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読書メモ『笑うマトリョーシカ』/ 早見和真


途中から見たTBSテレビの『笑うマトリョーシカ』が面白く、U-NEXTで、1話から見直しました。

どんでん返しのストーリー展開。戦争に端を発した親子三代の物語。親が与える子どもへの影響は、子どもの人生にどう関わるのか。

ヒットラーとハヌッセンと清家一郎。政治家の心の中はどうなっているのか。民主主義の危うさ。

人は人を操りたい。操られるために生きる人。操る人は何を考えているのか。操られる人は何を考えているのか。

最終話を観て、今ひとつ「見くびるな」が腑に落ちなかったので、原作をAudible で見つけ、読んで(聴いて)みました。

テレビの脚本はジャーナリストの道上香苗を主人公に物語が作られていますが、原作は章ごとに登場人物の語り口で物語が進んでいきます。

私は水川あさみさんが好きです。道上香苗の役ははまり役だと思いました。原作の道上香苗はもう少し頼りない印象でした。

高岡早紀さん演じる浩子の人生はテレビの脚本では謎めいた人物として詳しく描かれていませんが、原作ではより詳しく描かれていました。浩子は72歳でした。高岡さんは50代ですから、ずいぶん違いますが、70代とは思えない若々しさと書かれていたので、高岡さんで適役でしょう。高岡さんの雰囲気がとても良かったです。

清家一郎は50歳。櫻井翔さんは40代前半ですから、もう少し貫禄が欲しいところですが、作られた笑顔は名演技で、清家一郎らしさがありました。

「見くびるな」は操られてきた人の我慢の限界。弱そうに見えてつけ込まれている人の最後の氾濫といったところでしょうか。


原作と番組を比較してみると面白いです。今回の脚本はとても良かったと思いました。原作にはない道上の家族や子どもの描写は道上の魅力を押し上げています。原作では印象の薄いBG株事件がテレビではメインに取り上げられ、物語りの芯になって、政界の裏の暗闇を表現し、道上の正義感を表出しています。

湊かなえさんの小説も数多くドラマ化されていて、ドラマと原作を鑑賞しましたが、脚本家は特別な才能が必要だとつくづく思います。原作を大事にしつつ、視聴者や時間枠、俳優を想定して新たな物語を作っていく。0から1を作るのはもちろん大変ですが、1を100にするのはもっと大変だなぁと感じました。

さて立憲民主党は私と同い年の野田さんが代表になりました。自民党の総裁選は今週です。誰が総裁に選ばれ、この国のトップになるのでしょうか? そしてその人の周りにはどんな物語があるのでしょうか? 総裁選を前にして、興味深い物語でした。

● 早見和真インタビュー「笑うマトリョーシカ」

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