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石田和也さんによる陶芸作品の紹介

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石田和也さんは、備前焼を家業とする家に生まれ、人間国宝のもとで技を極めるとともに、イギリスに渡り、海外の技法や文化を学ばれました。今や日本各地や海外をまたに掛けて活躍する若手のエ… もっと読む
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造形作家、山本薫さんによるマグダラのマリア像

マグダラのマリアは、キリスト教の聖典、新約聖書において重要な局面で登場する聖女です。彼女は、イエスと出会い、我が身を悔い改めます。後に、イエスが十字架に掛けられるのを見届けます。さらに、復活したイエスに最初に出会ったのが彼女でした。 マグダラのマリアをモチーフにして多くの絵画が描かれましたが、今、最も有名なのは、カラヴァッジョによる「法悦のマグダラのマリア(1606年)」でしょう。 筆者はこの作品と2度出会っています。最初は、2016年3月に東京国立西洋美術館で開催された

石田和也さんの浮遊感を放つグラス

画像は、気鋭の備前焼作家、石田和也さん作のグラスです。 その奇妙な存在感に興味を惹かれました。 備前焼なのに、見た目が無機質なのです。すなわち、表面が平滑で、光沢があり、フォルムも中性的で、人造的な正・楕円形のくぼみが付けてあります。 不思議な浮遊感を放っていて、地球上の物質ではなくて、反重力の性質をもった異次元宇宙の物体の様です。・・ベルギーの画家、ルネ・マングリットの代表作「ピレネーの城」を連想しました。 マグリットは固定観念を打ち破り、思考の自由さを求めた人でし

石田和也さんの酒杯〜クラフトからアートの領域への到達〜

画像は、倉敷美観地区に店を構える備前焼のセレクトショップ・倉敷一陽窯のガラス戸の中に大切に保管・展示されていた酒杯です。 高さ7cmほどの小さな器ですが、トルネード・ラインがクレッシェンドからデクレッシェンドに変化し、見る人の精神を解放してくれます。まさに、アートの領域に到達した造形物です。 作者は新進の備前焼作家、石田和也さんです。石田さんには、倉敷一陽窯で開催された備前焼の実演イベントの際に直接お会いし、お話ししたことがあります。石田さんは意識の力が強い方で、土と無意

石田和也さんとマーブルプロジェクト

備前焼作家の石田和也さんと、岡山県立大学の太田菜々実さん、日下部瑞穂さんは、備前焼粘土と磁土の2種類の粘土を使用する新しい技法にチャレンジしています。プロジェクトの名前はマーブルプロジェクトです。それによって、備前焼特有の焼けによる色合いのみならず、磁土の色によって、非常に多義的な模様を生み出しています。画像は、マーブルプロジェクトによるアクセサリーです。 私には、夜の静かな海と空が見えました。海にはさざ波が立ち、空には雲が浮かんでいます。右斜め上から海面にかけて、天の川が

石田和也さんの花器に観られた苦悩の表現について〜ムンク・作「叫び」との共鳴〜

表題の画像は、新進気鋭の備前焼作家、石田和也さんによる花器です。2022年の新年が明け、倉敷美観地区の備前焼ギャラリー・倉敷一陽窯を訪れると、石田和也さんの窯出しされたばかりの新作が上級品の棚に並べられていました。そのうちの一点ですが、特別に惹かれました。 石田作品の象徴的なデザインである、らせん模様の花器がですが、胴体の途中が捻れていて、瞬間的に苦悩の身体感覚が惹起されます。作家の深い苦悩の表現なのでしょうか。 しばらくじっくりと作品を観てみると、色彩が多彩で虹の様に帯状

一流のパフォーマンスに見られたATNR(非対称性緊張性頸反射)

ATNR(非対称性緊張性頸反射)は脳幹レベルの原始反射で、頭部の向いた側の伸筋トーヌスが亢進し、反対側の屈筋のトーヌスの亢進を生じるものです。新生児に認められ、生後4カ月過ぎると消失するとされています。しかし、人間が極限まで能力を発揮するときに復活して、パフォーマンスを助ける様です。 2019年11月15日、岡山済生会80周年の記念イベントで、香川県高松市出身の世界的ヴァイオリニスト、川井郁子さんの生演奏を聴く機会がありました。使用楽器は1715年製作のストラディバリウスで

石原路子さんのテディベアによるピエール・ボナールの華麗なる絵画世界の再現

ピエール・ボナール(1867年〜1947年)は、ポスト印象派の先端を行った画家です。その特徴は華麗な色彩表現です。 近年、本国フランスで人気が高まり、2015年にオルセー美術館で開かれたピエール・ボナール展は、歴代2位の入場者数を記録しました。 筆者は2018年に東京・新国立美術館で開催されたオルセー美術館特別企画 ピエールボナール展を訪れました。会場で最初に出会ったのが、「アンドレ・ボナール嬢の肖像、画家の妹」でした。 ピエール・ボナール作「アンドレ・ボナール嬢の肖像

竹久夢二が描く女性をモチーフにした石原路子さんによるテディベアのポートレート

元来の日本語は、時制からは自由なことばで、現在と過去と幻影とが渾然一体となり、今ここにないものもを、見立てる力によって立ち上げて、リアルを体験します。 そんな日本の「こころ」で、テディベアの世界を立ち上げてみました。モチーフは、岡山出身の画家、竹久夢二(明治17年〜昭和9年;1884年〜1934年)が描く魅力的な女性達です。 まず最初は、ずばり「女」(大正7年)です。 竹久夢二・作「女」(大正7年)1) 離別した妻・たまきがモデルと考えられています。上部のぼんやりとし