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振り返り|2022年観劇・14作品まとめ

2022年の観劇は14作品でピリオドとなりそうです。公演中止のため、ここに入らずに紙切れに変わったチケットもありますが、今年観たもの振り返ります。お芝居・ミュージカル、入り混じりの雑食記。

長いです。目次に何かピンとくるものがあれば飛ばして見てください。
お好きな方は、主観・思い入れによって文量の差が激しいことをお許しください。色々と敬称略ですが、重ねてすみません。


リトルプリンス(シアタークリエ・1月)

音楽座の歴史に残る演目が東宝製作で蘇る。王子役は音楽座上演時から続投となる土居裕子に加え、大抜擢された加藤梨里香のWキャスト。歳の差40歳と話題になった。

観劇したのは加藤王子の回。ピュアでフレッシュ、第一声から信頼感が爆上がりし、無駄な先入観なく物語に没入。
ミュージカルではなく音楽劇、そして場面転換のコンテンポラリーダンス。ともすれば学芸会になりそうな作りを600人規模の劇場で、東宝製作としてまとめたのはすごい。

音楽座ファンを公言していた飛行士/キツネ役の井上芳雄、花役の花總まりのキャスティングはオタクに刺さるとともに、メタが強烈。

カウンターにそっと置かれていた王子たち。

冒険者たち~JOURNEY TO THE WEST~(KAAT神奈川芸術劇場・2月)

県立として地域にひらかれた劇場であることを掲げるKAAT。劇場を飛び出し神奈川県内6都市を回るにふさわしい、地域に根付いた作品だ。

西遊記をベースに、三蔵法師、孫悟空、沙悟浄、玉龍の一行が神奈川で西を目指す。一方そのころ猪八戒は地元の名店を巡っていて不在という。劇中でもスクリーンに映される、食べ歩きフォトは猪八戒の投稿だそうな……。

神奈川各地のローカルネタをふんだんに織り込んだセリフの数々に「県民ならもっと楽しめるのに」と思いつつも、県外者は県外者で観光気分。
ひとり何役か知れず、そもそもかねてより人以外を演じることは多いが、「神奈川県役の成河です」の挨拶は過去イチ意味がわからないパワーワードだった。もっとやろう。

10役まとめて、「神奈川県」役。

ロッキーホラーショー(PARCO劇場・2月)

映画も舞台もカルト的な人気を誇る作品。映画も「何が言いたいのか全く分からないけどなんか愉快」だが、ライブ感満載の舞台はなおさら。黒のガーターベルトに網のストッキング姿で登場するフランク・フルターは、もはや古田新太の代名詞。実はめちゃくちゃ美脚。

公演中止を経ての東京公演。まさにパーティー然とした作品もこのご時世では声出し厳禁。でも大丈夫。わたしたちの手には、劇中に登場する小道具を模したグッズがたんまりあるから、黙ったまんまで大騒ぎ。

雨のシーンではキャストを真似て観客も雨よけの新聞紙を頭にかざし、客席から舞台目掛けてオモチャの光線を出し、無言で踊り狂う。最高に狂ったパーティーの再演がすでに待ち遠しい。さすがにフランク古田は代替わりか……。

フライヤーが激烈可愛くて、ヤバいパーティー。

ピアフ(シアタークリエ・3月)

伝説のシャンソン歌手・エディットピアフの生涯を描いた作品。売春宿で育った町娘がピアフと名乗りだしてから、愛と病と薬にまみれて最期を迎えるまでの激動を描く。

大竹しのぶはやっぱり大女優なのだ。人生の喜怒哀楽を全て織り込んだ「愛の讃歌」に喝采が起きること、この二幕を通して、生きたピアフを目撃したなら納得。

ピアフとかかわる歴代の男たち。大女優に喰らいつく俳優たちの奮闘も見ごと。歌わず、踊らずとも演技で魅せられるようになったなんて、中河内雅貴……!

人生の全てを曝け出すピアフに、大竹さん本人も重なる。

ブラッドブラザーズ(東京国際フォーラム・3月)

双子として生まれながら別々に育ち、同じ女の子に惹かれ、同じ日に死んだ二人の成長と苦悩を描くミュージカル。柿澤勇人とウエンツ瑛士が二卵性双生児を演じる。

刺さらなかった。ちょっとくどくて鼻につく、なんでもドラスティックに見せるのが……。吉田鋼太郎演出と相性が悪いのか、年明け2023年のジョン王で確かめるか、まだ悩むくらい合うかどうか、好みの問題。

それでも堀内敬子は本当に信頼できる。カッキーもウエンツもいいんだけど、これは主演:堀内敬子と言うほうが正しかった。


千と千尋の神隠し(帝国劇場・3月)

大変話題になりましたね、舞台化。千尋役は上白石萌音と橋本環奈のW。萌音ちゃんができるのは知っているので、初舞台の環奈ちゃんを観ておきたくて公演日を選ぶ。あと湯婆婆の夏木マリがどうしても観たくて!

帝劇の舞台すら狭いと思うほどの大掛かりなセットに、アンサンブルの大活躍。セリフや曲使いも良い意味で映画そのまま、再現性を何より大事にしたんだなと思わせる。長く再演していく作品だと思うので、無理ないキャスティングで続いていけばいいね。

千尋だけではなく、全員プロの仕事だった。おばたのお兄さんとか。

メリーポピンズ(東急シアターオーブ・4月)

作品説明不要。メリーは濱田めぐみ回。幼少期にライオンキングのナラで出会ってからズブズブ観劇沼に落ちて今に至るため、同じく我が子にもめぐメリーを観せておきたくて、劇団四季以外では初めての同伴。(本公演は4歳以上入場可)

濱田めぐみという役者はとんでもなく歌えて、実は踊れて、演技ができるわけです。できるから、重たい感情を伴う役が多く、作品の殺気を一手に担いがち。

その一方でメリー。掴みどころがないのに「何もかもパーフェクト」と歌われるキャラクター。濱田めぐみの完璧な身体制御を、殺気以外に使ってくれてありがとう……まだまだ続投してください!

逆さ歩きにフライング、見どころのたびに無言で興奮する娘と「せやろ」顔のわたし。ファミリー向けの席ではなく2階1列センターブロック下手側、飛んでいくメリーの軌道上に座席を確保した甲斐はちゃんとあった。

カーテンコール撮影可。アルファベットを模したスパカリの振り付けは必見。

EDGES-エッジズ- 2022(読売ホール・5月)

ソングサイクルミュージカルという形式だそう。コンサートのように次々と展開される曲は、一曲ごとに題材もシチュエーションも違う。キャストも「何役」でもない。それでも作品全体が大きくうねり、一貫したテーマ=若者と大人の境界(EDGE)を鋭く(EDGEに)伝える、を成し遂げている不思議。

「冒険者たち」での「神奈川県役」から転生した成河を観に行ったわけですが、ジャニーズと成河を成立させるならお相手は屋良朝幸だろう、と思わせる全体の仕上がり。鉄腕DASHしか知らない草間リチャード敬太も良かった!
振付に出演に、大活躍の屋良&植木豪。植木さんの振付が大好きです。


ハリーポッターと呪いの子(赤坂ACTシアター・6月)

赤坂が魔法に包まれるロングラン公演。藤原竜也・向井理・石丸幹二それぞれのハリーは、キャスト発表時からメディアにも多く取り上げられた。実はハリーポッターのこと、なんにも知らないんですよ。でも観た。舞台での藤原竜也にはとてつもない(お財布の)吸引力があるので。

ハリーとその息子、親子の物語。ゼロ知識でもなんとなく登場人物の名前が頭に入ってたら、いけます。

舞台で観る魔法って、普通ならどこか不自然なことが多い。イリュージョンのタネも仕掛けもうっすら見えてしまうような。でも本作に関しては初見では全く分からなかったくらい、ちゃんと魔法の世界。
街全体がハリーポッター色になっていて、あらゆるオブジェやコラボコンテンツに溢れる。良い意味で、商業演劇の力を感じる。あとは赤坂ACTシアター、その致命的な場内導線の悪さだけなんとかしてくれれば!

特設キャストボードも長蛇の列なフォトスポット。

ノートルダムの鐘(KAAT神奈川芸術劇場・7月)

四季オタが湧きに湧いていた「鐘」再演、わたしはこのKAAT公演が初観劇。
メインキャストに文句がないのは劇団四季の強さ、そしてストーリーに重みを加えるクワイヤの一体感。めちゃくちゃ声の層が暑い。四季の団体芸って本当に統率が取れていて気持ちいい。

話に関しては、ハマる人はハマる。人の業の深さを劇団四季に書かせたらこうなる。(でも小声で言うと、業の深さを描くのに信頼を置いているのはホリプロちゃんなんだ……。)

上演時以外撮影可。この奥行きが、フロローの落ちる奈落にも。

春のめざめ(浅草九劇・7月)

取っていたことを前日まで忘れていたがどうにか駆け込んだ、そんなプレビュー初日。思春期の愛、親や教師との確執を描く。悲劇的な終わり方をするんだけど、キャラクターそれぞれの自業自得感も溢れているストーリーだから、荒削りな若手俳優たちでこそ身に迫る。

若い役者が多いこともあって、客層が普段観ている作品とは違うことを感じ取る。推しを推しに来ている子たちが多い!頑張れ〜!

こういう展示の供給、慣れなくて思わず撮っちゃう。

COLOR(新国立劇場・9月)

実在の人物・坪倉優介さんの体験を綴ったオリジナルミュージカルの初演。記憶喪失を経て、草木染め作家となるまでを描く。

3人芝居の登場人物は「ぼく」・母・「大切な人たち」、という役柄。「大切な人たち」とは、作品のストーリーテラーを兼ねる編集者(「ぼく」の体験を書籍化する)だったり、父であったり、友人であったり。
「ぼく」を浦井健治、母を柚希礼音、「大切な人たち」を成河が演じる回にて。また複数役やってるよ。浦井くんも、天才肌で無垢をやらせたらそりゃピカイチです。

お話は正直、お涙頂戴みが抜けきらなくて、個人的にはそんなに。音楽をシンガーソングライターの植村花菜が手がけており、一般的なミュージカルナンバーと比べ聞き馴染み良く、右から左に、も要因かもしれない。

元も子もないけど歌無しの芝居だったら受け取り方が変わったと思う。キャスト、芝居ができる人たちなので。日本製オリジナルミュージカルの最適解が見えるのはまだまだ先だろうから、一歩ずつ。

上演時以外撮影可。「ぼく」の変化ともにセットも色付く。

ジャージー・ボーイズ(日生劇場・10月)

実在するグループ歌手・フォーシーズンズの結成から頂点までを、彼らの音楽で綴った作品。

4人のメインキャストはそれぞれWキャスト。過去の公演では中川晃教がシングルキャストで張っていたフランキーヴァリ役も今回初めてダブルに。チームBLACK・チームGREENとして固定の4人の組み合わせで上演されており、それぞれ1公演ずつ観劇。チームで描く人間関係とハーモニーはBLACK・GREENそれぞれに異なる化学反応があって、これぞ正しいWキャストの使い方と思わせられる。

個人的に今のミュージカルいち歌が上手いと思います、中川晃教。このフランキーヴァリ役で菊田一夫演劇賞も受賞しており近年の代表作と言えるが、それを今回公演からダブルキャストとして担う花村想太の懸命で真摯なことよ。

「キャストの新陳代謝ができる作品は強い」とは友人の評。その通りだと思う。本も良い、曲は言わずもがな、構成が美しい、キャストが変わってもいい。末長く愛される作品であれ。

日生劇場がだいすきです。

建築家とアッシリア皇帝(世田谷パブリックシアター・12月)

世田パブ・シアタートラムでの濃密な二人芝居。というか一人芝居で40分なんてシーンも。やる方はもちろんのこと観る方も相当体力を持っていかれる。演劇の怪物たちよ、そしてトラムの椅子の固さよ。

無人島に行き着いた二人の男が語り続け、劇中でも立ち位置を変えながら演じ続け、繰り広げる輪廻。エログロ、シュール、悲劇で喜劇。さて不条理劇って一体なんのこと?と薄ら寒くなる。

あまりに意味がわからない、いやわかるんだけどわからないで正解だと思いたい、どう伝えたもんか。岡本健一がありがたくも投稿してくれた舞台写真をリンクにつけて、わけの分からなさだけ伝われば良いか。

終演後見るとまた違う味わいのポスター。影と脳みそ。

おわりに

たった14作品なのに、1年分の記憶を掘り起こすのは大変疲れました。たぶん、もうやらない。というか溜めるとキツい。

年明けは娘を連れて、劇団四季の美女と野獣・舞浜アンフィシアターから観劇始めの予定。今年も大変楽しみました。来年もより一層、感情を弄ばれていきたいです。

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