竹久夢二が描く女性をモチーフにした石原路子さんによるテディベアのポートレート
元来の日本語は、時制からは自由なことばで、現在と過去と幻影とが渾然一体となり、今ここにないものもを、見立てる力によって立ち上げて、リアルを体験します。
そんな日本の「こころ」で、テディベアの世界を立ち上げてみました。モチーフは、岡山出身の画家、竹久夢二(明治17年〜昭和9年;1884年〜1934年)が描く魅力的な女性達です。
まず最初は、ずばり「女」(大正7年)です。
竹久夢二・作「女」(大正7年)1)
離別した妻・たまきがモデルと考えられています。上部のぼんやりとした提灯の明かりは、恒枝直豆さんの小さな花器で見立てました。
この空気感はいかがでしょうか?
次は、「賀茂川」(大正3年)です。鴨川の床に立ち、東山を眺める舞妓の後ろ姿に、京都祇園の艶やかな風情が表現されています。
竹久夢二・作「賀茂川」(大正3年)2)
東山と鴨川の流れと舞妓の髪飾りは、岡本達弥さんによる青い花器で表現してみました。
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3人目は、「紙帳」(大正中期)です。紙帳の前で、女性が気だるげに髪を整えています。紙帳は、和紙を貼り合わせて作った蚊帳のことで、麻や木綿と比べて安価なので、庶民が用いました。
竹久夢二・作「紙帳」(大正中期)3)
紙帳には木のトレーを用い、女性の気持ちは、石田和也さんの渦巻く酒杯で表現してみました。
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4人目は、「春待つ人」(大正10年)です。満開の白梅を背に佇む女性が描かれています。女性は天平時代の雰囲気を持っています。
竹久夢二・作「春待つ人」(大正10年)4)
白梅は、備前焼窯元・五郎辺衛による、一輪挿しに顕れた景色で表現してみました。
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最後は、「秋のいこい」(大正9年)です。色付いたプラタナスに囲まれたベンチに、後に付けられた題名「いこい」とは状況が異なり、大きな信玄袋をもって田舎かから上京した女性が、途方に暮れて座っています。
竹久夢二・作「秋のいこい」(大正9年)5)
プラタナスの葉は、白神典大さんによる黄色の小瓶で表しました。旅の荷物を入れた大きな信玄袋は、岡本達弥さんの盃を伏せて置くことで、見立てました。
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5体のテディベアたちそれぞれの、個人ポートレートを楽しんでいただけたら、幸いです。
引用文献:古川文子・編:夢二郷土美術館所蔵 竹久夢二名品100選. 東方出版. 2007.
1)P39 2)P22 3)P43 4)P55 5)P47
背景やベンチに見立てた木のトレーは、川月清志さんによります。
追伸
テディベア達の産みの親である石原路子さんご自身から、本記事に「スキ」をいただきました。たいへん嬉しく、光栄に思います!
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