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【連載小説】犬と猫⑨

「そうだ。雪くんに教えて貰いなよ!」

 心愛をみると悪戯な笑みを浮かべてた。軽く溜息を漏らしながらリビングにいる 2人の間に座り宿題を覗き込んだ。

「宿題大丈夫?」
「無理かも、雪兄ちゃん教えて。」
「俺もレポート無理だ!一緒にやって」
「仕方ないな。どれ?見せてみ」
「ここ何だけど。わかんなくて」
「あ~ここか、ここは公式を使って。ここは間違いやすいから気を付けて。」
「真琉くんレポート見せて。あぁ、ここは表を入れたほうが分かりやすいかもな。表の入れ方大丈夫?今って中学生でもパソコンでレポートなんだね。」
「そうなんだよ。officeの練習兼ねてだってさ。俺はPowerPointで作っているけど友だちはExcelでやってるって」

 たわいのない話をしながら、宿題 を教えた。宿題を見たりゲームしたりしていたことで少し距離が近くなった。中学2年生の真琉・小学5年生の宇琉2人は人懐っこい子だ。うち溶けたとは思えないが少し安心した。完全拒絶されなかった事が救いだった。

「あぁ、もう眠い。雪兄ちゃん。いつまでいるの?」
「明後日までいるつもりだよ。」
「そっか。なら明日も見て「ほら、宇琉!行こうぜ!心愛 雪兄ちゃん。お休み~」

 二人とも挨拶をすると三階の自室に上がっていった。二人の姿が見えなくなると力が抜けてテーブルに突っ伏した。

「雪くん。お疲れ様。何か飲む?」
「麦茶ある?めっちゃ緊張したよ。」
「そう?そんな風に見えなかったよ?」

 くすくす笑いながら麦茶をくれた。心愛は隣りに座り僕の頭をクシャっと撫でた。大人しく撫でられてると急に撫でる手が止まった。ふと顔を上げると心愛はニコニコしてる。
 
「雪くん。本当にありがとう。子ども達も楽しそうで良かった。」
「あぁ、でも少しは近づけたかな。そういえば2人は心愛のことママとか呼ばないんだね。」
「そうだね。子ども達が小さい時に手伝ってくれていた人が心愛さんって呼ぶ人だったからかもね。気が付いたら名前で呼ばれてたよ。」
「そっか。2人ともいい子だよね。」
「まぁね。真琉には苦労させてるけどね。家事とかさ。宇琉も最近は真琉を手伝ってくれるようになったよ。」
 
 たわいのない話しをして、そろそろお風呂にとのことで心愛からタオルを受け取りリビングと同じフロワーにある風呂場へ向かった。

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