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【連載小説】犬と猫⑫

まだ、会ってすぐだけれど心愛と子ども達を守りたいと思っている自分に驚いた。こんなにも優しい家庭があるのかと。
 まだハンモックで寝ている心愛に声を掛けると寝ぼけて抱き着いてくる。適当に宥めてリビングに来るよう伝えて先にリビングへ降りた。

「宇琉くんもおはよ。真琉くん……これ運んでいい?」
「雪兄ちゃん。よろしく。宇琉も運んで」
「はーい」

 朝食がテーブルに並び終えたころ心愛がやっと降りてきた。

「おはよ!」
「おはよ!さて食べようぜ。雪兄ちゃんコーヒーでいい?」

 ご飯を食べながらも心愛はウトウトしていたが、はっ!となって楽しいそうに笑った。

「今日、雪くんがプールに連れて行ってくれるって。行く?」
「行く!」
「よし!早く食べて用意しよ!基本的には用意できてるけど。足りないのは入れてね!」

 みんなが楽しそうに食事を終えて、心愛と僕で洗い物をした。お皿を拭いてしまうのに踏み台を持ってきたので僕がしまうと伝えると、ありがとって言って着替えをしに部屋へ行ってしまった。

「雪兄ちゃん。俺たちやるから、着替えておいでよ。」
「悪い……頼むわ。」

 出掛ける用意をして、心愛の用意が終わるまで荷物を子ども達と車に積んだ。積み終わったら子ども達を車の後部席に乗せてると、心愛がやっと来た。心愛が助手席に乗ると後ろに子ども達の方をむいてニコっと笑いかける。

「真琉!宇琉!プール楽しみだね!よみうりランドって初めてだね。」
「心愛……前向きなよ。雪兄ちゃんが困るから。」
「はやく行こうぜ!プール!」
 
 心愛が前を向いた事を確認し、車を走らせる。ふと心愛の方に目をやると、とても楽しそうに窓から流れる景色を眺めている。子ども達は、ゲームをしたりしながら過ごしていた。途中でコンビニに寄った。コンビニで飲み物やら色々と買ったものを心愛が持っていると真琉くんが荷物をごく自然に持った。傍から見たら、長年連れ添ったカップルみたいで少し妬けてしまった。それと同時に、こうやって寄り添って生きてきたんだなとも思えた。しばらく車を走らせると目的地に着くと子ども達が率先して荷物を降ろしてくれた。心愛は小さい荷物とコンビニで購入した荷物を持っていた。

「心愛……それ持つよ」
「雪くん。ありがとう」
「心愛!雪兄ちゃん……早く!」
「早く……こっちだよ!」

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