってもらう」という関係になったりすることもある…自分たちはどうなんだろう…テレビから流れてきた「支配」という言葉にちょっと考えてしまったのですが、いろいろ振り返って考えて「いや、ないな」ときっぱり思い直しました。

私たちの役割は「島根の良いものを伝える」「地域と暮らしをつなげる」ことであり、そこに「支援」、まして「支配」という概念はそぐわない。

だからこそ、作り手の皆さんと良い関係が築けるのでは、と思います。

大きな渦や流れは作れないけれど、島根の良いものを形あるもの・ないものにかかわらずこれからも発信していけるよう、「紹介役」という役割をこれからも淡々とこなしていけたら幸甚です。

これからも、作り手の皆さんたちを全力で応援し、島根をいいところだとひたすらにまっすぐ言い続けるNPOでありたい!と、気持ちを新たにした金曜日でした。

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