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「転勤族」という存在、その知られざる「願い」。

「シマシマしまね」に、島根に引っ越してきてまだ2週間ちょっと、というお客さまがいらっしゃいました。

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知り合いもゼロで右も左も分からず、検索をたどってうちの施設に来てくださったのです(きっとすごく狭い道ばかりで、心細かっただろうと思います)。ありがたいことです。

お住まいの地域にあるお店(カフェやレストラン、野菜を販売している産直など)をいくつかピックアップして見ていただいたり、フリーペーパーをお渡ししたりしたのですが、とにかく「検索しても何も分からない」ということに不安を覚えておられました。

私たちは日頃から「発信する側」で、きちんと情報を流していると思っているわけですが、一方で、転勤族の方は知り合いもいなくて、情報がない、とおっしゃる。つまり、きちんと届いていないということなのです。いくら流していても届いていなければないのと同じなのだ、情報のレイヤーが違うと、まったく伝わらないのだということを痛感しました。

違う地層を掘っている、という表現がしっくりくるのですが、あるところには十分すぎるほど情報があるのに、ちょっと場所が違うだけで、まったく見つからない、ということを、まざまざと見せつけられたのです。

特に、そのお客さまが「この辺って週末も全然イベントをしてないんですか?検索しても全然出てこない」とおっしゃったのには驚きました。だって、私たちから見たら週末ごとに最近イベント多いなあ…と感じるくらいなのに、その方には一切届いていないのです。

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外から来られた方には、地域の本来の姿がしっかりと伝わるのだと思います。お客さまが「情報が入ってこない」とおっしゃるのなら、きっとそうなのでしょう。いくら一生懸命投げかけて発信しても、例えばInstagramだけで、Facebookだけで告知をしてもその情報は拾えないことがある。これは、発信する側は心して、胸にきちんととどめておくべきことだと思います。

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私自身も転勤族だったので気持ちがすごく分かるのですが、この地域で、みんないったいどうしているのか。何をして暮らしているのか。それが見えない、ということは、かなりしんどいです。不安で、孤独です。まだ子どもが小さければ、育児サークルやコミュニティセンターなどの場が行政から与えられることが多く、そこに参加することでお友だちができたり、ということもあるのですが、子どもがある程度大きくなると、拠りどころも激減します。

そして、転勤族にはことばがよく分からない。転勤族には土地勘がなくて、場所が分かってもそれが近いのか遠いのかが分からない。いろんな壁が、せっかく遠くから島根に越して来られた方々を、家の中に閉じ込めてしまっているのかもしれないのです。

ともかく、そんな方が検索をたどって、狭い道を不安になりながら、「シマシマしまね」に来てくださったことがとても嬉しく、でもそれと同時に、あまりお役に立てていないということを歯がゆく感じたのでした。素敵な方だったからきっとすぐにお友だちができるだろう、と思いつつも、変な責任感を感じてしまうというか…。

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私は転勤先で、かなり無理をしていろんな行事ごとに参加したり、シャイである自分を奮い立たせて知らない人に話しかけたりして、「話ができる人」を増やしていきました。そんな私を受け入れてくれる優しい人たちが各地にいて、楽しく過ごすことができました。でもそれってすごい偶然のうえに成り立っているのかもしれない。たまたま、すごくいい人たちに出会えて、良くしてもらえた、ということなのかもしれない。そもそも、話しかける場所や機会さえなかったとしたら?自分はどうなっていただろう。

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先日、別のお客さまと、島根に来られた外国人の方へのサポートの仕方についてお話をする機会があったのですが、やっぱり結局、「思いやり」とか「ちょっとした気遣い」とか、人がやさしく人に接する、という当たり前のことが大切なのだという結論になりました。自分にはそれができているだろうか?あらためて自らに問い直すきっかけを、立て続けにいただいた気がします。

ともかくあのお客さまが早く、ご自身のままに楽しく過ごしていただけるようになれば、と願うばかり…。島根は、懐に入り込んで頼られると皆さん親切に何でも教えてくれる、そんな土地柄です。いいところもいっぱいあるし、豊かさを感じられるおいしい食べものもたくさんあります。すべての転勤族の方々が島根ライフを存分に楽しんでくれるといいなあ…かつての自分を思い出しながら、これからの自分たちにまた宿題をいただいたように感じました。

サポートありがとうございます。とてもとても励みになります。 島根を中心としたNPO活動に活用させていただきます。島根での暮らしが、楽しく豊かなものになりますように。