岡島光則さんと加藤直樹さんの器から垣間見えた、芸術的創造のプロセス
倉敷市大島に窯を構える岡島光則さんは、アートフルな作品作りをされている陶芸家です。画像は岡島さんによる陶器の茶碗です。
土との対話で、色彩や形にとても味わいのある作品作りをされていて、一つとして同じ物は製作されません。そんな、岡島さんが、ごくたまに、澄み切った端正な作品を製作されます。
画像は、岡島さんによる磁器のカップとソーサーです。
形は正円と直線とで整えられ、表面は硬く平滑で、色調は混ざり気のないオフホワイトです。非常に精神性が高い作品です。
ここで言う「精神性」とは、心の活動が周囲の環境から独立性が高いと言うことです。
例えば、あの人は精神力があるという言い方をするときは、その人が逆境に遭っても、当初決意したことを変えずにやり続けることを意味します。
精神性は物の製作にも関係します。類人猿であるチンパンジーは、自然にある石をそのままハンマーとして使います。類人猿よりも進化した原人は、自然の石を加工して石器を作りますが、自然の石を割ってできた切片をそのままナイフや斧として使っていました。さらに進化して現世人類になると、もとの石の形に影響されず、同じ形のナイフや矢尻を多量に生産します。環境から独立して、心の中にあるイメージを保ち続けて製作できるからです。
岡島さんの作品は、岡島さんが心に思い描いたカップとソーサーを、忠実に再現した物だと思われます。おそらく、岡島さんが、土と精神との相互作用である芸術的創造の節目に、自分自身の精神性を確認するために製作されるのだと推測します。
岡山市庭瀬に仕事場がある、加藤直樹さんは、普段は、精神性の高い陶器作品作りをされています(「陶芸家 加藤直樹」で検索してみて下さい)。最新の作品は、純白で、糸を編んだような繊細かつ、法則性のある整った緻密な造形物です。
そんな、加藤さんが、たまに、精神性がゆるい器を製作されます。画像は、加藤さんによるカップです。
カップの壁にも縁にも波打った揺らぎがあります。
加藤さんは、硬めの陶土を使って、低速でロクロをまわし、土と手の相互作用を引き出すことで、揺らぎのある器を造形されます。
土が軟らかかったり、ロクロの回転が速いと、人の意図に従った造形になってしまいます。新たな創造には、精神の揺らぎが必要なので、作品作りの間奏として、このような土の個性が入り込んだ作品作りをされるのだそうです。
お二人の対照的な作品から、アーティストが、精神世界と環境世界とを行ったり来たりしながら、創造性を生み出しているのを垣間見ることができました。
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