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倉敷一陽窯2階カフェでの非日常体験の功用

画像は、倉敷美観地区の備前焼ギャラリー・倉敷一陽窯、2階カフェで提供される抹茶・生菓子セットです。感染禍はまだ続いていますが、移動制限が解除され、3年振りに倉敷美観地に客足が戻り、カフェを訪れると店内は満席でした。

いつもながら、マダムの木村恵子さんによる、細かい泡が均一になるように仕上げられた薄茶が、見事です。季節が移っても、外観の仕上がりは安定しています。

初夏なので、添えられた生菓子は、「花あやめ」です。生菓子は、こしあんがよく裏ごしされて、粒子感がとても微細です。水分は少なめで、唾液をよく吸収してくれます。輝きを抑えた、形の整った精悍な和三盆の甘さが、舌の半分を満たしたところで、抹茶をすすります。

・・それは驚きの体験でした。抹茶の泡の層が厚く感じられ、液体の感触がわずかしかありません。口の中に入ると、泡の層が潰れるようにして薄く拡がります。そして余韻を残さず短時間で消えて行きます。驚きと同時に感じられたのは、はかなさや哀しみを伴わない、ニュートラルな非日常感でした。

不思議な感覚に浸っていると、間もなく、混雑していた店内の喧噪が消えて行きました。周囲のリアリティが薄くなり、自分だけが取り残された感じです。しかし、不安は無く、そこに安息がありました。

それは、「胡蝶の舞」のように、ごく短時間であったようです。周囲の喧噪がすぐに戻ってきました。席が空くのを待っている人がいるので、テーブルで会計をしてもらい、1階の備前焼コーナーに降りました。普段よりも足下を意識して階段を踏み締めます。1階に着くと、世界への懐かしさや愛おしさや匂いのような感覚が感じられます。数分間だけ異世界にトリップした、“浦島太郎” 状態と言えましょうか。

・・それは非日常的な体験を契機にして意識が変容した経験だったのだろうか?シャーマンや修験者のようにです。・・それは、脳の側頭葉が機能的に活性化したからだろうか?と仕事柄、妄想したりします。いずれにしても、結果的に世界への復帰感・帰還感があって、精神が安定する経験でした。

今日で連休も終わりです。

(2022年5月8日)

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