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私には友達がいない


3ヶ月前に彼氏ができた。


5ヶ月前、友達が出る舞台に招待してもらい、
1人仕事終わりに向かった先で私の隣の席に座ったのが彼だった。


大学が同じらしいが、友人の話でしか聞いたことがなかった男の名前と顔が一致したのは彼女が舞台終わりに3人で飲みにでも行こうと言ったときだった。


ああ、あの人ね


と思ったけど、全然興味もなくお腹が空いていたのとお酒を浴びるように飲みたい欲の方が勝ってた。



飲み会の話では、彼がこの舞台の1週間前に引っ越しをしたらしいが、そこが私の家と目と鼻の距離だった。

 

『なので、帰りは一緒っぽいですね』と彼が言った。


その日は、コロナが落ち着いた金曜日の夜、
飲み会があったであろう会社員で帰りの電車がキツキツだった。


そんな電車の中で、私は痴漢をされた。
営業生活で、気が強くなったつもりでいたが、あんなときは正直どうにも出来なかったのが悔しかった。


一緒に乗っていた彼は少しはぐれてしまって何も気づいていなかった。


最寄駅に着くと、『あんなに楽しかったのに、最悪な金曜日になってしまった』と言った私に、

『何か失礼なことでも言いましたか?』と聞いてきた。


先程の経緯を話すと、金曜日を上書きしようと言う彼に連れられて、公園に少し早めに咲いた桜を見に行った。


ココアとお菓子も買いますよとVIP待遇だったが、なんだか気が引けた。


送らせてくださいと言う彼からは、
その後『上書きできましたか?』とLINEが来たが、返さずにいた。


それから数日後、かなりの頻度で使う図書館に彼がいたとき、何か人生にいたずらされてるような気持ちになった。


軽く挨拶し、『挨拶を交わすご近所さんでいましょ』、と私が言うと彼は首を傾げていた。


その後も眠れないので散歩に行きませんかという誘いに、私は『今日も眠れそうです』と返すのが精一杯だった。


それからも頻繁に連絡が来て、とうとう散歩に出かけた。


もうすぐ来る私の誕生日には、家が近いからというこじつけでケーキを持ってきてくれた。


ホールケーキを食べるのが今年の目標と、飲み会で話したことを覚えていたらしかった。

ケーキを切らずに食べている間に、告白をされた。

『好きです。付き合ってくれませんか。前に、散歩とコーヒーが好きな人が好きと言っていましたが、どちらも好きです。』

という内容だった。

『告白は嬉しいけど、色んなことをきちんとしてからにしよ』と返事をした。



彼は、私の友達が7年片思いした男だった。


彼女は7年間、違う数人の人とも付き合ったりしていたが、一番の理想は彼だと言っていた。ある種崇拝していた。


憧れが強く、連絡をしたりデートに誘ったりなんてこともなかったらしかったが、この舞台をみにこないかと聞いたら彼はたまたま来たらしかった。



でも彼は何も知らないから、私の返事には、不思議そうな顔をしていた。


そして、最近も

『俺と出会ったときはあんなに飲み歩いてたのに、最近は全然行かないね。』と悪気のかけらもなく聞いてくる。


私は、『そうだね』とだけ答えた。



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